労災保険法が適用される適用事業、業務災害と通勤災害

労災保険法の保護を受けることができる人は、適用事業で働く人たち。
適用事業とは、義務と権利が生じる事業・・・?

労災保険法は、原則、1人でも労働者を使用するすべての事業者に適用される。
日本国内で、1人でも労働者を使用すれば、強制的に労災保険法を守らなくてはならない。これを、労災保険法の適用がある、という。

小規模な個人経営の農家や林業、水産業など、労災保険法が強制的には適用されない事業を、暫定任意適用事業という。

原則1人でも労働者を使用するすべての事業に労災保険法の適用はあるため、適用されない①国の直営事業(国有林野や造幣局などの事業がこれにたりましたが、現在は該当するものなし)②官公署の事業(役所など国又は地方公共団体の事務を行う事業)①②は、適用除外という。
国家公務員や地方公務員は、別の法律で、仕事中に災害にあったときの補償が定められている。

労災保険法が強制的には適用されない、暫定任意適用事業の農林水産業でも、常時5人以上の労働者を使用する場合は、強制的に適用される。また、政府の告示などで、仕事の内容が危険だったり、長い間続けていると体に害を及ぼすような事業も強制適用になります。

次は、労災保険法で保険給付を受ける対象について。保護の対象となるには、業務災害か、通勤災害にあたる必要がある。業務起因性と業務遂行性がキーワード。その仕事と傷病との相当因果関係(ある原因とされる事柄が、結果とされる事柄とつながりがあり、そのつながりが相当な範囲内にあるといえることを、相当因果関係があるという。)が業務起因性で問われ、労働契約に基づく正当な業務を事業主の支配下で行っているかが業務遂行性で問われる。

業務災害の対象は怪我だけでなく、心臓疾患による過労死や突然死、また長年にわたる有害な物質や作業が下人で発病するような、業務上疾病も含まれる。労基法施行規則別表1の2において、業務上疾病が例示されている。

労働基準法施行規則別表第2の2=職業病リスト(最新版2020年7月現在)

