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180.トマト2倍でカレーは2倍おいしくなるのか? 問題

カレーと向き合う日々は、トマトと向き合う日々である。

……とはさすがに言えない。ゴールデンルールにおいてトマトはうま味を生む3番目のプロセスで活躍する。トマトと言っても何を使うかは場合によって違うし、味わいにも差が出る。そのあたりは、これまでの記事にも書いて来た記憶がある。

今回は、生のトマトをカレーに使う想定で、通常の量の2倍のトマトを使ったときにカレーがどのくらいおいしくなるのかを実験してみることにした。イカのレシピで作ってみる。トマトの大1個がだいたい350g前後だとして、特大2個分(小4個分程度)を4人前のカレーに使う。問題はトマトの処理(主に加熱による脱水)である。

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通常なら玉ねぎやにんにく、しょうがが炒められた後に生のトマトを加えて鍋中で加熱していけばいいのだが、ちょっとだけ手間をかけて下準備の段階でトマトだけを煮詰めておくことにした。750gのトマトが100gになるまで脱水したから、かなり煮詰めたことになる。ここから粗熱をとってさらにミキサーでペーストにすれば、3倍濃縮のトマトピューレを使うのに近い状態になるが、今回はミキサーはなし。
さて調理開始。

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●トマト2倍チキンカレー
【材料】
紅花油 50g
玉ねぎ(くし形切り) 250g
塩 8g
にんにく(みじん切り) 10g
しょうが(みじん切り) 10g
パウダースパイス 15g
トマト(ざく切り) 750g
鶏肉(もも・むね・ひと口大) 480g
水 250g

【下準備】
トマトは、100gになるまで煮ておく。

【作り方】
1. 鍋に油と玉ねぎ、塩を加えてふたをし、強めの中火で蒸し煮にし、くたっとしてきたらふたをあけてにんにくとしょうがを加えて強火にし、炒める。玉ねぎが100g程度になるまで。
2. パウダースパイスを加えて混ぜ合わせ、トマトを加えて水分が飛ぶまで炒める。
3. 鶏肉を加えて表面全体が色づくまで炒め、水を注いで煮立て、弱火にしてふたをして20分ほど煮る。ふたをあけてさらに10分ほど煮る。

※ 加熱前の材料の重量……1,823g
※ 完成後のカレーの重量……850g
※ 調理過程での脱水率……約46.6%

玉ねぎ2倍でチキンカレーを作ったときに比べるとソースに野菜が煮溶けている分、ソースのテクスチャーがさらりとしてきれいだ。これは僕の好みにあっている。味わいは、当たり前のことだけれど、トマトのうま味はより強く感じる。さらにトマト特有の酸味もつよまっているのが生トマトを使ったときの特徴。これがホールトマトやトマトピューレの場合、トマトらしい風味や酸味が増幅されるというよりも、うま味だけが強まっている印象になる。

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トマトの酸味はカレーの味を引き締める効果があるため、2倍のトマトを使った効果はうま味以外にも出ていることになる。基本的にはよりよくなった印象だが、たとえばトマトピューレを2倍量にしたときと比べてみると、ソースのこなれた感じは乏しい。どんなカレーにしたいかによるが、僕はソースのテクスチャーや色、味わいがキレイでこなれている状態に仕上がるカレーが好きだから、生トマトを2倍にするカレーは丁寧に作っても不均質さが理想よりも強めに出てしまうのが難点か。

そういう意味でいえば、いいとこどりがいいのかもしれない。ゴールデンルールの3番、うま味のところでトマトピューレを使って炒め、6番の具のところで生トマトを使って煮込む。そうすれば、トマトの総量は2倍になった上にうま味も風味も酸味もテクスチャーなどなどもイメージに近い感じにしあがりそうだ。でもまあ、結局は作りたいカレーの設計によるのだけれど。


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