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206.ハーブカレーにはいくつの手法があるのか? 問題

新刊『ハーブカレー』では、ハーブの使い方を4パターンに分けて章立てしている。

第1章:チョップ
第2章:ペースト
第3章:(市販のペースト)
第4章:ホール
第5章:ドライ

このうち、タイカレー的なものは第2章と第3章にまとめている「ペースト」である。
そのほかは、独自のものになる。チョップというのはとても単純で、単体のハーブを包丁でみじん切りにし、カレー粉を使ったカレーの仕上げに混ぜ合わせるタイプである。
インドカレーには一部見られる方法ではあるが、特徴は、香菜のようなよく出てくるハーブ以外の種類も使われることと、想像よりもはるかに多い量をどっさり加える点にある。スパイスやハーブの香りは調理の後半に加えたものほど食べるときに早い段階で香るため、食べ始めからハーブをがっつり感じるカレーに仕上がる。

「ホール」という手法も、部分的にはいくつかのカレーに登場するもの。ホールだから、ハーブを丸のまま使う。主に煮込みの段階で加えるものが多い。これもまた種類と量が通常イメージされるカレーよりもはるかに多いのが特徴。
そう考えるとカレーという料理はなかなかの包容力を持った料理だと改めて思う。

「ドライ」はその名の通り。乾燥したハーブを使う。ハーブのイメージ自体、青々としてフレッシュなものと捉えられがちだ。たとえば、スーパーでは野菜コーナーの片隅に置いて売られているような。でも、スパイスのボトルが並ぶコーナーにいけば、ミントもローズマリーもバジルもドライのものが売られている。プロバンス風みたいな感じのドライミックスハーブもあったりする。
最近、一部のカレーの世界で流行しているカスリメティもドライハーブである。この手のものは、どっさり入れていいものとそうでないものがあるが、いずれにしてもこれまでに体験したことのない香りをカレーにもたらしてくれる。


チョップ、ホール、ドライともに今回は単体のハーブをひとつのレシピに使う形を取ったが、もちろん、複数種類のハーブを組合わせて応用する手法もある。まだまだやれることは多そうだ。それでいうと1点、後悔が残ることがある。

実は、ハーブカレーには第5の手法があることに気がついた。が、間に合わなかった。
新刊『ハーブカレー』の撮影を終えた後、フランスを旅したときにパリのビストロで食事をしたら、魚料理に素揚げしたセージがトッピングされていて、ハッとした。そうか、「フライ(揚げる)」があったじゃないか。
その後、年が明けて、今年の1月にバンコクでゲーンマッサマンの作り方を習ったときにペーストの材料を片っ端から素揚げにしているのを見て、「やはり、フライを入れるべきだった」と再び思った。が、時すでに遅し。改めてレシピを追加するわけにも再撮影するわけにもいかず、コラムにくよくよと記しておくことにした。

ハーブカレーを整理するのに3年ほどの時間をかけたはずだったが、それでも新しい手法は見つかる。今後もハーブと向き合い、タイ料理を勉強し、ハーブカレーをもっと進化させたいと思う。

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