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190.丸ごと玉ねぎ素揚げのカレーはおいしいのか? 問題

玉ねぎを丸ごとオーブンで焼いてからカレーを作ってみたところ、「丸ごと素揚げはどうですか?」という提案があった。なるほど、それはやったことがない。早速、挑戦することにした。

そもそも、玉ねぎを丸ごと素揚げにするという料理は、見たことがない。ステーキハウスみたいなところで、玉ねぎに切込みをたくさん入れて小麦粉をまぶし、花びらが開いたような形に揚げる料理をたまに見る。あれはあれでおいしいが、今回の素揚げカレーとは違う。玉ねぎを熱した油にドボンと入れて揚げるのだから。

玉ねぎを8個買ってきた。大き目サイズのものが6個、残りの2個は小さめで新玉ねぎである。皮つきか皮なしかで分け、切込みを入れるか入れないかで分ける。入れる場合は、上部から縦に十字に切込みを入れるか、下部の芯を抜くかの2択。できるだけ油のロスがないように鍋に敷き詰めてから油を注ぎ、油の冷たいうちから火にかける。

それぞれ、素揚げ完了の目安は皮つきなら皮が黒く焦げる手前まで、皮なしの方は一番外側の皮がヒグマ色になるくらいまで。個体差があるため揚げている時間はそれぞれに違ったが、温度が100度を超えて120度近くになるまでにそれなりに時間がかかった。その分、高温の油に玉ねぎを入れるよりも中までじっくり火が入ったと言える。

素揚げ玉ねぎDATA

試食をしてみると、残念なことに想像したほどおいしくは感じない。外側の2枚ほど、こんがりしている部分はかなりおいしいが、内側にいくにつれて香味やうま味は弱まっていく。オーブンで丸焼きをしたときと同じ現象で、玉ねぎらしい優しい味わいがあって悪くないのだけれど、中心に近くなればなるほど、これをカレーにするなら改めて炒めたいという気もちが沸く。8パターンも試作したものの差は感じにくい。

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そこで、素揚げした玉ねぎを使ってカレーを作るときにはちょっと工夫をすることにした。外側のこんがり色づいた部分だけを集めたカレーと、内側に近いものばかりを集めたカレーの2種類を作ることにしたのだ。

●丸ごと玉ねぎ素揚げカレー
【材料】
油 40g
揚げ玉ねぎ 300g
塩 8g
生ターメリック(すりおろし) 15g
トマトジュース 200g
水 150g
鶏もも肉 400g
パウダースパイス 20g

【作り方】
材料をすべて鍋に加えて強火で煮立て、ふたをして弱火で30分煮込む。

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結果は予想通り。素揚げ玉ねぎの外側カレーのほうが、内側カレーよりもはるかにおいしかった。揚げ玉ねぎの状態で300g使用したため、そもそも4人分のカレーに対する使用玉ねぎの分量自体が多く、玉ねぎの味が強い。その上、外側カレーについては、より脱水した状態のものを集めて300gだから、内側カレーよりも生玉ねぎ状態での量が多いことになる。
ただ、それ以上に、揚げ玉ねぎの試食時もそうだったように、こんがりしている部分がうまいのだから、それを集めた結果のカレーがおいしいのは当然である。

一緒に実験をした仲間の中では、「これまで玉ねぎで実験してきた中で最もおいしいカレーだ」と評する人もいたが、要するに玉ねぎをカレーのベースにするときには、メイラード反応している方がおいしく感じられるという結論になるのだろう。だとしたら、丸ごとオーブン焼きと同じだが、丸ごと素揚げにする意味はあまり感じられない。玉ねぎを丸ごと炒めるのは難しいにしても、四つ割りなどの大きく切った状態で炒めれば同様のおいしさに簡単にたどり着ける。そのためにはやはり、前半を水で煮た方が炒めやすくなる。

結局、「大きく切って、炒める前に煮る」ことが大事なのであって、丸ごとオーブン焼きも丸ごと素揚げもカレー作りにはたいして貢献しないことがわかった。
ただ、ひとつ。素揚げの場合、丸ごとではなくたとえば四つ割りにして1枚ずつばらけさせた状態で素揚げにすれば、玉ねぎのどの部分もほぼ均一に色づいていくため、この方法なら素揚げの意味が出るカレーを作れそうだ。ただ、結局、「メイラード反応が偉い」ということを一風変わった火入れで実現させたに過ぎない。
そういう意味では、玉ねぎに関する一連の実験の結果、「玉ねぎを炒める」という行為は非常に優秀だということが改めてわかった。無駄足ではなかったと納得しようと思う。


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