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182.玉ねぎを炒めるときはみじん切りがいいのか? 問題

原点回帰シリーズ。
これまで長い間、色々と玉ねぎの切り方や炒め方については実践してきたが、改めて少しずつ、玉ねぎの切り方や炒め方を検証しなおしてみようと思う。

まず手始めに、玉ねぎ炒めと言えば、昔から王道とされているみじん切りをやってみる。みじん切りというのは、縦横水平に包丁を入れてかなり細かく切った状態をさすことが多い。カレーの場合、粗みじん切りに近い状態をみじん切りと言ったりすることもあるが、今回は、細かいみじん切りでカレーを作ってみることにした。

【材料】
植物油 25g(大さじ2)
玉ねぎ(みじん切り) 250g(中1個)
湯 250g

【作り方】
1. 鍋に油を熱し、玉ねぎを加えて強火で5分炒める。鍋中はほとんど触らない。
2. 強めの中火にして5分炒める。鍋中は控えめにかき混ぜる。
3. 中火にして5分炒める。鍋中は適度にかき混ぜる。
4. 弱めの中火にして5分炒める。鍋中はゆっくりかき混ぜ続ける。
5. 湯を注いで煮立て、3分ほど煮る。

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「火加減は徐々に弱める」&「鍋中をかき混ぜる頻度は徐々に上げる」という、玉ねぎ炒めのオーソドックスな手法で素直に炒めてみる。炒める前の玉ねぎが250g、炒めた後の玉ねぎが50gとなり、80%を脱水し、脱水率は20%(という表現でよかったんだっけ……)。
色は次第に色づいていき、最終的にキツネ色とタヌキ色の中間程度になった。味を見てみると、うま味と甘み、香味がバランスよく感じられる。
そのまま湯を加えて煮立て、3分ほど煮てみると、玉ねぎの中に水分が戻り、フワフワした状態に。この状態に「細かいみじん切りを炒める」の特徴がよく出ていると思う。好みだけで言うと、あまり好きなカレーになりそうもないな、という状態。

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玉ねぎの状態変化や味わいを検証するための調理なので、スパイスを使わずに加熱を進めてみる。別鍋で皮面から炒めた鶏肉とトマトピューレを加え、湯を注いで10分ほど煮込んでみる。味わいとしては非常においしいチキントマトシチューになった。ここにしかるべきタイミングでスパイスの香りが入れば、おいしいチキンカレーになるだろう。ただし、個人的にはテクスチャーに懸念が残る。玉ねぎの粒々がどこまで残るかが気になるのだ。

煮込みが終わり、火を止めた状態でかきまぜずに鍋中を覗き込む。ソース(スープ)の表面はオレンジ色のクリアな表情を見せている。僕がとても好きなテクスチャーである。ここにスパイスが入ったチキンカレーになるなら……。
ところが、レードルを鍋に入れて底から全体をかきまぜて救ってみると、予想通り、さっきフワフワとなった玉ねぎがたっぷり現れた。当然ながら10分の煮込みでは、玉ねぎは溶けないし、2倍の20分でも溶けることはないだろう。30分ならある程度は消えていくかもしれない。口に運ぶとサラサラとした舌ざわりが残る。こういう玉ねぎ感が好きだという人は意外と多いと思う。その手のスタイルのカレー店が人気を集めている現実もある。だから、これはこれでいい手法と判断してよさそうだ。

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僕はといえば、ソースのテクスチャーはできる限りクリアにしたいと思っているから、フワフワした状態の玉ねぎをサラサラとした食感で感じるカレーよりも、もっと玉ねぎをつぶしたい。そのためにはどうしたらいいか。調理プロセスでいえば、通常は玉ねぎを炒めた後にすぐ水分が加わるのではなく、トマトなりパウダースパイスなりをさらに炒める。たとえば、脱水の進んだ玉ねぎやトマトの表面ににじみ出た油分にパウダースパイスがなじみ、加熱されていくプロセスで玉ねぎのテクスチャーが変わり、フワフワ感が減る。すると、その後、水分を加えて煮込んでいったときに溶けやすくなる。それなら好きなタイプに近づきそうだ。

さらに今回は4人分をイメージして作っているが、たとえば、5倍の20人分や10倍の40人分で作れば玉ねぎが玉ねぎ自体の重さで鍋底に接地するときの力が強まったり、密着面積が広がったりするから、実は、同じプロセスで加熱してもこの状態よりは玉ねぎが残りにくい。

細かい玉ねぎがソースに残ったカレーは、玉ねぎのうま味を感じにくいと僕は思う。細かいみじん切りにするならもっと油の量を増やして揚げ炒めするような状態にした方がいいのかもしれない。今回のように控えめの油でみじん切りの玉ねぎを炒めるなら、まあまあ粒の大きい粗みじん切りにした方が、おいしくなりそうだ。

細かいみじん切りを炒める手法は、大量調理の方が向いている気がする。昔はよくやっていたが、いつしかやらなくなったのは、きっとできあがりが自分の好みと合わないのが原因だったように思う。次は大き目の粗みじん切りで同じ炒め方をしてみたい。

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