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157.納豆カレーはどうやって作ると成功するのか? 問題

納豆カレーというものがある。一般的にはルウカレーのトッピングに納豆を加えるものをさすと思う。やったことのある人にはなじみ深い味だし、ない人にも想像できる味だろう。

では、スパイスで作るカレーに納豆を加えたらどうなるだろうか? 相性はいいのか、悪いのか。トッピングするのとは別に一緒に加熱する方法で味が変わったりしないだろうか。もし、その方法でおいしいカレーができあがれば、新しいタイプの納豆カレーができそうだ。

そこで、納豆を4つのタイミングで加えてオーソドックスな手順でキーマカレーを作り、仕上がりを比較することにした。納豆を加熱調理するタイプでは、「リネンス菌を焼く」を意識しながら実験してみることにした。

納豆カレーA:トッピングする……できあがったカレーにトッピング
納豆カレーB:煮込む……煮込み時に納豆を加える
納豆カレーC:炒める……玉ねぎを炒めた後に納豆を加えて炒める
納豆カレーD:焼き切る……玉ねぎを加える前に納豆を加えて炒める

Aの経過……出来上がりにトッピングするため、特になし。汁気の少ないキーマカレーのため、ルウカレーにトッピングしたものに近い様子にはなった。

Bの経過……できあがったカレーに納豆を加えて混ぜ、さらに5分ほど煮る。粘り気がソースに移り、ソースのとろみが強まっている様子。

Cの経過……玉ねぎとにんにく、しょうがを炒めたところにりんごと一緒に納豆を加えて炒める。Dに比べると粒立ちのいい状態で全体に絡め合わせながら表面を傷めることができる。納豆の匂いは、加えた直後に強く感じるが、早めに消えていく。

Dの経過……高温の油(多め)に粘り気を出していない状態の納豆が入るため、炒めているうちに揚げている感じになり、“フライド納豆”状態に。納豆どうしやホールスパイスがくっつき始める。この時点で味見をすると、口に運ぶ前はあまり納豆の香りがしないが、かんでいくと後味に納豆の風味が残る程度。

Aの味わい……カレーに納豆を混ぜた味(そのまま)。ココナッツミルクとの相性が悪いように感じた。ルウカレーくらい濃く味の強いものの方が受け止めやすそう。

Bの味わい……口に入れた直後から納豆の風味。“納豆カレーです”と言われて食べたら納得感が最も強い。元のカレーの香りによって相性がいいか悪いかは分かれそう。

Cの味わい……Dよりは納豆の風味とほんのりと粘りが残っている様子。こちらの方が納豆好きにはうれしい味わいかも。

Dの味わい……後味にも風味を感じるかどうか怪しい。通常のキーマでは実現しないおいしさがある気がするため、そこに納豆を入れる意味があるのかもしれない。

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8人で食べ比べをした結果。「A…0票、B…2票、C…3票、D…4票」となり、A以外は割れた。「A」と「B」がココナッツミルクやネパール山椒を使ってかなり風味に特徴のあるカレーだっため除外して、「C」と「D」で再度投票してみると、「C…4票、D…4票」と真っ二つ。まあ、好みによるってことなのかな。

個人的には微差だがCよりもDの方がおいしいと思えた。CやBは「納豆を使っています」と食べる人に先に情報として入れない限り、眉をひそめられそうな気がする。僕は納豆自体は好きだし、ルウカレーの納豆トッピングもごくたまにする。が、今回の作り比べに限っては、納豆の存在感が最も薄いDが好きだった。

Dの風味に納豆感がかなり薄いから、きっとリネンス菌は焼き切れたのだろう。その場合、納豆自体が持つうま味がどこへ行ったのかが気になる。香りは消え去ったがうま味がカレーの中に残っているのたとしたら、Dのおいしさはそれが原因なのかもしれない。

このDカレーを僕は、「リネンスキーマカレー」と名付けることにする。
「リネンスキーマカレーのリネンスってなんですか?」
「あ、それは菌の名前です」
「菌! それ、大丈夫?」
「いや、納豆を隠し味に使っているんですよ」
そんな会話で作り手と食べ手の仲はぐっとふかまるわけである。このカレーでいろんな人と仲良くなろうと企んでいる。

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