労働保険徴収法・労働保険料の申告と納付、労働保険事務組合、不服申立て

労働保険料の申告(保険料の額を役所に知らせること。基本は都道府県労働局歳入徴収官へ申告)と納付(お金を実際に納めること。基本は都道府県労働局収入官吏へ納付)を、年度更新という。毎年6月1日から40日以内に、保険料の申告と納付をする。年度初めに、昨年度の分の確定保険料を申告・納付し、今年度の分の概案保険料を申告・納付する。

有期事業は、事業開始から20日以内に概算保険料を支払う。その額は、事業のはじまりから終わりまでに、すべての労働者に支払う賃金総額の見込みを基に計算する。事業が終わったら50日以内に、確定保険料を申告・納付する。

概算で払ったものが多すぎる場合は、還付の仕組みがある。請求がなければ、次の年度の概算保険料の支払いに自動的に充ててもらう充当という仕組みが適用される。

概算保険料のほか、増加概算保険料がある。事業規模が急激に拡大し、賃金総額が2倍を超えると見込まれ、既に申告・納付した概算保険料との差額が13万円以上なら、追加分を申告・納付する。

概算保険料の納付は、延納の条件を満たせば、原則3回までの分割納付ができる。
確定保険料には延納はない。

1年度は3つの期に区切ってあり、4月1日~7月31日までを第1期(6月1日から40日以内)、8月1日~11月30日までを第2期(納付期限10月31日※労働保険事務組合に分納納付を委託する場合、第2期と3期は14日ずれて、それぞれ11月14日、2月14日が支払期限となる。)、12月1~3月31日までを第3期(納付期限1月31日)という。保険料を分割払いで納めるときは、各期に設定している納付期限までに支払う。1回で払いきる場合は、6月1日から40日以内が納付期限。

・毎年度6月1日から40日以内に、概算保険料、確定保険料を申告・納付する。概算保険料は、延納できる。
・確定保険料は、納付、還付、充当という精算手段がある。
・延納は、概算保険料納付の場合のみ。確定保険料に延納はない。

労働保険事務組合は、労働保険料の納付などの事務を中小事業主の代わりに引き受ける。労働保険事務組合が委託を受けてはいけないものは、印紙保険料に関する事務手続、労災・雇用保険法の保険納付に関する事務手続、雇用保険二事業(雇用安定事業と能力開発事業)に関する事務手続など。

条件を満たした事業は、労働保険事務組合に事務の委託ができる。具体的な条件は、労働者が常時300人の事業主が基本で、例外として金融業・保険業・不動産業又は小売業は常時50人以下、卸売業・サービス業は常時100人以下。

事業主と委託契約を結び、委託を受けた労働保険事務組合は、その事実を労働基準監督署や公共職業安定所へ届け出なければならず、最終的には都道府県労働局(厚生労働省の地方の出先機関で、労働法や労働保険法に関することをなどを取り扱う役所、トップは局長と呼ばれる。各労働基準監督署や公共職業安定所を指揮監督する。)長の下へ届く。

不服申立ての制度は、平成28年4月1日に施行された行政不服審査法の改正で不服申立て前置主義が見直され、直接、裁判所に処分取消しの訴えをすることができるようになった。
従来、労災保険法と雇用保険法における不服申立ての制度は、各審査官に、文書または口頭で審査を請求して、各審査官の判断にも不服がある場合、今度は文書で労働保険審査会(東京都にあり、全国に一つしかい。厚生労働大臣の下に、直接置かれている。審査会の委員は、医学、法律学、社会保障に詳しい実務家などが国会の承認を得たうえで任命されている)というところへ再審査請求して、それにも不満のある場合にはじめて、裁判所に提訴ができる仕組みだった。改正により、各審査官の判断に不服がある場合、①裁判所に提訴する③労働保険審査会へ再審査請求する、といった2つのルートができた。従来、処分を知った日の翌日から60日以内にしないといけないものだったが、3ヶ月を経過しないうちに行わなければならないといった条件に変わった。

行政不服審査法の改正により、社会保険に関する法律(厚生年金保険法、国民年金法、健康保険法等)についても、審査請求を経た後で不服がある場合は、任意に提訴ができる仕組みに変わった。

労働保険徴収法におけふ不服申立ては、認定決定も含め、労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収に関する処分はすべて、①裁判所に直接提訴②厚生労働大臣に審査請求をした後、裁判所に提訴の2つのルート。

労働保険事務組合では、委託を受けた事業主の名簿や、保険料の納付簿、雇用保険の被保険者に関する届け出についての事務処理簿などを備え付けないといけない。

・労働保険法と雇用保険法は、審査官→審査会→提訴か、審査官→直提訴。
・労働保険徴収法では、大臣→提訴か、直提訴。

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