このスパイスは食べてもいいんですか? 問題

昨日、AIR SPICEの料理教室があり、今月のメニュー「バターチキン」のデモンストレーションをしました。試食のときに生徒さんから質問がありました。

このカレーに入っているスパイスは食べてもいいんですか?

スパイスでカレーを作るのだから、スパイスを食べないでどうするんだ? と思う人がいるかもしれません。スパイスは溶けてカレーソースになっているのだから、スパイスを食べないでカレーを食べるのは無理だろう? と思う人もいるかもしれません。でもちょっと違うんですね。乾燥スパイスには大きく分けてホールスパイスとパウダースパイスがあります。ホールスパイスという形をつぶしていない丸のままのスパイスは、出来上がりのカレーにそのままの状態で残るんです。そこで前出の質問が出る。

今回のバターチキンに使ったホールスパイスは、カルダモン、シナモン、クローブ、メースの4種類でした。これらが形を残したままカレーソースの中に紛れ込んでいる。食べますか? 食べませんか? 身もふたもない答えですが、「食べるか食べないかは自由」です。スパイスは毒ではありませんから、「食べてもいいですか?」と聞かれたら、「あなたの好きにしてください」という答えもありえます。「食べられますか?」と聞かれたら、「食べられる人もいるし、食べられない人もいるでしょうね」とかなる。相当イジワルですね。

じゃあ、僕はどうかというと、僕は、どれも食べません。気がついたら口に入れるのは避けたい。クローブとメースは入ってしまったら仕方がないと思いますが、カルダモンは口に入ってしまって噛んだりすると後悔します。直後に強烈な香りが口の中を駆け巡るから。カルダモンも香りは大好きですが、ほんのり香るくらいがちょうどいいんですね。昔、タモリさんとカレーを作るイベントをしたときに作りながら音楽の話になりました。タモリさんは、「ジャズは襖の向こうから漏れ聴こえるくらいがちょうどいい」と言ったんですね。僕はそれを聞いて感動した。「ああ、スパイスと一緒だな」と。

スパイスは、襖の向こうから漏れ香るくらいがいい。

タモリさんがそう言ったらきっと歴史に残る名言になるでしょうね(笑)。さて、食べてもいいスパイスと食べたくないスパイスの差はどこにあるんでしょうか? わかりやすく言えば、大きさです。ホールスパイスは形が残ってますから、大きさも形も加熱した後の歯ごたえや舌触りもさまざまです。単純に小さいものは口に入れても噛んだとしてもそのとき生まれる香りは強くない。一方、大きなスパイスは口に入れただけで違和感がある。シナモンは木の皮だし、ベイリーフは葉っぱです。しかもどちらも硬い。食べたくないですよね。カルダモンは噛んだら中の種が強烈に香る。クローブは、加熱するとふにゃっとやわらかくなるから、まあ、違和感は大きくはない。それでも噛めば漢方薬のような独特な香りが口の中を駆け巡ります。

クミンシードやフェンネルシード、マスタードシードなどの小さな種を加工したスパイスは食べられます。というよりも、それらをよけるのが大変。結論としては、ホールスパイスは、食べるスパイスと食べないスパイスがあるんですね。どちらも大事なスパイスですが、加熱したときの香りの生まれ方が違う。さらに最終的に食べる人の口の中に届くのか届かないのか、届いたときにどういう香りを発するのかが違う。レシピを設計する人や調理をする人は、厳密に言えば、この差を計算するべきだと思います。僕はやってます。みなさんは?

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スパイスを通じて刺激的な体験をお届けする「AIR SPICE」代表。カレーにまつわる大小さまざまな問題についてウジウジと実験したり考察したりします。 http://www.airspice.jp/

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