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156.カレーリーフの効果的な香らせ方はどれか? 問題

カレーにおける各種香りの活かし方について試作検討する、長期プロジェクトを立ち上げた。自分たちなりの結論を出せるのはいつになるかわからないが、途中経過でもまとめられることがあれば、随時、記しておこうと思っている。
すごく簡単に言えば、香りは、作り手が加えたり生み出したりしてから食べ手が口に運ぶまでの時間が短ければ短いほど効率的に働くんじゃないか、という仮説に基づいて、従来にない特殊なカレーの姿を編み出そうとするプロジェクトだ。

そこで、まず、手軽に試すことのできる香りアイテムとして、ココナッツ油とカレーリーフを選択した。これらの香りをカレー調理の後半に加えるパターンAと前半に加えるパターンBで比較してみる。ケララチキン的なカレーを題材にして、2種の香りのタイミング以外はすべてを統一にして調理してみることにした。

・ Aのカレー(仕上げに香りづけ)……カレーリーフをもんで散らし、熱したココナッツ油をまわしかける。
・ Bのカレー(はじめに香りづけ)……ココナッツ油でスタートし、玉ねぎと共にカレーリーフを炒める。

【材料】
ココナッツ油 50g
こめ油 50g
カレーリーフ 4g
玉ねぎ(粗みじん切り) 300g
塩 18.5g
にんにく(すりおろし) 15g
しょうが(すりおろし) 25g
ししとう(みじん切り) 12g
ココナッツミルクパウダー 10g
パウダースパイス
 ・コリアンダー 13.5g
 ・パプリカ 4g
 ・ターメリック 4g
鶏もも肉(ひと口大に切る) 570g
水 500g
トマト(ざく切り) 250g
三温糖 6g

【作り方】
1. 鍋に米油(Bはココナッツ油)を熱し、玉ねぎと塩を加えて濃いきつね色になるまで炒める。
2. にんにくとしょうがを加えてざっと混ぜ合わせ、しし唐を加えて炒め合わせる。
3. ココナッツミルクパウダーを加えてなじませ、パウダースパイスを加えて炒める。
4. 鶏肉を加えて全体を混ぜ合わせ、表面全体がほんのり色づくまで炒める。
5. 水を加えて煮立て、中火で5分ほど煮る。
6. トマトと砂糖を加えてさらに5分ほど煮る。
7. カレーリーフをもんで散らし、別鍋にココナッツ油を熱してカレーリーフの上に加えて混ぜ合わせる(Bはこめ油を加えて混ぜ合わせる)。強火で煮立て中火にして5分ほど煮る。

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・ Aのカレーの味わい……食べる前、ココナッツ油の甘い香りは強めに感じる。それにつられてか、口の中にあるときの全体の風味や鼻から抜ける香りが奥深い印象。味わいはきりっとしてすっと消える感じ。
・ Bの味わい……食べる前の香りは比較的弱め。全体的な風味のなじみがよく、ココナッツオイルの香りというより味わいは感じやすい。カレーリーフの香りは感じにくい。味わいは滑らかに持続する感じ。

比較結果として、Aの方がおいしく感じた。加えたい香りが狙い通り食べるときまで効率よく機能したからだと思う。フレーバーオイルやフレッシュハーブの香りは、(当たり前のことだけれど)加熱調理時間が短ければ短いほどよく香ることが改めて分かった。だからと言ってスタータースパイスにココナッツ油を使う意味がないわけではないし、玉ねぎと一緒にカレーリーフを炒めることも間違いなわけではない。そのものの香りは薄まるが、その分、鍋中の素材と融合するチャンスは増え、新しい風味を生むのに貢献する場合もある。

さらに言えば、カレーリーフのような繊細なフレッシュハーブを高温の油で炒める手法にも個人的には疑問があったが、こちらもどう香らせたいかによって選択するのがいいと思う。僕の経験上、油で炒めるインド人シェフが多い一方で、僕が最も信頼しているタミル出身のシェフは、手で揉んで仕上げに加えて混ぜ合わせるだけである。どちらが正解かではない。どちらもそれぞれに違う。
そして、今回、採用した方法は、僕が10年近く前から気に入っている手法だ。それは油で炒める炒めないの間を取った手法。鍋の表面に手で揉んだカレーリーフを散らしておく。そのカレーリーフめがけて熱した油を注ぎ、数秒間だけジュワジュワとさせるが、直後に鍋中に混ぜ込む方法だ。これだとカレーリーフを油で部分的に炒めることになるが、加熱具合はかなり微妙な加減までこちらでコントロールできる。「はい、これまで!」と思った瞬間に鍋中をかき混ぜればいいからだ。

いずれにせよ、今回の試作では、鍋中にカレーリーフを投入した後に5分ほど弱火で煮込んだ。この最後の煮込みがあるとないとではかなり仕上がりの風味が変わることも分かった。投入後の煮込みは大事だ、と思った。
次回はフレーバーオイルを自作して鍋に投入する方法にチャレンジしてみようと思う。

※協力:まるちゃん(ゼロワンカレー)、シャンカール(東京スパイス番長)、ヌマボーイ(NUMABOY)

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