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#86 潮の話

「うしお」あるいは「しお」、どちらのはなしをしましょうか? 月や太陽の引力によって周期的に起こる海面の上下運動なら、「うしお」ですね。「海水」「海流」なら、「しお」ですね。 ”シオ”の話を”シヨウ”と思います。

海がない県

日本はいわゆる島国で、多くの県が海に面しています。私の出身である”岐阜県”も海がない県の一つです。海を見ずに育った人間が初めて海岸に行くと、いつまでたっても終わらない「打ち寄せる波」に驚きと”恐怖”を感じると思います。(いつまでも波が来たら、砂浜はなくならないのかな?)(この波にさらわれたら、もう二度と帰ってこれないのかな?) 浮き輪から手が離せるわけないですよね(笑)。生まれた時から(?)海で遊んでいた人には、きっとわからない感覚だと思います。私は子供のころから木曽川や長良川をずっと見ていたので、川を見ても全く恐怖を感じません。幸い、堤防の決壊はありませんでした。

潮の香

”シオノカオリ”という言葉に、小さい頃は”さぞ”良い香りだろうと期待していました。実際海に行ってみると、普段嗅いだことない磯の”ヘンな臭い”としか思えませんでした。三重県に引っ越してきて30年近くたち、子供が小さい頃はよく海岸で遊んでいたので、今となっては、”潮の香”はイイ匂いに変わりました。ハゼ釣りをした楽しい思い出や、イセエビやハマグリを炭火で焼いて食べた旅行の思い出などが思い出される、イイ匂いです。

潮の流れを”読む”長靴おじさん

子供と魚釣りに行くと、釣れるときと釣れない時がありました。釣れるときには、いつも長靴をはいた近所のおじさんがいました。ある日おじさんに、何故おじさんはいつも釣れるのですか?と聞いたら、「釣れる日にしかこんもぉーん。」という返事でした。なるほど、釣れる日だけ来ればイインダと思ったのですが、???  「どうして釣れる日がわかるんですか?」と聞けば、「そりゃ見とればわかるよ。他府県ナンバーの車しかおらん日、ピカピカな釣り竿しか出てない日、見たことない竿ばかりが出てる日、来ても釣れんわぁー。」と笑って答えてくれました。家が近くなので、窓からいつも釣り場を見ているようです。人の流れで、潮の流れを読んでいました。

潮の味で”読む”おじさん

別のおじさんは、「ちょっと潮なめてみよかなぁー。」と言って、海水を口に入れました。(えぇっー、何するんだこのおじさん。)と思っていたら、「やっぱ、あかんわ。しょっぱい。最近雨が降らんやろ、川の水が混ざっとらんから、この辺いつもと味違うわぁー。魚も来んはずや、帰ろ帰ろ。」と言って自転車で帰っていきました。(あの人、毎日なめとるんかな?塩水の味の違い、ホントに分かるの???)不思議な楽しいおじさんは、海の近くに時々いました。

潮まかせ

「釣れるときは、釣れる。釣れん時は、釣れん。」といつもおじさんたちは言ってました。潮の流れが大切だそうで、干潮と満潮、上げ潮と引き潮、日の出日の入り、風の吹く向き、などなどが微妙に効いていて”潮まかせ”と言ってました。”潮目”が変わると、漁船がいつもと同じ場所に行っても魚はとれません。目のいい鳥たちが山のように集まる場所を探して、そこに移動しないといけません。

時代の潮流

時代にも”潮”のような流れを感じますね。今までと同じ場所で待っていても、プランクトンが集まる「潮目」が移動してしまえば、ゴチソウにありつけなくなります。”長靴おじさん”のように観察し続けて、”シオナメおじさん”のように実際に行動して、”時代の潮流”を常にキャッチし続けていきたいものです。

おお、いつの間にやら1500文字になってしまいました。きょうは、そろそろ、このへんがシオドキですね。、、、 お後がよろしいようで。

(写真引用元: https://photo.mie-eetoko.com/photo/761)