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#114 ”歴史的”な 「ヰ」 と 「ヱ」

二つのカタカナの文字読めますか?
前回まで3回連続、消えたものについてnote記事を書いています。今日はその”消えたシリーズ”の4回目です。

 ”ひらがな”と”カタカナ”をまとめて、仮名(かな)と言いますね。読みに文字を当てるのを「仮名遣」(かなづかい)とよび、普段私たちが使っているのは、「現代仮名遣い」で、以前のものを「歴史的仮名遣い」と区別しています。この「歴史的」という呼び方、私は結構、気に入ってます。「現代」に対しては「古典」を使う場合が多いと思います。例えば、「歴史的景観保存地区」という響きは、現在までのそこでの生活に基づいた、意図的に手入れをして使い続けているという感じが伝わってくる気がします。heritage(歴史的な価値あるモノ・遺産)という感じです。

 例えば、農機具メーカの”ヰセキ”は、この歴史的仮名遣いが社名として今でも使われています。「ヰ」(平仮名では「ひ」)はワ行の音でしたが、現代仮名遣いではあ行の音「イ」に合流させられました。他には、「ヱビス」ビールの「ヱ」は、平仮名では「ゑ」と書きます。「アヲハタ」ジャムの「ヲ」は、平仮名ではワ行の「を」に対応します。

 ここで、さすがに「を」は、あ行の「お」と一緒にはしなかったようです。日本語の助詞で「を」は多用されますから、もし「を」を「お」と同じにしてしまったら、「おじいさんお、おとなりにおおくりしました。」という感じで、「お」が溢れてしまいます(笑)。

 前回のnote記事の「関数」と「函数」同様に、「歴史的」仮名遣を現代仮名遣いに統合した流れに対しては、今でもカンカン・ガクガクな議論が続いている場面もあるようですが、ここでも私はどちらでもイイ派です。「言葉」は時代ともに変わっていくものなので、個人的には「言葉の流動性が高い」ということは、「文化的流動性が高い」ことと関係していると考えています。”流動的”なのは、いわゆる”根無し草”のように、他者によって流されるという感じもしますが、”柔軟に対応できる”とポジティブな面もある気がします。外部刺激がなく、一定の様式に固執していれば、”流動”せずに”固定”(あるいは”停滞”)します。

 ”歴史的仮名遣い”は失われた文字表記を指すことが多いですが、その一方で同時に、外来語をそれ以上(?)に多く取り入れています。全体の総和を取ると、おそらく言葉及びその表記方法は、圧倒的に増えていると思います。減ったものを嘆くばかりでなく、新しく増えたモノをうまく使うことも同時にしたいものです。但し、地名や人名などの固有名詞をはじめ、自分の根幹(根っこ、root)に関係するものは失わないほうがいいですね。

(写真引用元: https://photo.mie-eetoko.com/photo/1288)