見出し画像

167.「薫らせる」とカレーはおいしくなるのか? 問題

アロマカレーという新しいジャンルを勝手に作り、可能性を探っている。

“薫るアロマカレー”。具体的には去年の前半から研究会を始めている。スパイスと油でアロマオイルを作り、カレーを作るのだ。アロマオイルというと、食用とは別のものが一般的なイメージなので、ちょっとおいしくなさそうなんだけれど。アロマ油と書いた方がいいのかなぁ。

画像1

キッカケはカレーリーフのテンパリングへの疑問からだった。油でバチバチやってしまったら、作り手が調理場で感じる香りはマックスだけれど、食べ手に届けられた時には香りが弱まってしまうんじゃないか。だったら、香りを最大限に引き出したカレーリーフ油を仕上げに回しかけた方がいいはずだ。この件は、過去の記事にも書いた。

そこから展開して、カレーをカレーたらしめているすべてのスパイスの香りは、調理の仕上げに加えた方が効果的かもしれない、と考えるようになった。たとえば、ケララチキンカレーでやっていみよう、ということで、南インド料理をベースにする店『ゼロワンカレー』のシェフ、マルちゃんと香料会社で開発の仕事をするヌマボーイに声をかけ、研究会にいそしんだ。
とあるケララチキンに使うスパイスは、以下のラインナップ。

・クミンシード、ブラックペッパー……ドライホールスパイス
・ターメリック、レッドチリ、コリアンダー……ドライパウダースパイス
・カレーリーフ……フレッシュホールスパイス

このカレーの調理プロセスからスパイスを抜いてチキンシチュー的なものを作り、仕上げにアロマ油を混ぜ合わせることで、ケララチキンカレーができるはず。

画像2

段階的に油に香りを移していった。手法としては、密閉できるガラス瓶にスパイスと油(今回は米油)を入れて湯煎にかける方式だ。

第1段階……カレーリーフ油を使う
第2段階……カレーリーフ+ホールスパイス油を使う
第3段階……カレーリーフ+ホールスパイス+パウダースパイス油を使う

第1段階と第2段階はうまくいった。いよいよ、第3段階である。スパイスの香りが全くないシチューを作る。普通にうまい。器に盛りつけた状態はカレーではない。

画像3

画像4

ここに第2段階のアロマ油と第4段階というべき、パウダースパイスのみを個別で香りづけしたアロマ油をトッピングとしてまわしかけた。

試食してみると、そこには香り高いケララチキンカレーがあったのである。口内調味の新しい形とでもいえるかもしれない。この方式だと作り手と食べ手が共創する形でひと皿のカレーを作り上げることができる。しかも、香りがはるかにいい。

アロマカレー、可能性はおおいにありそうだ。これが成立するのだから、次の段階は、カレーのメニューごとにアロマ油を開発することである。その先の未来は素晴らしい。チキンシチューだけを大量に仕込んでおけば、食べ手の希望するカレーのアロマ油を垂らすことによって、一度の仕込みで5種類や10種類のカレーを瞬間的に生み出せるようになるのだから。アロマカレーは近未来の味、だと思っている。

画像5

画像6

※この研究結果は、雑誌『RiCE』カレー特集(2021年4月末発売)にて掲載予定。


★毎月届く本格カレーのレシピ付きスパイスセット、AIR SPICEはこちらから。http://www.airspice.jp/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?