47. だしのうま味はカレーをおいしくしてくれるのか? 問題

カレーがおいしい理由はいくつかありますが、その筆頭ともいえるのが、だしのうま味です。だしと言ってもいわゆるカツオや昆布でとる和風のだしに限りません。最も一般的なものはチキンブイヨンです。これが入ると入らないとではだいぶ違う。特に我々日本人にとっては重要です。
本当かどうかわかりませんが、日本人は、世界的に見てもこの第5の味覚と言われるアミノ酸系のうま味に対して特に敏感だと言われています。日本人にしか判断できないうま味も存在するのだ、とか。確かに日本は“だし文化”です。世界各国を乱暴に“だし文化”と“油文化”で区別しているものに出会ったことがあります。カレーのルーツとなったインドは“油文化”、日本は“だし文化”。重視しているものが違うんですね。たしかに。納得。
インドではカレーを作るときにだしをとることは滅多にありません。でも、油はびっくりするほどの量を使います。
おいしさをどこに求めるのかが違うんですね。だから、僕たちは、チキンブイヨンを丁寧にひいてカレーに使ったほうがおいしいと思う。でも、最近、思うのは、繊細なだしでは、スパイスに負けてしまうということです。箱根富士屋ホテルのように二度びきブイヨン(コンソメスープ)を使うならまだしも、家庭で2時間、3時間ほど煮込んで作るブイヨンでは、味が弱すぎるんです。
鶏ガラと香味野菜を静かに煮込んだブイヨンから生まれるうま味はそれでもカレーを十分においしくしてくれているはずですが、味わったときにブイヨンの入った効果がわかりにくい。せっかく丁寧にとったのに、もったいないですね。それならポトフにでもしたほうがいい。だから、最近、僕はブイヨンではなく、白湯スープのような濃いだしを取る方向に切り替えました。作り方はそれほど変わりません。香味野菜をやめて鶏ガラだけにし、水と一緒に強火で2時間ほどグツグツ煮込みまくる。アクをひきながら。
白く濁ったシンプルなスープには、出汁の強いうま味があります。これを使うとスパイスに負けないだしのうま味が入る。フードトラック「カレーの車」ではこのうま味をベースにしています。
和風だしは、この点において、非常に頼りになる存在です。スパイスに負けないだしのうま味がある。NHK・Eテレ「趣味どきっ!」の今夜放送分のテーマは、「カレーの世界 第7回▽お越しやす京都 ダシが決め手の和風カレー」です。いわゆる和風カレーというのは、本当に簡単にカレーをおいしくしてくれるんですね。
日本のカレーにおいて、このそば屋のカレー以外に「だしのうま味」に拘っているのは、洋食屋さんのカレーと札幌スープカレーでしょうか。最近注目を集めている大阪スパイスカレーも一部、だしのうま味をいかしているものがあります。どのカレーもおいしくて僕は好きですが、白湯スープを使っているカレーはありません。僕は、白湯スープもひとつの大きな流れに今後なると思います。この方向で昔から簡単においしいカレーが作られている世界があります。それは、“日本の中華料理屋さんのカレー”です。この分野、まだ誰も本格的に掘り下げている人がいません。僕がこれから改めて深掘りしたいと最も注目している分野です。この中華カレーの世界についてはまた今度。
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