「相磯桃花という残酷の山と優しさの裾野」 author by 増田ぴろよ

相磯桃花は残酷な女だ。
口もとに笑みを浮かべながら静かに怒りを背負っている。
唇が、口角がきれいに上がっている造形なだけで、別に微笑んでなんかいないのかも。
目の奥は笑っていない。
修羅に生きているわりには沼のような優しさも持ち合わせているからちぐはぐだ。
きっと苦労が多いから彼女は優しい。

2018年の夏の終わり。私の地獄制作に付き合ってくれた相磯桃花ちゃんについて語らせてよ。


マーキーライトなんて作ったこともないのに、図画工作&DIY精神だけでなんとか形にしたスチレンボード製の地獄マーキーライト。
〆切まで1週間切ってるのに、作業の終わりは全然見えない状況だった。
展示に間に合わないかもしれない現実を受け入れられない私。つらい。逃げたい。眠い。
とにかく眠くて呆然と横たわっていたのだけど、そんな小さな修羅場にももかは徹夜で付き合ってくれたのよね。

で、異常な作業スピードで一晩で仕上げてくれた。
相磯桃花は修羅場にとても強い。

思えば売れていく芸術家はもれなく残酷だ。人脈、戦略、ここぞという時に出す圧…そういったものを上手く隠しながら凄いスピードで駆け上がる。
のろまな人間はいまだにTwitterでくすぶっている。

相磯桃花は1人で生き延びる力が強い。
メンタル強い。作業も早い。経済的にも打たれ強い。
誰も信用していないのに、弱者に手を差し伸べてしまう。
彼女を見ていると心がざわつくのは、相磯桃花という残酷の山の裾野に優しさが広がっているからだ。


「相磯桃花という残酷の山と優しさの裾野」
優しさの裾野にはたくさんの石が捨てられていて、私たちはその石を1つ1つ拾っては眺める。
いびつな形を愛でる、時には恋い焦がれる。
明日にはゴミだと気付いて即捨ててしまうものこそ執着してしまう。
いびつさを、歪みをこんなに愛してしまうのは何故だろうか。

もし誰からも奪われない人生を生きられたなら、私たちはここまで人間の歪みを見つめていただろうか。

この地獄の半分はあいそももかの優しさで出来ています。



増田ぴろよ

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