第1回 理論ミニテスト(解答解説)

解 答

(1)について
 A社に対する貸付金の譲渡は、譲渡時における債権者(甲社)の譲渡に係る事務所等の所在地が国内にあるため、課税の対象となる。

(2)について
 B社に対する土地の譲渡は、譲渡時における土地の所在場所が国外にあるため、課税の対象とならない。

(3)について
 C社に対する2以上の国で登録されている商標権の譲渡は、譲渡時における譲渡者(甲社)の住所地が国内にあるため、課税の対象となる。

(4)について
 D社に対する金銭の貸付けは、貸付けに係る甲社の事務所等の所在地が国内にあるため、課税の対象となる。

解 説

 消法2条八号において、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。と規定されています。
 また、同法4条において、国内において事業者が行った資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。と規定されています。

このことから、消費税法における課税の対象とは、
① 資産の譲渡等が国内において行われること
② 下記(イ)~(ハ)により、資産の譲渡等に該当すること。
(イ)事業者が事業として行うこと
(ロ)対価を得て行われること
(ハ)資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供であること

大枠は①及び②の2要件、②に該当するために3要件ありますので、厳密には4要件であることが分かります。

 本問においては、課税の対象に該当するか否かが問われているため、結論は課税の対象に該当するか否か、となり、その理由は各取引が国内で行われる資産の譲渡等に該当するか否かを解答することになります。

例えば(1)については、
① 当該取引は、金銭債権の譲渡に該当するため、譲渡時における金銭債権に係る債権者の譲渡に係る事務所等の所在地が国内にあるかどうかにより行う。従って甲社の事務所等が国内にあるため、国内取引に該当する。
② 当該取引は、下記のため資産の譲渡等に該当する。
(イ)甲社は内国法人であるため、事業行為に該当する。
(ロ)950,000円の対価を得ている。
(ハ)貸付金の譲渡は資産の譲渡に該当する。
③ ①及び②により、当該取引は国内において行われる資産の譲渡等に該当し、課税の対象となる。

解答を細分化すると上記の通りとなります。
ただし、本試験においては、解答時間が無制限にあるわけではないため、特に論点となる部分を理由として解答できれば合格答案となります。
各問から課税の対象となるためには、何の要件を満たす必要があるか?を考え、その中で特に論点となる箇所を解答することが望ましいです。

本問では、資産の譲渡等に該当するか否かは問題文からそのまま読み取れるため、国内取引に該当するか否かが問われている問題になります。従って、解答は国内取引に該当するため、課税の対象となる。と簡潔に解答しております。

例えば問題の事業者が個人事業者であれば、事業行為に該当するか否かが論点となる可能性がありますし、代物弁済であれば対価を得て行われたか否かが論点となる可能性がありますので、解答をパターンで覚えるのではなく、取引事例においては、何が論点となっているかを読み取ったうえで、理由の解答ができるように頑張りましょう!

根拠法令(参考)

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
八 資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。

(課税の対象)
第四条 国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。
2 保税地域から引き取られる外国貨物には、この法律により、消費税を課する。
3 資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。
一 資産の譲渡又は貸付けである場合 当該譲渡又は貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所(当該資産が船舶、航空機、鉱業権、特許権、著作権、国債証券、株券その他の政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)
二 役務の提供である場合 当該役務の提供が行われた場所(当該役務の提供が運輸、通信その他国内及び国内以外の地域にわたつて行われるものである場合その他の政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)
4 次に掲げる行為は、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす。
一 個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合における当該消費又は使用
二 法人が資産をその役員(法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員をいう。)に対して贈与した場合における当該贈与
5 保税地域において外国貨物が消費され、又は使用された場合には、その消費又は使用をした者がその消費又は使用の時に当該外国貨物をその保税地域から引き取るものとみなす。ただし、当該外国貨物が課税貨物の原料又は材料として消費され、又は使用された場合その他政令で定める場合は、この限りでない。
6 前三項に定めるもののほか、課税の対象の細目に関し必要な事項は、政令で定める。

