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186.フライドオニオン冷凍カレーは新機軸なのか? 問題

フライドオニオンは大変だなぁ、と思う。

第1に、大量の油を温めなければならない。
第2に、玉ねぎを薄くスライスしなければならない。
第3に、揚げている間はこまめにかき混ぜ続けなければならない。
第4に、適度に色づいたら素早く取り上げなければならない。
第5に、そのときにはできるだけ油をしぼり切らなければならない。
第6に、間髪おかずにほぐして蒸気を抜かなければならない。
第7に、玉ねぎや油の質によって調整しなければならない。

そして、毎回ほとんど同じように揚げるには、かなりのプラクティスが必要となる。さらに、そこまでしてフライドオニオンができあがっても、さらにその先にカレーにしなければならない。フライドオニオン、揚げたてで食べるとおかしみたいでおいしいのだけれどね。

とにかく、フライドオニオンは大変だ。こんなことを本当にしなければならないんだろうか? カレーを作るのが目的のはずなのに、フライドオニオンができあがったところでゴールテープを切ったような気持ちになる。
手間をかけたくないとは思わない。手間に見合った仕上がりが得られるのなら、かけてもいいと思う。その点では、フライドオニオンを使わなければ実現しない味わいのカレーというものは確かにある。あるが、それが手間に見合うかどうか、という点はカレーによっては疑問だと思う。

僕の知る範囲では、ムスリムスタイルのインド料理などではフライドオニオンが活躍する。何度も僕にフライドオニオンを披露してくれるインド人シェフは、「たくさん作っておけば常温で2か月や3か月はキープできる」という。それは、「そうしておくと便利でいいよ」ということだし、裏返せば、「カレーを作るたびにフライドオニオンを作るんじゃ、やってられないよね」ということだと解釈している。
実際、インドのムスリム系レストランでは、駆け出し修行中の若いシェフの仕事の一つがフライドオニオンをひたすら大量に作り続けることらしい。それがきれいにできるようになって初めて他の作業を教えてもらえるようになる、と聞いたこともある。
フライドオニオンというものが準備されている前提で数々の料理が作られている現場になっている。ということは、フライドオニオンはその食文化、そのための調理に最初から組み込まれているのだ。

フライドオニオンが傍らに存在しない日本のキッチンで、フライドオニオンを使ったカレーを作ろうとすると、やはり「大変だ」ということになるのだろう。だったら、我々も余裕があるときに大量にフライドオニオンを作っておくのがいいんじゃないか。ただ、何か月もキープできるかは不安だから冷凍してみることにしよう。
実際にやってみた。フライドオニオンをせっせと作り、60gほど(元の玉ねぎは300gほど)ずつ小分けにタッパーに入れて冷凍する。後日、カチンコチンになったフライドオニオンを使ってカレーを作る。このときに楽なのは、“ハンズオフカレー”でできてしまうことだ。フライドオニオンもスパイスをも含むすべての材料を鍋に加えてふたをして煮るだけ。実際にやってみると、十分おいしいカレーができる。フライドオニオンは鍋中で加熱されるから、解凍の必要がない。

ハンズオフカレーにフライドオニオンを活用しましょう、というレシピは、今年の新刊ですでに出してはいるのだけれど、「フライドオニオンを冷凍しましょうね」、「解凍せずにフードプロセッサーにかけてみましょうね」という点がなかなか良いのではないかと独り、盛り上がっている。

僕が“ハンズオフカレー”を開発するキッカケとなった“ビーフニハリ”を作ってみることにした。ちょっとだけ手間をかけて冷凍フライドオニオンをそのまま解凍せずにフードプロセッサーに入れて回す。あっという間に粉々になった。牛肉とスパイスなどをグツグツと煮込んでいるところへフライドオニオンを投入。あっという間に、ニハリになった。うまい。これはいい! 新機軸になるかもしれない、と思った。

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●ビーフニハリ
【材料】
牛バラ肉(脂肪分を除去) 1000g
水 適量
にんにく(つぶす) 2片
グリーンチリ(縦に切って種を取り除く) 3本
冷凍フライドオニオン(チョップ) 120g
パウダースパイス(AIR SPICE試作MIX) 20g
塩 15g

【作り方】
材料をすべて鍋に加え、肉が軟らかくなるまで煮る。

油は使わない。フライドオニオンにまとっている揚げ油と肉の脂分とで充分だからだ。もちろん、ハンズオフカレー専用とする必要はないから、本来、フライドオニオンを使うべくカレーの調理にこの冷凍をそのまま鍋に放り込むこともできる。とにかく、簡単にうまくなる。フライドオニオンの冷凍は、とっても効果的な手段になると思う。

仮にフライドオニオンに失敗して、べチャッとなってしまったり、色味がバラバラにしあがってしまったとしても、冷凍したのちに解凍せずにフードプロセッサーにかければ均質化する。そんなメリットすらある。すばらしい。

ちなみに、フライドオニオンのときにもうひとつ気になっている「揚げ油がもったいない」問題についても、容器に移して冷凍してしまえばいい。その日に作るカレーやおかずなどに応用することもできるけれど、必ず余るほどの揚げ油が残るからだ。冷凍揚げ油を使うときには少し湯煎して使いたいだけ使い、残りはまた冷凍する。常温にしておくよりはるかに酸化を防げると思う。

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この揚げ油をたっぷり活用する料理を色々と考えていて、現時点では、「パラタに使うのがベストじゃないか」と思っているが、これは、スチャパラターというパラタ集団の方でやってみよう。

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