一 業務上の負傷に起因する疾病
二 物理的因子による次に掲げる疾病
1 紫外線にさらされる業務による前眼部疾病又は皮膚疾患
2.赤外線にさらされる業務による網膜火傷、白内障等の眼疾患又は皮膚疾患
3 レーザー光線にさらされる業務による網膜火傷等の眼疾患又は皮膚疾患
4 マイクロ波にさらされる業務による白内障等の眼疾患
5 電離放射線にさらされる業務による急性放射線症、皮膚潰瘍等の放射線皮膚障害、白内障等の放射線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨壊死その他の放射線障害
6 高圧室内作業又は潜水作業に係る業務による潜函病又は潜水病
7 気圧の低い場所における業務による高山病又は航空減圧症
8 暑熱な場所における業務による熱中症
9 高熱物体を取り扱う業務による熱傷
10 寒冷な場所における業務又は低温物体を取り扱う業務による凍傷
11 著しい騒音を発する場所における業務による難聴等の耳の疾患
12 超音波にさらされる業務による手指等の組織壊死
13 1から12までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他物理的因子にさらされる業務に起因することの明らかな疾病
三 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する次に掲げる疾病
1 重激な業務による筋肉、腱、骨もしくは関節の疾患又は内蔵脱
2 重量物を取り扱う業務、腰部に過度の負担を与える不自然な作業姿勢により行う業務その他腰部に過度の負担のかかる業務による腰痛
3 さく岩機、鋲打ち機、チェーンソー等の機械器具の使用により身体に振動を与える業務による手指、全腕等の末梢循環障害、末梢神経障害又は運動器障害
4 電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢に過度の負担のかかる業務による後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障害
5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に起因することが明らかな疾病
四 化学物質等による次に掲げる疾病
1 厚生労働大臣の指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)にさらされる業務による疾病であって、厚生労働大臣が定めるもの
2 弗素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂の熱分解生成物にさらされる業務による眼粘膜の炎症又は気道粘膜の炎症等の呼吸器疾患
3 すす、鉱物油、うるし、テレビン油、タール、セメント、アミン系の樹脂硬化剤等にさらされる業務による皮膚疾患
4 蛋白分解酵素にさらされる業務による皮膚炎、結膜炎又は鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患
5 木材の粉じん、獣毛のじんあい等を飛散する場所における業務又は抗生物質等にさらされる業務によるアレルギー性の鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患
6 落綿等の粉じんを飛散する場所における業務による呼吸器疾患
7 石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚
8 空気中の酸素濃度の低い場所における業務による酸素欠乏症
9 1から8までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他科学物質等にさらされる業務に起因することの明らかな疾病
五 粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺法(昭和35年法律第30号)に規定するじん肺と合併したじん肺法施行規則第一条各号に掲げる疾病
六 細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病
1 患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患
2 動物若しくはその死体、獣毛、革その他動物性の物又はぼろ等の古物を取り扱う業務によるブルセラ症、炭疽病等の伝染性疾患
3 湿潤地における業務によるワイル病等のレプトスピラ症
4 屋外における業務による恙虫病
5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他最近、ウイルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病
七 がん原性物質若しくはがん原性因子またはがん原性工程における業務による次に掲げる疾病
1 ベンジジンにさらされる業務による尿路系腫瘍
2 ベーターナフチルアミンにさらされる業務による尿路系腫瘍
3 四ーアミノジフェニルにさらされる業務による尿路系腫瘍
4 四ーニトロジフェニルにさらされる業務による尿路系腫瘍
5 ビス(ククロメチル)エーテルにさらされる業務による肺がん
6 ベリリウムにさらされる業務による肺がん
7 ベンゾトリクロライドにさらされる業務による肺がん
8 石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫
9 ベンゼンにさらされる業務による白血病
10 塩化ビニルにさらされる業務による白血病
11 オルトートルイジンにさらされる業務による膀胱がん
12 3,3’ージクロロー4、4’ジアミノジフェニルメタンにさらされる業務による尿路系腫瘍
13 一・二ージクロロプロパンにさらされる業務による胆管がん
14 ジクロロメタンにさらされる業務による胆管がん
15 電離放射線にさらされる業務による白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫、甲状腺がん、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫
16 オーラミンを製造する工程における業務による尿路系腫瘍
17 マゼンタを製造する工程における業務による尿路系腫瘍
18 コークス又は発生炉ガスを製造する工程における業務による肺がん
19 クロム酸塩又は重クロム酸塩を製造する工程における業務による肺がん又は上気道のがん
20 ニッケルの製錬又は精錬を行う工程における業務による肺がん又は上気道のがん
21 砒素を含有する鉱石を原料として金属の製錬若しくは精錬を行う工程又は無機砒素化合物を製造する工程における業務による肺がん又は皮膚がん
22 すす、鉱物油、タール、ピッチ、アスファルト又はパラフィンにさらされる業務による皮膚がん
23 1から22までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他がん原性物質若しくはがん原性因子にさらされる業務又はがん原性工程における業務に起因することの明らかな疾病
八 長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく憎悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、h心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む)、重篤な心不全若しくは大動脈解離又はこれらの疾病に付随する疾病
九 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病
十 前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病
1 超硬合金の粉じんを飛散する場所における業務による気管支肺疾患
2 亜鉛黄又は黄鉛を製造する工程における業務による肺がん
3 ジアニシジンにさらされる業務による尿路系腫瘍
十一 その他業務に起因することの明らかな疾病

※8号は突然死や過労死について、9号は精神疾患について。比較的近年に加わった業務上疾患。

通勤災害は、業務災害よりも新しい仕組み。就業に関し、合理的な経路および方法で通勤がされたかが重要な要素。通勤とは関係のない行為をすることを中断、理にかなった通勤コースを逸れてしまうことを逸脱という。逸脱または中断後は、通勤ではなくなる。厚生労働省令で『日常生活上必要な行為』として具体的に定められ『ささいな行為』については、中断や逸脱とみなされず、通勤中のままとなる。

まとめ
・労災保険法の保護を受けられる人は、適用事業で働く労働者
・適用されない事業もある。
・強制適用が基本、でも任意で適用される事業もある。
・業務災害と通勤災害が、労災保険法での保護の対象。※複数業務要因災害(複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする傷病等のことで、対象となる傷病等は、能・心臓疾患や精神障害等。1つの事業場の業務上の負荷のみが評価された場合、従来の業務災害として認定される。)も含まれる。
・業務災害の判断要素は、業務起因性と業務遂行性。
・中断や逸脱により通勤とはいえなくなる。





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