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カルチャーつまみ食い

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本、映画、ドラマ、漫画、音楽など、つまみ食いしたカルチャーの記録です。
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#推薦図書

「役に立つかどうか」よりも惹き寄せられるもの。『哲学的な何か、あと数学とか』を読んで

SF冒険活劇のような科学に対して、数学はハードボイルドなヤンキースポ根ドラマのよう。 数学という役に立たないもの時間を費やす、なんとも救いがたく愛おしい情熱といったら! 中学、高校と私は数学が好きでした。 答えが必ず出るから。答えがあるとわかっていたから。 どんなに悩んでも、答えは必ず出るから難しい問題ほどうれしかったのを覚えている。 だけど、それは先人たちの答えがあるかどうかを探す壮絶な戦いがあった上に成り立っていたということか。 しかも、その答えのあるかな

めんどくさくて愛おしい世界。『哲学的な何か、あと科学とか』を読んで思ったこと

科学って、ちょっぴりめんどくさくて、まっすぐで、複雑なのに単純で、なんか愛おしい。 小さな世界を表現する言葉を宇宙の解明にも用いる、唯一無二の答えを探す科学。 そして、その説明はシンプルで美しく。 目に見えないものを見ようと追究するの世界は、ストイックで厳かな世界だと思っていた。 だけど、そこにはツッコミどころ満載なツジツマ合わせがあり、うっかりがあり、迷走や冒険があり、ひらめきがあり、まっいっかというかわいらしい一面があるようだ。 なんと愛おしい世界!

だと思った。

2010年1月30日の朝。 私たちは新宿ピカデリーにいた。 その日は映画『ゴールデンスランバー』の公開日だった。 その当時の私たちといえば、1月末に学部4年生の卒計提出があり、プレゼンがあり、それが落ち着いた2月から修士の卒論がはじまるのだ。 2010年は私が卒論を書く年だった。 2010年1月30日は、午後から手伝いをしてくれる後輩たちが来て、そこからはスケジュールと思考と“何か見えないもの”に追われる日々がはじまる。 さながら『ゴールデンスランバー』の青柳雅春のように