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151.ターメリック3倍でもカレーはおいしいのか? 問題 Part2

少し前にスリランカのチキンカレーに予定の3倍量のターメリックを使ってみた。
『ミールス、ダルバート、ライス&カリー/3つの地域の美味しいカレー』という本の中で、濱田君(カラピンチャ)のレシピに誤植があったからだ。

・ターメリック 大さじ1と1/2……×
・ターメリック 大さじ1/2……◎

作ってみた結果、味は意外にもおいしかった。ローステッドカレーパウダーやココナッツミルクなど風味の強いものを合わせて使うレシピだったから、ターメリックの土臭さは適度にマスキングされたのかもしれない。

レポート記事の最後を不謹慎(?)な言葉で締めくくった。

せっかくなら次は、ターメリック大さじ2に挑戦してみたいと思うのだけれど、誰かレシピ本で誤植してくれないかなぁ。

こういうことは、うかつに書くもんじゃない。先日、「OLD NEPAL」の遼君に会ったところ、驚きの一言を聞いたのだ。
「僕の本も誤植があったんですよね、ターメリックで……」
え!? 驚きの声にほんの少しだけ(喜)がまじる。『ダルバートとネパール料理』(柴田書店)の中で、“チキンカレー ジョールタイプ”というものがある。骨付き肉を煮込んだ食堂の定番カレーの材料に誤りがあった。

・ターメリック 大さじ2(小さじ6)……×
・ターメリック 小さじ2……◎

なんと、夢にまで見た4人分のカレーに大さじ2のターメリックを使うレシピである! 喜び勇んで実践してみることにした。
鍋に油を熱し、玉ねぎを加えて炒め、鶏肉を加える。肉の表面が色づいたらパウダースパイスを加える。ここに3倍量のターメリックパウダーが投入される。鍋中が真っ黄色になった。ドキドキし、それから、ワクワクした。ざっと全体を絡め合わせたときの鍋中は見たことのない様子になった。黄色い粉がしっかり油を吸い取って、ぼそっとしている。レシピ通り、トマトとにんにく、しょうが、水を加えて煮込んだ。

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煮込んでいる途中に漂う香りは、もちろんしっかりターメリックが強めの香りなのだが、どことなく懐かしい香り。それは去年のカトマンズで食べた香りではなく、ニッポンのカレーの香りのような感じだった。できあがったカレーを白い器に盛り付けると見たことないほど黄色が映える。
スリランカカレー以上にシンプルな材料で構成されるこのカレーは、ターメリックがど真ん中で偉そうに構える不思議なカレーになった。

食べてみると、うまい。あれ? うまいのである。すりおろしたにんにくのフレッシュな香りが仕上がりに残るのはネパールカレーの特徴(だという印象が僕にはある)。このニンニクの香りとターメリックの相性が非常にいい。
何人かに食べてもらったが、ターメリックの土臭さが気になるという人は一人もいなかった。調理途中、ターメリックをどっさり鍋に加えた写真を遼君に送ったら、「おいしくなさそう」と返事。「いや、おいしかったよ」と後で感想を送ったら、返事はなかった(笑)。

結論として前回の実験と同じような結果になった。ターメリックを大さじ2入れてもカレーはおいしい。でも、明らかにネパールのカレーではない。特にネパールのターメリックは香りが独特で強いため、あれを大さじ2入れてしまったら、もしかしたら食べにくい味になったのかもしれない。
『ダルバートとネパール料理』はとてもよく売れていて、発売1か月を待たず重版が決まったそうだ。2刷目からは誤植が修正されている。

今回も友人のおかげで楽しい実験を行うことができた。やめた方がいいとは思いつつ、お約束だから、この一文で記事を締めくくっておくとしよう。

せっかくなら次は、ターメリック大さじ3に挑戦してみたいと思うのだけれど、誰かレシピ本で誤植してくれないかなぁ。

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