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170.玉ねぎをやめるとカレーはおいしくなるのか? 問題

最近、カレーを作るときの玉ねぎやにんにく、しょうがをできるだけ少なくしたり、使うのをやめてみたりしている。にんにくやしょうがについてはなければないで、別の味わいのカレーに仕上がって、おいしい。すっきりとクリアな味わいになるのが気に入っている。とはいえ、にんにくのパンチ力はなかなかのもので、多くの人に「おいしい」と言ってもらいたいと思えば、使った方が安心材料にはなる。

しょうがのすっきりした風味も捨てがたい。タイミングを変えて投入するだけで、かなりフレーバーが変化するため、面白い。やはり、にんにくもしょうがもカレーに使われるべくして使われている印象がある。

そこへきて、玉ねぎはさらにその色が濃い。やっぱり玉ねぎが入るとカレーはぐっとベースの風味が強まっておいしくなる。うま味や甘みなどの味わいだけでなく、とろみを適度につけたり、ソースのテクスチャーをコントロールしたりするのにも役立っている。とろみ調整の部分を放棄するなら、たとえば、北海道のスープカレーは、玉ねぎを炒めてスープと一緒に煮込んだ後に、玉ねぎを濾す作業があるから、その味わいだけをカレーに利用する方法もある。

ただ、玉ねぎの使用を放棄するというのは、かなりの英断になると思う。

玉ねぎに限らず、カレーに世界中のありとあらゆるネギ類を使ってみたいね、と話し合っていたのが、下北沢『moona』の諏訪内君。だから、今回、オニオンレスカレーを探求するにあたって彼にこのテーマを投げ、レシピ化してもらった。

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作ってくれたのは、チキンカレーとラッサム(のようなもの)。どちらも玉ねぎではなく長ネギを使った。長ネギはものによっては玉ねぎよりも糖度があったりするので僕もカレーにはたまに使う。繊維が残りやすいため、切り方や加熱の方法には検討の余地があるが、玉ねぎのこっくりした味わいとは違ったシャープな味わいに仕上がった。

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玉ねぎを使わないカレーの代表としては、たとえば、インド料理ならバターチキンがある。が、あれはバターと生クリームとトマトでコテコテの味にすつ、場合によっては鶏肉のマリネにカシューナッツを使ったりもするから、玉ねぎに匹敵するうま味やとろみは十分演出できている。最近の国内のインド料理店ではフライドオニオンを使ったペーストを取り入れているところもあるから、うま味の塊カレーとなる。

一方、タイのカレーも玉ねぎはペーストに入れることもあるが、かなり少量だ。タイカレーの場合、うま味ととろみの補填はココナッツミルクが活躍しているのだと思う。ココナッツミルクを使わないカレー(のような料理)もあるが、やはり、玉ねぎを使わないことに決めたら、カレーをおいしく作るためには他のネギ類や何か別のアイテムに頼ることになるのが現状かもしれない。やっぱり玉ねぎは偉いのだなぁ、と思う。

それでも、玉ねぎを使わない、オニオンレスカレー作りにこれからも挑戦していきたいと思っている。簡単においしくなる武器を放棄することで、何か別の材料に頼るのではなく、テクニックを向上させたり手順を工夫したりする余地がまだ残されていると思うからだ。

たとえば、今回、諏訪内君が作ってくれたチキンカレーは、途中でまさかの“ハンズオフ”手法がでてきてびっくりした。僕が今年、ハンズオフ(手を触れないで作る)カレーだけで1冊のレシピ本を出版する予定(『スパイスカレー新手法』)であることは、もちろん、彼は知らない。だから、玉ねぎを使わないことでテクニック的な工夫を考えた結果、解決方法のひとつにハンズオフが選ばれたという事になる。

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玉ねぎを使うものの、従来とは異なる手法で使って、さらにハンズオフして作るカレーについては、同じ企画で別のシェフが手掛けてくれているから、次の機会に紹介したいと思う。

※このトライアルは、雑誌『RiCE』カレー特集(2021年4月末発売)にて掲載中。

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