8月_バターチキンカレー

90. レッドチリの辛みは乳製品で和らげられるのか? 問題

それはちょっとした悪戯心と好奇心からだった。
AIR SPICE バターチキンのレシピ動画を撮影するときに、パプリカパウダーを全量、カシミールチリに置き換えてみようと思ったのだ。要するにカレーに使うレッドチリの量をどこまで増やすことができるのか、に興味を持ったのである。

バターチキンの配合をベースにパプリカをレッドチリに変更したバージョンは、こちら。
ホールスパイスが、「カルダモン 1.8g、ビッグカルダモン 1.0g、スターアニス 1.0g、カロンジ 0.7g」。パウダースパイスが、「レッドチリ 5g、チャットマサラ 3.5g、ガラムマサラ 1.8g、クミン 1.7g」。
合計16.5gのスパイスのうち、実に5gがレッドチリ。3分の1が唐辛子である。バターチキンを作ってみると、思いのほか、辛味を感じない。乳製品がマスキングをしている可能性が高いのかもしれない、と思った。

じゃあ、同じスパイスの配合で、乳製品を使わないチキンカレーを作ってみたら、どうなるだろうか。辛味を和らげる原因が乳製品にあるかどうかがわかるかもしれない。早速、AIR SPICE バターチキンのスパイスを使って、「わたしだけのおいしいカレー チキン」を作ってみることに。本来、材料に使うはずのヨーグルトを使わないで作ってみる。
結果、試食をしてみると、同様にあまり辛みを感じない。あれ? そうだとしたら、乳製品が辛みをマスキングしてくれるかどうかは微妙なところだ。2種のカレーを食べ比べしてみても、感じる辛みは同じレベルだ。じゃあ、なぜ辛みを感じにくいのか。

そこではたと気がついた。そういえば、今回の配合には一般的なレッドチリではなく、カシミールチリのパウダーを使っていたから、パプリカの代わりにカシミールチリを加えたのだ。カシミールチリ自体は、辛味が弱く、香りのいいスパイスとして重宝されているものだ。そうか、やはり下馬評通り、カシミールチリは香りを重視したスパイスなんだろう。

お粗末な結果だけれど、図らずも最初のテーマとは違う気づきがあった。求めたいものが求まらず、代わりに思いもしなかったことを実感させられる。不思議なものである。ステキな女子と知り合いたいと思って合コンに行ったら、隣に座った男子と盛り上がって話し込んでしまい、「いやぁ、楽しい飲み会だったなぁ」みたいな感じだろうか。合コンに行ったことがないので、想像の域をでないけれど。

結局、乳製品が辛みを弱める効果を発揮するかどうかについては、不明のままだが、もう一つ、気づいたことがある。今回のバターチキンの配合には、ホールスパイスにカロンジを加えている。カロンジを使ったカレーが全体の味わいとして美味しくなることは過去に何度も経験しているが、カロンジ自体が主張するような感覚は薄い。
当然、バターチキンを作った時には、いつものようにそれほどカロンジの香りを感じなかったのだが、同じスパイスで「わたしだけのカレー」を作った時に、カロンジのフレーバーがハッキリと口の中に広がる体験をしたのだ。
ああ、カロンジの香りってうまいんだな。そうか、ホールのカロンジは、乳製品を使わないカレーを作った時に、その香りがマスキングされることなく豊かに香るということなんだろう。またも本来の疑問とは別の気づきを得てしまった。

同じスパイスを使って2種種類のチキンカレーを作ってみた結果、予期せぬふたつの気づきが合って非常に満足したけれど、やはり。乳製品が辛みを和らげるかどうかは検証しなければならない。次にやる時は、カシミールチリではなくしっかり辛いレッドチリをたっぷり使ってバターチキンとわたしだけのカレー チキンを同じように作り、食べ比べをしてみようと思う。

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