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201.鹿肉を最もおいしくするスパイスはどれか? 問題

「スパイスとは、文章における句読点のようなものだ」と言ったのは、フランスで“スパイスの魔術師”と呼ばれている、オリヴィエ・ローランジェ氏である。その素敵な表現に習って、僕はとある本の中で「スパイスとは、メタファー(隠喩)である」と書いた。いずれにしても、なければないで意味は通るが、あったほうがより情感豊かに届けられる、みたいな存在なのだと思う。

 おいしい肉が手に入ったとき、「塩だけ振って焼くのが一番」みたいな気持ちになったりするのだから、そこにスパイスを加えるかどうかは、オマケと言えばオマケという扱いになる。

おいしいエゾジカ肉が手に入った。



手元にはどっさりスパイスがあるのだから、塩だけで焼くのではなく、スパイスを活用してみようと思ったのだ。さて、せっかくだから、どのスパイスが鹿肉をおいしくしてくれるのかを実験してみたいと思った。




準備したのは、「フェンネル・シナモン・ナツメグ・ブラックペッパー・クローブ」の5種類。なんとなく、インドのガラムマサラを構成するのに使われるアイテムを中心にパウダー状で揃えることにした。
いただいた肉の部位は、「シンタマ・ウチモモ・シキンボ・ソトモモ・ランプ」の5種類。それぞれに組合せを決めて調理する。

【材料】
鹿肉(各部位) 
塩 肉に対して1%
スパイス 肉に対して2%
赤ワイン 肉に対して15%

【作り方】
1.     肉に塩を振り、4時間ほど置く。
2.     スパイスをまぶし、赤ワインに漬け込んで一晩おく。
3.     61度の温度で低温調理する(部位によって、2.5時間~5時間程度)


肉の部位とスパイスの組合せは以下の通り。

A.    シンタマ……フェンネル(ミルでちょっと粗挽き)
B.    ウチモモ……シナモン(市販のファインパウダー)
C.    シキンボ……ナツメグ(手でちょっと粗挽き)
D.    ソトモモ……ブラックペッパー(ミルでちょっと粗挽き)
E.    ランプ……クローブ(市販のファインパウダー)

この実験は、正直言えば、ツッコミどころ満載である。
・  部位ごとに味が違って合わせるスパイスが変わるのだから、厳密な判定はできない。
・  スパイスの粒子の状態に差がある。
・  部位ごとにサイズが違うため、スパイスが付着する表面積に差が出るから、感じ方も変わる。

まあ、余興だと思って調理し、試食してみることに。現場に居合わせた7人の評価は以下の通りだった。

A.    なし
B.    なし
C.    5票
D.    2票
E.    なし

この結果だけを見れば、「鹿肉に合うスパイスは、ブラックペッパーとナツメグ」ということになる。まさか、ね。
そもそもスパイスは単体で使用するよりも複数種類(かといって多すぎず)を混ぜ合わせた方が香りのグレードが上がる。おそらく上記5種類のスパイスをよき配合バランスで混ぜ合わせて香りづけすれば、それが最もおいしいという結果が出たんじゃないかと思う。
そして、スパイスの香りを排除して部位自体の味わいのおいしさで投票しても、シキンボとソトモモが選ばれたんじゃないだろうか。
まあ、なんの結論も出ないが、こういう実験は改めて楽しいなと思った。


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