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132.化学調味料はカレーをおいしくしてくれるか? 問題

正体のわかっているものだけでカレーを作りたい。

常にそう思っている。このことは、レシピエッセイ「わたしだけのおいしいカレーを作るために」の中でも力説していることだ。カレーに使う材料を手に入れるとき、すべて原材料表示を確認し、そこに正体のわからない文字が書いてあったら使わない。

トマトケチャップに「トマト、糖類(砂糖・ぶどう糖果糖液糖、ぶどう糖)、醸造酢、食塩、たまねぎ、香辛料」とあったら、“ぶどう糖”が正体不明。ブイヨンの素に「乳糖、食塩、鶏肉、食用油脂、チキンエキス、酵母エキス、デキストリン、チキンファット、たまねぎ、しょうゆ、香辛料、調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、酸味料、(小麦を原材料の一部に含む)」とあったら、ほとんどが正体不明。だから、どちらもカレーには使わない。
こういう具合で食材と向き合っていると、最も遠い存在が、“味の素”なんですね。味の素に「味の素(アミノ酸等)」とあったら、アミノ酸がわからない。いわゆる“化学調味料”と呼ばれるものは毛嫌いする傾向にある人がいて、僕もその一人かも。

ただ、僕がもしかしたらちょっと違うのは、“健康に留意している”からではない、という点。化学調味料が入った食品は、普通に食べる。ポテトチップスもカップラーメンも大好きだ。東南アジアを旅すれば、家庭でもレストランでも料理を習うと(僕の経験上は)化学調味料が頻出する。過剰なときは違和感を覚えるけれど、「体に悪い」と思ってはいない。というか、そう思うに至るまでの知識が自分にはないから。
僕が正体のわからないものをカレーに使いたくない理由は、「自分の実力とは別の要素で自分が作るカレーがおいしくなるのが嫌だ」からだ。何を加えてどうしたからどんな味になったのか、原因と結果を常に理解できる状態にしたい。素手で戦って自分の実力を確かめたいと思っているのにライトセーバーを渡されたら元も子もないじゃないか。
まあ、いわば、自己中心的な理由で僕はそう決めている。そう、きっと僕はいつだって自分のためにカレーを作っているんだと思う。誰かの笑顔のためにカレーを作るなら、化学調味料も使うのかもしれない。実際、僕が好きなあの店やあの店のカレーには化学調味料が使われていることを知っているし……。

先日、味の素社の研究者たちにスパイスを使ったカレーをレクチャーする機会があった。とってもいい機会だったので、(なんと!)味の素をカレーに使ってみることにした。「味の素」という商品自体をカレーに使ったのは、記憶する限り生まれて初めてなんじゃないかな。
基本のチキンカレーをレクチャーし、みんなで実習するときに講師卓で僕が作るカレーに味の素を加えることにした。

●基本のカレーの材料
油、にんにく、しょうが、玉ねぎ、トマト、パウダースパイス、水、鶏肉

●AJINOMOTOカレーの材料
油、にんにく、しょうが、玉ねぎ、味の素、パウダースパイス、水、鶏肉

要するにトマトを味の素に変えたわけですね。共にうま味の素は、グルタミン酸だと言われているため、置き換えるには適しているんじゃないかと思ったからだ。そこで、投入するときに疑問が。トマト1個(200g)を味の素どのくらいで代用すればいいの? 現場にいる研究者たちに聞いてみたところ、「トマト100gに含まれるグルタミン酸ナトリウムが246㎎だとして、トマト1個だと500㎎近くになりますね……」。そこで何人かがざわついた。“グルタミン酸ナトリウム500㎎分の味の素”がきっとものすごく大量になるから、「そんなはずは……」と戸惑った模様。
結局、目分量で小さじ1/2弱(1.5g程度)を加えました。食べてみると、確かにうまい。そして、「使っている」と言われなければわからないかもしれないくらいの“味の素感”だった。それなのに、ご飯がとまらなくなるような味わいのカレーができあがる……。

やはり、化学調味料はカレーをおいしくするんだよなぁ。とはいえ、今後もやっぱり僕は使わない。
味の素はサトウキビを発酵させて作られているという。味の素社のホームページには説明動画もある。正体のわかっているものだけでカレーを作りたい僕は、「今、正体のわかっていないものについて正体がわかるまで取材したり調べたり学んだりするべき」なのかもしれない。仮にライトセーバーを持ったとしても、その道具をよく知り、使いこなせるようになれば、素手でなくとも自分の納得のいく戦い方ができるということなのかもしれない。ライトセーバーを使いこなし、戦い方を身に着けた末には、ヨーダのように何も手にしなくてもよくなるのかもしれない。そうか、いつかヨーダのようにカレーを作れる日がやってくるのか!
ま、まあ、要するに現時点では自分の勉強が足りていない、ということに尽きる。いい機会だから、これまで以上に“うま味”についてはもっと勉強していきたい。
   
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スパイスを通じて刺激的な体験をお届けする「AIR SPICE」代表。カレーにまつわる大小さまざまな問題についてウジウジと実験したり考察したりします。 http://www.airspice.jp/

コメント4件

はてブでもコメントがありましたが
「今、正体のわかっていないものについて正体がわかるまで取材したり調べたり学んだりするべき」
なら、ブトウ糖とはなんなのか、は調べたほうがいいでしょうね。

あと、成分表示はだんだん詳細に記載するようになってきたので、今後、微量調味料系(うま味調味料とかはともかく)がいろいろ記載されるようになったり、今でも記載面積が大きくて載ってたりしたら、いままでOKにしてたものと同じ内容の商品でもなんも食えなくなるかもしれませんが...まあポリシーの問題でしょうね。
他人が食べるのは良いが、
化学調味料って、
食べれる基準ではないね。

体調がかなり悪くなる。
カップ麺は石油系調味料が多いが、
危険な汗、頭痛、呼吸困難、心筋虚血、色々な問題が出るね。

一食レベルでは安全に思えるが。
…果たして我々はカレーの材料たる玉ねぎの何をどこまで知っているのだろうか。単離した化学成分の方がよっぽど単純で理解は容易い様な気もするが…
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