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211.スパイスの香りはどう配合すればいいのか? 問題

物事には、たいていどこかに正解が眠っているんじゃないかと考えたくなる。
でも、スパイスに関しては、今のところ、それは存在しないんじゃないかと思う。
嗜好品なのだから、誰かがいい香りと思えば、別の誰かがいやな香りと感じたりする。

物事には、たいていどこかにメソッドが存在するんじゃないかと考えることもある。
スパイスの配合に関しては、今のところ、はっきりとしたメソッドは存在しない。
世界中の発信物を探し回っているけれど、メソッド化されたものを見つけられないでいる。

だからこそ、メソッドをいつか作りたいと思っている。
カレーを作るときのスパイスの配合については、スパイスメソッドなるものを整理して発表したことがある。たしか3年ほど前の著書『スパイスカレーを作る』が初出だったか。
正方形をパズルの枠に見立て、シンプルなルールに従ってスパイスのピースをはめていく。どんなふうにはめてもカレーのいい香りができあがる。

今年の新刊『スパイスを極める』では、そのスパイスメソッドをさらに少し進化させて整理している。この手法は、いわば、スパイスを“サイエンス”の側面から見つめたものである。

物事には、たいていどこかにお手本になるようなものが潜んでいるんじゃないかと期待したくなる。
スパイスの配合に関しては、ひとつは、世界中で個別に親しまれているミックススパイスがそれにあたると思う。
だから、新刊では、「世界のブレンドを真似する」と題して、代表的なミックススパイスの配合例を紹介している。

いわばスパイスを“カルチャー”の側面から見つめている。それだけじゃ面白くないから、少しだけ“サイエンス”的な側面を入れ込むことにした。世界のブレンドを正方形のパズルで整理してみたのである。すると、いくつかの共通点が見えてきた。

・クミンシード 小さじ1と1/2
・コリアンダーシード 小さじ1と1/2
以下の中東地域で使用される代表的なブレンドにはクミンとコリアンダーの組合せが共通している。

1.    バハラット
2.    セブンスパイス
3.    ラスエヌハヌート
4.    ハリッサ

次に、少し香ばしく食欲のわく香り。その鍵となるガーリックとチリ、パプリカあたりが活躍するのは以下のブレンドだ。もちろん、塩も大事な要素。

5.    クレイジーソルト
6.    デュカ
7.    ザアタル

一般的に「シーズニング」と呼ばれることが多いブレンドはどうだろう? 「ガーリック、オニオン、パプリカ、レッドチリ、ブラックペッパー、塩」。共通項は多い。

8.    ジャークミックス
9.    ケイジャンミックス
10.  パエリアミックス

インド亜大陸周辺で使用されるブレンドでは、どうか。

11.  トゥナパハ
12.  ガラムマサラ
13.  チャットマサラ

5つのスパイスを配合したブレンドでは、どうか。

14.  パンチフォロン
15.  キャトルエピス
16.  ウーシャンフェン

参照できる例が多いと分析は楽しい。

物事には、どこかに独創性のヒントになるようなものがありはしないか、と探したくなる。
スパイスの場合、何をどうブレンドしても独創的にはなりそうだが、うまくいくのかどうか、自信は持てない。
だから、新刊では、自分なりのブレンドや自分なりのスパイス感を生み出すためにひとつの指針を提案している。スパイスの役割を自分なりに決め、配合の出発点にするのだ。

・最も好きなスパイスは?
・決め手となるスパイスは?
・個性的なスパイスは?
・汎用性のあるスパイスは?
・不可欠なスパイスは?
・オマケでいいスパイスは?
・頼りになるスパイスは?

自分なりに7つの質問にスパイスの名前で答えてみよう。これはいわば、スパイスを“アート”の側面から見つめるのだ。誰にも文句を言われる筋合いはない。自分だけのスパイスアートなのだから。


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