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184.フライドオニオンは何が原因で失敗したのか? 問題

成功と失敗は常に紙一重である。
……なあんて言えばどこかの偉人の名言のようだが、そんなことを偉そうに言った人がいるのかどうかは知らない。でも、つい最近、その事態に直面した。札幌で料理教室をしたときのことだ。午前と午後の2回にわけて実施した際、フライドオニオンを仕込んだら、午前中に大成功し、午後に大失敗したのである。午前の部は開始前に仕込んでいつも通りカラッと仕上がったが、午後の部は時間がなくて別のデモと同時並行で玉ねぎを揚げた。結果、ベタッとした。具体的な条件は以下の通り。

午前の部……ガス/強火・短時間/新しい油
午後の部……IHクッキングヒーター/途中弱火・少し長めの時間/二度目の油

さて、切り口は4つある。「熱源」と「火加減」と「加熱時間」と「油の鮮度」だ。すべてにおいて午前と午後で条件が違ったため、具体的に何が原因で成功と失敗をわけたのかがすぐにはわからない。そこで、改めて東京に戻ってから実験をしてみることにした。

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火加減と加熱時間は連動する。火が強ければ短時間だし、火が弱ければ長時間になる。だから実質的には3条件となる。
ガスとIHクッキングヒーターを比較してみると、温度の上がり方がまるで違う。どちらも最大の強火で比較したところ、ガスは10分で仕上がり、IHは20分かかった。2倍の時間がかかるということはそれだけ温度が上昇しにくいということになる(温度計測もしたが、それはまた別の記事で)。

火加減は、強火版は最初から最後まで強火。弱火版は、スタートは強火にして、ひとまぜ、ふたまぜしてから弱火(弱めの中火)にしてから時間をかけて揚げた。強火の方はイメージ通りの揚がり方だが、弱火の方は脱水時間が長いため、薄切りの玉ねぎがさらに縮まって糸のように繊細になっていく。脱水レベルに差が出た(重さの計測もしたが、それはまた別の記事で)。

新しい油で揚げるのと古い油(2度目の油)で揚げるのとでは、仕上がりのそれほど差は見られなかった。後者の方が少し早めに色づいているようには見える。初回に揚げたときの色味が玉ねぎの表面にうつったからだろう。何種類かの揚げ油を比較してみたが、やはり色づきはそれぞれに違い、味見をすると甘くておいしい味わいがした。

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さて、合計16種類のフライドオニオンを作って、それぞれを比較した結果、大失敗の原因がハッキリした。結論から言えば、「火加減」である。
ガスでもIHでも加熱時間に差は出るもののどちらも上手に揚がる。
新しい油でも古い油でも上手に揚がる。
ところが、強火でうまく揚がる玉ねぎも途中で火を弱めるとカラッとしない。
ただ、玉ねぎの状態はともかく、味わいだけで言えば、弱火で長時間のフライドオニオンが最もおいしかった。スイーツのような香味と甘味。これはこれで何か別のものに使えそうな気がする。

札幌での料理教室が楽しい実験時間をプレゼントしてくれた。
ただ、この結果は、あくまでも僕が体験したことの考察にすぎない。この記事を読んだ人が「なるほど、それが正解か」と思わないでほしい。油だって何度も使って玉ねぎの甘み成分が出てねっとりしてくれば強火で揚げてもうまくいかないこともあるだろうし、熱源と鍋の種類の関係によっては、IHではうまく揚がらないという結果になることもあると思う。玉ねぎのコンディションは午前も午後も同じだったが、品種によって揚がり具合も変わるだろう。どの量を揚げるかによっても差が出る。
フライドオニオン問題について周囲の仲間たちにヒアリングしたところ、「たまたま玉ねぎの機嫌が悪かったんじゃないか」という意見があって、それが素敵な結論だなぁと思ったりもした。真面目に結論づけるなら、「いろいろある!」と断言したいくらいだ。

とはいえ、自分の中では、「この量でフライドオニオンにするならこのスタイルがいいかな」というやり方は定まったので、それはまた次の記事で改めてまとめたい。

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