00基本のキーマカレー02

137.カレー100食の材料は4食の25倍でいいのか? 問題

カレーを大量調理する場合、材料の分量は等倍でいいんですか?
よくある質問だ。最近は、カレーパーティやカレーイベントをする人が増えているのか、さらに聞かれることが多くなっている気がする。この件について書こうと思ったが「そういえば、書いた気がするなぁ」とバックナンバーを見てみると、やっぱり何年も前に書いていた。斜め読みしてみたところ、まあ、ほとんど考え方は変わっていないので、以下を参照してもらいたい。

007.2倍のカレーは2倍の材料で作れるのか? 問題

結論からいえば、「等倍であるべき」だ。
たとえば、4人分で中1個の玉ねぎ(250g)を使うレシピの場合、1人あたりがそのカレーで食べる玉ねぎは、1/4個(62.5g)となる。100人分のカレーを調理するなら、1個×25倍で25個(6,250g)が必要だ。このときに使う玉ねぎの量を等倍にせず、たとえば少なめの20個(5,000g)にしてしまったら、そのカレーを食べた人の口に入る玉ねぎの量は、50gになってしまう。カレーのメニューは同じはずなのに。スパイスも含めてすべての材料に同じことが言える。だから、等倍にするべきだ。ただ、加熱による鍋中の水分コントロールやメイラード反応の具合いが均一にならないから、慣れていない人は、量を減らしたほうが失敗しにくい。4人分のレシピで100人分のカレーを作るときに、同じ味を目指しやすくするために主に4種類の方法がある。

A. 鍋の底面積と火力をそれぞれ25倍にする
B. 4人分のカレーを25回にわけて作って合わせる
C. 水分の出やすい食材(肉や野菜、水)を減らし、水分の出ない食材(スパイスを増やす)
D.等倍の材料で同じ味を作れる技術を磨き、再現性を高めるためにレシピのステップを組み替える

書いててバカバカしくなる内容だが、AとBは現実的ではない。Dは超難易度が高い。だから、Cがいいということになる。「Dで行きたい!」という人は、YouTubeに公開している動画が役立つかもしれない。


「材料は等倍だ」と言ったときに過去記事にもあるが、気をつけなければいけないのは、誤差である。4人分ではOKだった分量が25倍にしたときにブレる可能性がある。だから、理想的なのは、4人分でレシピを考え、4人分で作り、そのあと等倍して大量調理し、調整した分量を割り戻して4人分にする。もしくは、1人分に換算しておくこと。そうすれば、30人分でも50人分でも200人分でも正確な分量を計算できるようになる。

「二度と同じカレーを作らない」がモットーの僕はこの作業を正確にしているレシピは5つしかない。カレーの車のチキンカレー3種とAIR SPICEのカレー2種である。
先日、伊勢丹新宿店でAIR SPICEの基本のキーマカレーを100食限定で提供する機会があった。4人分のレシピは商品化されているから、これを元にすべての材料を25倍した分量をベースに作ってみた。以下、数字は、そのときの記録である。

【4食分量】→【100食等倍量】→【作った分量】→【4食に割戻した量】
 ・植物油  45ml → 1,125ml → 900ml → 38ml
 ・玉ねぎ  300g → 7,500g → 7,000g → 280g
 ・ホールスパイス  3g → 75g → 85g → 3.4g
 ・パウダースパイス  17.5g → 437.5g → 480g → 19.2g
 ・しょう油  15ml → 375ml → 230ml → 9.2ml
 ・はちみつ  15g → 375g → 250g → 10ml
 ・水  150ml → 3,750ml → 3,000ml → 120ml
 ・挽き肉  500g → 12,500g → 10750g → 430g

左端の分量から右端の分量へ微修正しておくと、AIR SPICE基本のキーマカレーは、大量調理に対応できる正確な分量が割り出せることになる。
とはいえ、これは、僕自身の現在の再現技術力に沿った計算になるため、この計算で誰もが行けるわけではないし、食材の状態や質、その日の温度や湿度、調理環境などのコンディションによってめまぐるしく変わるので、結局、感覚的な対処が必要になるのだけれど。

ちなみに伊勢丹の催事では、「鶏挽き肉100%」のレシピを「豚ひき肉50%・鶏挽き肉50%」にアレンジした。塩の量は意図的にかなり減らして「おいしすぎない味」を目指した(勇気のいる行為だったのだけれど……)。辛味は全くない配合にした(本当は辛いほうがおいしいけれど……)。具のなすはカレーに入れず、アチャールにして添えた。これらを調整して、合計20リットル(1人分あたり200ml)のカレーを作った。
仮にあのカレーに塩と水と油を増やしてココナッツミルクを少し加えたりすれば、24リットルくらいのカレーは似たような味わいで作れるだろう。そうすれば、原材料費や手間をほぼ変えずに120食のカレーが出せる。当初の予定よりも20食分、利益が増える。商売を目的にカレーの提供をするなら、そんなスタンスもありなのかもしれない。

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