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「SDGsっぽいこと」から、本当の循環へ

SDGsが浸透してきたことで、社会に「っぽいこと」が溢れている。


エコバッグを大量に作って配り、余らせる とか
ビーチクリーンの後、ペットボトルのお茶を配る とか
開発しまくっているけれど、樹は植えてますよ とか
産直マルシェはやるけど、農家さんのこと大事にしてない とか…


どれもちょっと違う。
そういうの、若い人ほど敏感に感じていそう。

去年まで担当していたラジオ番組で、就職活動中の大学4年生に、「どんな企業に就職するの?」と聞いたときの答えが胸に刻まれている。


「CSR部門で “やってる感” を出しているだけじゃなくて、その企業があることで、つまり本来業務を通して、どれだけ社会をいい方向に変えることができるか。そこを見たいと思っています」


…そういうこと!! だよね。


国や町の運営であれ、大企業の経営であれ、小さな個人業であれ、あなたのその事業で、

富は再分配されているか?
地域はつながり直しているか?
行き場のないゴミを生んでいないか?
環境は再生しているか?
誰からの搾取もないか?
運営している人も疲弊していないか? 


ということ。

ここからは多セクターで連携しながらそんな循環を当たり前にする時代なんですよ、ってことが、SDGsの本質なのだ。


そんな中でいつも思い出す美しい事例が、メキシコにある。

メキシコで45年をかけて森に鳥を呼び戻した森林農法と、そこに取り組むことで貧困を脱した先住民たちのトセパン協同組合の話。数年前、その組合から国の社会開発大臣(!)が生まれ、森林農法が国策になった(!)というから、さらにシビれる。

福岡でフェアトレード会社「ウィンドファーム」を運営している中村隆市さんから初めてこの話を聞いたのは、20年前だった。その感動は今も鮮明だけど、母になり地域で活動するようになった今、より一層心に響く。

昨日は、そんなトセパン協同組合の設立者ドン・ルイスさんの命日だった。祈る気持ちでトセパンについて読み直したので、以下、皆さんにお裾分けです。

写真:ウィンドファームHPより


<トセパン協同組合のあゆみ>

▼70年代
コーヒーの大農園主や仲買人、高利貸しなどが利益を独占し、先住民の大半が極貧状態にあった。農薬と化学肥料を多用する近代農法が地域に広まり、鳥や生き物も減っていた。
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仲買人の一人だったドン・ルイスさんが「地域の発展のため」と仲買人をやめ、代わりに(日本の農協と生協が合体したような)協同組合を設立し、森林農法を普及させた。
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適正価格で生産物を買い上げ、生活必需品を安価で販売することで、生産者の暮らしは極貧状態から少しずつ脱出。


▼90年代
そのころ銀行は、先住民にお金を貸さなかった。そこで組合は自分たちで「トセパントミン(みんなのお金)」という銀行をつくった。
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先住民が持ち寄ったお金は、10年も経たずに50倍以上に増えた。そのお金を銀行は、女性たちの新規事業に優先的に融資。
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主食のトルティーヤ屋さん、パン屋さん、衣服や食品の販売店など女性たちは次々に開店し、地域を活性化させた。
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女性たちで組合内に教育の基金も設立。
組合内に自らの幼稚園、小学校、中学校を設け、言葉、文化・伝統、宇宙観など先住民としての教育と国の教育カリキュラムを合わせた独自の教育プログラムを行うように。もちろん、自然を大切にする農業もここで学ぶ。


▼ここ数年
トセパン協同組合には、メキシコの22の地域(市町村単位)で35,000世帯が参加している。(2017年11月現在)
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組合設立から45年後の今、地域の森には渡り鳥もたくさん飛来し、年間200種類ほどの鳥を見ることができる。
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森林農法が普及し豊かな自然が広がる中で、国内外からエコツアーのお客さんも増え、地元の竹で素晴しい宿泊施設も作られている。(組合は、その建築技術で被災地支援も行なっている)
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トセパン協同組合のスタッフが、メキシコ社会開発省の大臣に就任した。トセパン協同組合が設立された45年前から取り組んできた森林農法がメキシコ全土で推進されることになった。


詳しく読みたい方へ:

<中村隆市ブログ>
メキシコの新政権が国策として森林農法を推進



本当に大事な変化には、時間がかかる。

人間だけでなく
すべての生きものや未来世代の幸せを願い、動く。

ゆっくりであっても
そういう存在でありたいと
トセパンの人たちが思い出させてくれる。

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