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158.どんなトマトがカレーをおいしくするのか? 問題

生のトマトとホールトマト、どちらを使った方がカレーはおいしくなりますか?
よくある質問である。FAQを作っておこうかと思うほどである。
そういえば、最近、将棋の渡辺名人が「対戦相手の棋風について印象は?」という問いに対して、「誰かテンプレート作っておいてもらえないかな」と言っていて笑った。

せっかくなら、おいしいトマトで実験をしてみたい、と思い、皮が薄くグルタミン酸のうま味が強い“フルティカ”を使ってカレーを作ってみることにした。

ホールトマトは、「ラベリンダ ホールトマト(ジュース漬け)」。商品の説明文によれば、「良質で完熟したイタリア産トマトのみを厳選して湯むきパックしました。原材料表記は、「トマト、トマトジュース、酸味料」。内容量は、「固形量:240g、ジュース部分:160g」。トマトジュースという部分がどんなものなのかが気になるところだが、ともかく濃縮しているわけではないと仮定して進める。

トマトの扱いは3パターンとした。

A:生のままのトマト……ざく切りして加えてつぶしながら炒める。
B:加熱した生トマト……ざく切りして100mlの水で蒸し煮し、ミキサーでピューレにして加える。
C:ホールトマト……そのまま加えてつぶしながら炒める。

【材料】
油 45g
玉ねぎ(スライス) 250g
塩 8g
ホールスパイス 適量
グリーンチリ(輪切り) 1本
GGジュース 69g
トマト 200g
鶏もも肉(ひと口大) 250g
パウダースパイス 適量
ボア(タイのへちま) 135g
水 250ml
ココナッツミルク 50ml

【作り方】
1. 鍋に油を熱し、玉ねぎと塩、ホールスパイス、グリーンチリを加えて、玉ねぎがきつね色いになるまで炒める。
2. GGジュースを加えて香ばしい香りが発つまで炒める。
3. トマト(A、B、C)を加えて水分を飛ばすように炒める。→ベースが完成
4. 鶏もも肉を加えて表面全体が色づくまで炒める。
5. パウダースパイスを加えて混ぜ合わせる。
6. ボアと水、ココナッツミルクを加えて煮立て、ふたをして弱火で10分ほど煮る。

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ベースを完成させるまでに加えた材料(分量)の総合計は、570g程度。ベースの重さは200gでA、B、Cの鍋中をそろえたため、370gを脱水したことになる。その後、できあがったカレーの重さは、765gで統一して試食した。

Aの感想……軽やかだがどことなくボケた感じもある味
Bの感想……トマト感もありながらうま味も感じる味
Cの感想……濃厚、凝縮された強い味とささやかな酸味

実験のために集まったメンバー7名で投票をとった結果、A……3票、B……4票、C……0票」となった。

Cのホールトマトは、それほど苦もなく濃い味を出せる点については、やはり、あらかじめ加熱されているメリットと、加熱にむいているサンマルツァーノ種の本領が発揮されている。ただ、じっくり試食をしてみると酸味料(クエン酸的なもの?)の酸味が後味に残るのが気になる。そして、“トマトジュース”部分の謎。

やはり、“おいしいトマトを選ぶ”技術と“しっかり火入れ、脱水する”技術が備わっていれば、生のトマトの方がおいしくなることは実感できた。ちなみにこれらの技術を習得することが極めて難しいために、僕は自分の提案するレシピでは、ホールトマトやトマトピューレなどの加熱済みのトマトを推すことが多い。

生のトマトに関して言えば、AとBの印象は個人的には微差だから、下準備(蒸し煮~ミキサー)が入った方がよりいいとはおもうけれど、その手間をかけただけの効果が食べた人にきちんと届くかは疑問。

ホールトマトではなく、原材料が100%トマトで3倍濃縮したトマトピューレだったらどうなるのか、トマトを生の状態でピューレにしたらどうか、湯むきして種を取り除いたらうま味が減少してしまうのか……、疑問はつきない。トマトのFAQについてのテンプレートは、まだできそうもないな……。

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