休息するには
パトリツィア・カヴァッリ(1947−2022)
休息するには
髪を梳かすこと、
そうする人はそうするものだし
まだの人はこれからそうする。
瓶のうしろに
ねこちゃんのおひげ、
身分証明書は
明日出しますから。
今は鏡を見て
帽子をかぶって、
待つのたずねを 待つの
呼び鈴の音を。
黒茶色のきれいな瞳 閉じてお眠り……
だけど恋人のことを
わたしは話したくない、
ただ望んでいるの
その人と愛し合うこと。
内容的には至極甘やかな詩だが、韻律にも技巧が見られる。第1連では「ho fatto」、第3連では「aspetto」、第5連では「amore」が繰り返される。また、末尾の語が「specchio/cappello/aspetto/campanello」と続く第3連では、1行目と3行目、2行目と4行目の音の響きの近しさが顕著である。以上のようにメトリカルな側面が目を引く本作は、収録する詩集『わたしの詩は世界を変えたりしない』の中で行数において最長の部類にあたる。連を細かく区切る形式といい、短詩が中心を占める詩集にあって、彼女の形式への意識がわかりやすく反映された作品である。
わたしが技法で面白いと感じたのは、第2連の構成である。前半で瓶の後ろに猫のひげが落ちているのを見て、後半で唐突に身分証明書は明日出すという自分(詩における「わたし」)の話が出てくる。化粧台に落ちているひげが、そこに猫がいたことを示しているのを発見したことで、手続きのために身分証明書を提出しなければならない自身の生活状況を連想するのである。しかし、続く第3連の冒頭で「今は(Ora)」と言われるように、そのような生活の煩わしさは即座に振り払われる。短い詩行に凝縮された、鏡を前に髪を梳く主体の、妙にテキパキとした思考の切り替わりが面白く感じられた。
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