(資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定)
第六条 法第四条第三項第一号に規定する政令で定める資産は、次の各号に掲げる資産とし、同項第一号に規定する政令で定める場所は、当該資産の区分に応じ当該資産の譲渡又は貸付けが行われる時における当該各号に定める場所とする。
一 船舶(登録(外国の登録を含む。以下この号において同じ。)を受けたものに限る。) 船舶の登録をした機関の所在地(同一の船舶について二以上の国において登録をしている場合には、いずれかの機関の所在地)(居住者が行う日本船舶(国内において登録を受けた船舶をいう。以下この号において同じ。)以外の船舶の貸付け及び非居住者が行う日本船舶の譲渡又は貸付けにあっては、当該譲渡又は貸付けを行う者の住所又は本店若しくは主たる事務所の所在地(以下この項において「住所地」という。))
二 前号に掲げる船舶以外の船舶その譲渡又は貸付けを行う者の当該譲渡又は貸付けに係る事務所、事業所その他これらに準ずるもの(以下この条において「事務所等」という。)の所在地
三 航空機航空機の登録をした機関の所在地(登録を受けていない航空機にあっては、当該譲渡又は貸付けを行う者の譲渡又は貸付けに係る事務所等の所在地)
四 鉱業権若しくは租鉱権又は採石権その他土石を採掘し、若しくは採取する権利(以下この号において「採石権等」という。)鉱業権に係る鉱区若しくは租鉱権に係る租鉱区又は採石権等に係る採石場の所在地
五 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権又は育成者権(これらの権利を利用する権利を含む。)これらの権利の登録をした機関の所在地(同一の権利について二以上の国において登録をしている場合には、これらの権利の譲渡又は貸付けを行う者の住所地)
六 公共施設等運営権 公共施設等運営権に係る民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成十一年法律第百十七号)第二条第一項(定義)に規定する公共施設等の所在地
七 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずる権利を含む。)又は特別の技術による生産方式及びこれに準ずるもの(以下この号において「著作権等」という。)著作権等の譲渡又は貸付けを行う者の住所地
八 営業権又は漁業権若しくは入漁権これらの権利に係る事業を行う者の住所地
九 次のイからホまでに掲げる資産 それぞれイからヘまでに定める場所
イ 法別表第一第二号に規定する有価証券(ホに掲げるゴルフ場利用株式等を除く。)当該有価証券が所在していた場所
ロ 登録国債 登録国債の登録をした機関の所在地
ハ 第九条第一項第二号に掲げる持分 当該持分に係る法人の本店又は主たる事務所の所在地
ニ 第九条第一項第四号に掲げる金銭債権(ホに掲げる金銭債権を除く。) 当該金銭債権に係る債権者の譲渡に係る事務所等の所在地
ホ 第九条第二項に規定するゴルフ場利用株式等又は金銭債権 同項に規定するゴルフ場その他の施設の所在地
十 前各号に掲げる資産以外の資産でその所在していた場所が明らかでないものその資産の譲渡又は貸付けを行う者の当該譲渡又は貸付けに係る事務所等の所在地
《改正》平13政274
《改正》平13政383
《改正》平18政129
《改正》平19政087
《改正》平19政369
《改正》平23政198
2 法第四条第三項第二号に規定する政令で定める役務の提供は、次の各号に掲げる役務の提供とし、同項第二号に規定する政令で定める場所は、当該役務の提供の区分に応じ当該役務の提供が行われる際における当該各号に定める場所とする。
一 国内及び国内以外の地域にわたつて行われる旅客又は貨物の輸送当該旅客又は貨物の出発地若しくは発送地又は到着地
二 国内及び国内以外の地域にわたつて行われる通信発信地又は受信地
三 国内及び国内以外の地域にわたつて行われる郵便又は信書便(民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第二項(定義)に規定する信書便をいう。第十七条第二項第五号において同じ。)差出地又は配達地
四 保険保険に係る事業を営む者(保険の契約の締結の代理をする者を除く。)の保険の契約の締結に係る事務所等の所在地
五 専門的な科学技術に関する知識を必要とする調査、企画、立案、助言、監督又は検査に係る役務の提供で次に掲げるもの(以下この号において「生産設備等」という。)の建設又は製造に関するもの当該生産設備等の建設又は製造に必要な資材の大部分が調達される場所
イ 建物(その附属設備を含む。)又は構築物(ロに掲げるものを除く。)
ロ 鉱工業生産施設、発電及び送電施設、鉄道、道路、港湾設備その他の運輸施設又は漁業生産施設
ハ イ又はロに掲げるものに準ずるものとして財務省令で定めるもの
六 前各号に掲げる役務の提供以外のもので国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供その他の役務の提供が行われた場所が明らかでないもの役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地
【則】第二条
《改正》平12政307
《改正》平14政386
《改正》平27政145
3 第十条第一項に規定する金銭の貸付け又は同条第三項第一号から第八号までに掲げる行為が国内において行われたかどうかの判定は、当該貸付け又は行為を行う者の当該貸付け又は行為に係る事務所等の所在地が国内にあるかどうかにより行うものとする。

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