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185.フライドオニオンはどうすれば成功するのか? 問題

失敗は成功の元である。

……なあんて言えばどこかの偉人の名言のようだが、そんなことを偉そうに言った人がいるのかどうかは知らない。エジソンは、こう言ったそうだ。

‘ I have not failed. I’ve just found 10,000 ways that won’t work. ’
(私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまくいかない方法を見つけただけだ。)

本当かどうかは知らない。が、AIR SPICEの公式ホームページでもこの言葉を採用させていただいている。
さて、フライドオニオンで失敗した僕は、フライドオニオンで成功するための手法を整理するべく、実験を行った。前回の考察から推測して、油の鮮度や熱源の種類はそれほど大きく影響はしないとする。ようするに火加減が大事ということになる。それなら、火加減の先にある加熱温度を調べながら、温度変化がどんな曲線を描くとフライドオニオンはどう揚がるのかを整理してみたい。

玉ねぎの量……300g
油の量……300g/200g/100g
熱源……ガス
火力……ずっと強火
時間……10分間
切り方……繊維に平行スライス/繊維に垂直スライス

結果的には、合計16パターンのフライドオニオンを作ったうち、前半の8パターンは、玉ねぎ300gに対して油の量を同量の300gで固定してその他の要素を変えてみたが、油の量はもっと減らせる。後半8パターンを調理するときに200gと100gを試みた。結果、100gでは、部分的に玉ねぎの表面でメイラード反応が予想以上に早く進行してしまうため、フライドオニオンというよりも「フライドとソテードの中間」といった具合いになってしまう。それはそれでおいしいカレーにはたどり着くが、いわゆるフライドオニオン然としたものにはなりにくい。

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加熱温度については段階ごとに計測する。油を入れた鍋を強火にかけ、油の温度が180度ほどまで上がったところでスライスした玉ねぎを加える。鍋中全体をざっと混ぜ合わせた段階で油の温度は100度まで下がる。そのまま強火のままで温度を上げていくが、8回のトライアルでは、120度までしか上がらなかった。というよりも、120度に上がるまでがおよそ8分ほどで、この後1分ちょっとでこんがりとしたキツネ色になることから、100度でスタートした温度を120度まで徐々に上げていく曲線がフライドオニオンに適しているんじゃないかと判断できる。(ひとまず僕の実験環境でいえば)後半は110度~120度を気プするイメージがよさそうだ。

完成量は、ばらつきが出たが、きれいに揚げられたフライドオニオンで軽量すると、59g~66g程度。300gの玉ねぎが60gになるとすると、脱水率は80%(完成量が20%)となる。
揚げ方についてはだいぶ整理されてきた。他、雑感的に以下のことも感覚としてはつかめた。

・ 玉ねぎの厚さは、1.5ミリ(2ミリ以下が理想)
・ 油は新しくても古くてもOK。酸化していなければ二度目の油の方が色や味わいは深まる?
・ 混ぜは木べらよりも菜ばし。後半は忙しく。
・ 切り方は繊維に平行か垂直かの差は不明なまま。そのまま試食したらあまり差が出ないが、10gのフライドオニオンを100gの熱湯で溶いたら平行は玉ねぎ感が強くおいしい。

そして、まだ触れていなかったが、フライドオニオンでとっても大事なことは、「フライド中」ではなく「フライド後」にやってくる。いい色になるまで揚げた後、油から玉ねぎを取り上げたら、ざるやバット、新聞に広げるのだが、油をしっかりと切るのが大事だ。網と木べらなどで両側から押さえつけるようにして、油をしっかり絞ってバットに上げる。これはかなりのスピードで行わなければならない。理由はふたつ。ひとつは、鍋に残った玉ねぎにはどんどん火が入っていくから。もうひとつは、次のプロセスへ素早く進みたいからだ。

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それは、「フライドオニオンほぐし」である。これには、2本のフォークが欠かせない。塊になってバットに上がったフライドオニオンに素早く丁寧に2本のフォークでほぐひたすらほぐす。これは本当に肝心な作業である。玉ねぎからはモワモワと湯気が上がっていく。そう、ここでしっかりと蒸気を抜く結果、玉ねぎはカラッとパラパラッとなる。ここは超重要なプロセスとなる。

ともかく、これらのことを整理すれば、今後は安定的にフライドオニオンを作ることは可能となった。
さて、このフライドオニオン、いったいどんなカレーをどうおいしくしてくれるの? フライドオニオンは何に機能するの? その件は次の記事で。フライドオニオンが安定的にきれいに作れるようになったらなったで、次はその存在意義が気になってくる。厄介な性格だと我ながら思う。

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フライドオニオン実験


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