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カルチャーつまみ食い

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本、映画、ドラマ、漫画、音楽など、つまみ食いしたカルチャーの記録です。
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#映画に恋して

『きみの鳥は歌える』と次の季節

「僕にはこの夏がいつまでも続くような気がした。9月になっても10月になっても、次の季節はやって来ないように思える」(『きみの鳥はうたえる』より) あの夏がどうやって終わったのかを思い出せないでいる。 汗と酒とタバコと夜のにおいが染み付いた、あの頃よく着ていたあのTシャツがどこにあるのかも。 はじまりは肘に触れるくらいささやかなものだったかもしれない。 ひとりふたり増えていき、いくつかの夜が過ぎ、ひとりふたり去っていった。 汗まみれで缶ビール片手に夜の道を歌いなが

幸せって何かね?(映画『愛がなんだ』を観て)

「誠意って何かね?」と菅原文太が5個のかぼちゃを前に問いかけてから、27年の月日が経ったそうです。 さて、先日観た映画『愛がなんだ』では、登場人物それぞれが愛だ、幸せだ、なんだかんだと言っていました。 それがいい感じにしょうがなくて、要するに結構好きな映画だったのです。 クズにも、でれでれした顔にもなるマモちゃん(成田凌)がかつてどこかで会ったことがある男の子に思えてなりません。 大人になってからの恋なんて…とか悦に浸ったり、いい女風吹かせたり、スミレを追いかけるマモ

物言わぬモノの饒舌さ。映画「ギフテッド」

映画「gifted-ギフテッド-」を観た。 モノの使い方が素晴らしくおしゃれな映画だった。 ピアノの演奏で泣くことはあっても、誰も弾いていないピアノの姿に涙が出てきたのははじめてだったし、 図書館でふと写り込んだ張り紙に心が激しくざわつくのも、 ガールスカウトのベストにこんなにうれしくなるのもまたはじめてだった。 モノが雄弁に語る映画だった。 101分はその時間感覚の何10倍も深い時間になったし、より一層感情がぐるぐるした。 映画「ドリーム」で数学者として宇宙計画を

元27歳病が観た、映画「南瓜とマヨネーズ」

私はかつて27歳だった。 今32歳なので当然といえば当然なのだけど。 昨日観た映画「南瓜とマヨネーズ」のツチダもまた27歳だった。 思い描いてた未来とはかけ離れた現実。 永遠に続いていくかのような、とりとめのない日常。 惰性、怠慢、なし崩し、言い訳、そして酒。 未来なんて見えないし、来月のことすら考えたくない。 そのすべてと、そんなすべてに甘んじている自分に対する漫然とした苛立ち。 常に酒とタバコの香りに包まれていたかのように視界はスモークがかかっていて、髪の毛に染み付