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社福経営者向け|令和6年介護報酬改定への意見3:協力医療機関連携加算について、地方や過疎地の現状を把握してほしい

すべて私見です。


今回の報酬改定では、協力医療機関連携加算が創設されました

令和6年の介護報酬改定で、新たに協力医療機関連携加算が創設されました。
加算の創設よりも、「(下記資料参照の)条件を満たす協力医療機関を定めることを義務付けること(3年の経過措置あり)」のほうが大きな出来事かもしれない。

この義務付けをものすごく端的にいえば、「介護老人福祉施設等の各施設はそれぞれ協力医療機関を定める必要はこれまでもあったが、今後は常時医師と看護職員がおり、入院設備のある病院との連携を必ず行ってください」というものだ。

こちらは概要です

令和6年度介護報酬改定について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

令和6年度介護報酬改定の改定事項について
こちらの33枚目~36枚目あたりまでですね。

この加算・義務付けが創設された背景には、コロナ禍があったのかもしれません

完全に憶測ではあるが、この加算・義務付けが創設された背景には、コロナ禍があったのだろうとは思います。コロナ禍のなかで軒並み診療しない、できない、ということが全国で起こりました。介護関係施設でもコロナウイルスに感染しても病院で診てもらうことができず、さらに状態が悪化しても入院させてもらえない、ということも起こりました。

そういったことからも協力医療機関との間で、日頃から相談できる体制や急変時などの対応をしっかり構築・確認しておきましょう。そして入院させるときにはすぐに入院できるような体制を確保しておきましょう、ということかな、と推測できます。

この加算の主旨自体はとても共感することはできます。我々のような特養など施設では医療機関ではないため、医師の指示のもとでの処置くらいしかできません。そういった意味では、介護と医療の連携を緊密にするというのは必要なことだと思っています。

一方、どれほど地方の医療体制の現状を把握して、この加算を創設したのか、という疑問もありました。

地方の医療提供体制の現状は把握しているのか

私がこの加算・義務付けを見たときに、「これって地方、特に過疎地域の介護施設や病院などは、かなり大変なことにならないか?」でした。

地方(過疎地域)の医療機関の現状は、例えばその町自体に診療所が一つしかない、ということがざらにあります。少し大きな市でも、医院・クリニックはそこそこあったとしても、入院体制と設備を持つ医療機関というのは、かなり限られるのではないかとも思います。

私たちのまわりの施設でも、入院設備のある病院へ搬送するだけで、片道40分~50分ほどかかるだろうと思える距離にある施設がいくつかある。そういった施設では、まずは近くの診療所やクリニックが協力医療機関となって診てもらい、必要に応じて入院のできる医療機関を紹介というふうにしていたのではないかと思いますが、(もちろんこの加算・義務化でも、それを否定しているわけではありません)それが、今回の加算・義務化によって、さらに要件を満たす病院さんとも協力医療機関として連携しなければならなくなったということになります。

ただでさえ、少ない入院設備を持つ病院への過度な負担にはならないか

我々の市では、入院設備のある病院は3院しかありません。さらにいえば、秋田県内でも救急体制をとっている病院は本当に限られてきます。

秋田県内の救急医療機関一覧

こういった現状のなかで、この加算が創設されることによって、一部の病院へ集中することにならないか、過度な負担にならないか、カバーできるのか、ということが心配になっています。

さらにこの加算では、協力医療機関との一年に一回以上の緊急体制の見直しなどを話し合い、それをその所轄庁へ報告することも必要だ。我々にとっては一年に一回(以上)のことだが、仮に30施設の協力医療機関になっている病院であれば、30回(以上)対応しなければならなくなる。こうしたこともかなりの負担なのではないか。

この状況は地方だけなのか

こうした現状は、医療機関そのものに限りがある地方だけ、のことかもしれないと思い、首都圏のある病院(救急医療機関)の理事長さんに、この加算・義務化の影響をお聞きしたところ、協力医療機関になってほしいという介護施設からの依頼が殺到していて大変だ、という話をしていた。

すでに病院によっては介護施設からの協力医療機関の申し出には体制的に答えられないといって断っているところもあると聞いた。

実態把握が待たれる

すでにこの加算や義務化は始まっているが、「3年間の経過措置の間に、この連携体制に係る実態把握を行う」と資料にある。
私たちの町でも、医療提供体制は縮小傾向だ。とくに入院ができる病院は本当に少なくなりつつある。
そうしたなかで、どのような実態となっているのか、調査が待たれる。

その他の意見は下記リンク
社福経営者向け|令和6年の介護報酬改定への意見1:適正利潤、再生産コストの議論がない|村木宏成/Hironari Muraki (note.com)

社福経営者向け|令和6年介護報酬改定への意見2:食費、居住費の自由化、弾力化または自動スライド化の議論を|村木宏成/Hironari Muraki (note.com)

下記は介護報酬改定に関するマガジン
令和6年介護報酬改定で考えたこと|介護施設経営者向け|村木宏成/Hironari Muraki|note

下記は完全に社会福祉法人経営者向けマガジン
社福経営の超ディープな話|完全に社会福祉法人経営者向け|村木宏成/Hironari Muraki|note


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