オンライン審査会を開催してみた件

ご無沙汰してます。前の記事を書いてから早4か月。
世の中の状況も変わってきたとはいえ、実はいまだに閲覧回数が伸びているのはオンラインハンズオンセミナーの開催についての記事というのは、世相を表している気がします。

実はこれに関連したイベントも近々開催予定なのですが、それはまた改めて告知するとして。

さて、私は普段、いわゆる三セク団体で地域産業振興というミッションを持ちつつ日々働いているのですが、その業務の中の一つに補助制度の運用というものがあります。
と言いつつも、私自身が個人事業主という事もあり、直接的な審査自体には関わっていないのですが、今回「オンライン審査会」を実施するにあたって、その技術スタッフを努めましたので、何かの参考になればと思い、筆を執った次第です。どちらかというと、補助制度を実施する側の方向けなので、ニッチだとは思いますが(笑)

補助金審査会に求められる要件

当然のことながら、具体的な申請内容などに関する情報はここには書けませんが、一般的には補助金審査会に求められる要件としては、以下のような事項があります。(うち独自部分もあるかもしれません)

1.提案者の表情と声がきちんと審査委員に伝わること
2.審査委員の表情と声がきちんと提案者に伝わること(場合によっては表情は不要)
3.審査委員の名前が提案者に伝わらない、一方で発言を求めていることがきちんとわかること
4.提案者の入れ替え移動がスムーズに行われ、かつ、極力、提案者同士は顔を合わせないこと
5.提案及び質疑応答の持ち時間は厳守すること
6.全ての提案が終わったら速やかに集計すること

1.、2.は当たり前ですね。提案する/されるのに相手の言っていることが分からないのは論外でしょう。
3.は、公開審査であれば事前に審査委員の名前などは発表されていますが、多くの補助事業の中では審査委員の名前は非公表かと思います。これは、事前に審査委員への働きかけなどを防ぐためでもあり、ひいては提案者横並びできちんと公平・公正に評価するためでもあります。(と言いつつ、顔見たらあの人だよね、というのは分かる可能性があるので、顔出しNGにする場合も)
4.の入れ替え移動は言わずもがな。提案者同士の顔合わせない、というのは、あまり気にしていないケースもあるでしょうが、やはり提案の順序によっては、(どちらが有利とは言えませんが)競合とかち合う場合もなくはない、というところです。
5.も言わずもがな。提案者からしてみれば「もっと話させてくれても良いのに」と思うでしょうが、他の提案者と同じ条件にしないと不公平でしょうし。100メートル走で一人だけ80メートルで走らせてくれ、と言っても通じないのと概ね同じです。
6.は、採否の決定方法にもよるかもしれませんね。

実現方法

要件を定めたところで、実現方法について考えました。長々と語っても仕方がないので、ざっくりいうと、Zoomのブレイクアウトルームを使って、入口(Zoomメインルーム)と控室、審査会場という形で分けておいて、審査会開始前に審査委員は一通り審査会場へ移動し、入口でZoomホスト役が提案者を出迎えたうえで適宜、控室及び審査会場へ移動させる形です。
図にするとこんな形。

オンライン補助審査

こうすることで、基本的には提案者も審査委員も特に意識(操作)することなく、待機したうえで審査を行うことが出来ます。
また、審査委員が現地(オフライン)でも集まっている場合は、収音マイクを用いて音声を拾うようにすると良いかと。
提案時間の尺と、提案者に伝えた事前入室時間の兼ね合いによっては、控室を複数作っても良いと思います。
今回は、控室応対要員も配置して個別にやりましたが、やろうと思えばZoomホスト役が兼ねることも出来ます(PCを並べてしまえば良いので)。また、審査会場モニター用としてZoomホスト役の横に審査会場に入るPCを置いておくと良いです。

実施における注意点、良かったこと、改善点など

この形式をとった場合、必ずやった方が良いと感じたのは、事前の接続確認です(提案者、審査委員全員)。
画面写りや声の確認、画面共有などは言わずもがなですが、提案によっては動画を使用する場合もあり、そうすると提案者からは分からない、受け手側の音量調整というのがかなり重要でした。提案者が利用するPCのマイクからの収音と、PC上で再生する動画の音量のレベル差はかなり大きいため、その調整は必須と感じました。
また、そうやって調整しても提案者間の音量レベル差は解消しきれないため、オフラインで審査委員が集まる場所を用意する場合は、受け手側スピーカーの音量調整計画なども立てておいた方が良いかと。

後は、環境用意がかなり大変です。少なくとも事務局(Zoomホスト役含む)と、オフラインで来られる審査委員がいる場合はその人分、また、場合によってはオンライン環境が用意できない提案者向けのノートPCも用意する必要があるため、それに応じた周辺機器も必要になります。
また、構成としても、収音マイク&スピーカーを用意するパターンと、ヘッドセットを人数分用意するパターンがあろうかと(カメラはノートPCについているものとして)。
前者の場合は、ハウリングのリスクがあるので、事務局用PCに収音マイク・スピーカーをつないだうえで、他のPCはミュート・音量0にする必要があります。
後者の場合は、その時用のヘッドセットを買わなければならない可能性があるので、その手筈が整えられるかがネックかもしれません。

良かったこととしては、実は、オフライン開催時よりも提案がじっくり聞き取れた、ということもあります。前方の大きなスクリーンに映すよりも、目の前のディスプレイに映っていた方が見やすかった、というご意見もいただきました。また、音声についても、オフライン時は中々マイクを使って話さない(話していて熱が入りマイクから離れる)方もいる中で、オンラインであればきちんとマイクを使う、という意識が付くのが良かったのかと。
ただし、審査委員が自前で用意されたPCの調子が悪かった場合などもありますので、その辺りは改善点ですね。

また、今回は初のオンライン開催という事で予備人員もかなり動員しましたが、実質的に必要な人数を数えると、オフライン開催時よりも減ります。Zoomホスト役が提案者を控室応対しつつ入替なども出来ますし、司会がタイムキープに専念できるというメリットもあります。
一方で、Zoomホスト役はほとんど提案や質疑応答を聴いている余裕は無いですね^^;

あとは、集計が迅速にできるようになったのも、オンライン(というかデジタル化)のメリットです。よくあるのが紙に採点してそれをデータに打ち込んで、というのが、最初からExcelに入れてもらって、それを集計用シートにコピペするだけ、という形になるので、かなり迅速化します。ただし、検算はし難くなるので、その辺りは準備しておく必要があろうかと。

審査委員の皆様の移動や日程調整(実はここが結構大変)も、スムーズに行きやすくくなるのが助かりました。

とはいえ

良い点(改善点も含めつつ)も色々ある中で、根底的なリスクとしては「事前確認していても、本番時に繋がらない」という事があります(提案者、審査委員両方)。

だからといってオフラインでやろう、という話では無いのですが、やり方自体の根本的な見直しも必要なのだろうな、と改めて思った次第です。

なにがしかの参考になれば幸いです。こういったサポートが必要であればお声がけいただければアドバイスやお手伝いは出来るかもしれません(もちろん、お仕事として)。

今日のところはこんな辺りで。次はいつ書くかな(笑)

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