《ショートフィルム》 花とアリス を観て
映画/花とアリス/岩井俊二/2003
YouTubeにて公開された、ショートフィルム版 花とアリスを観た。この作品は昔から好きで、久しぶりに見たら音楽が懐かしくて、うるうるした。音楽とかって、ものすごく記憶に結びついていて、その時のことを思い出す。
学生時代、岩井俊二監督の映像や音楽の世界観が好きで憧れていた。特に、花とアリスは何度も見たし、花とアリス殺人事件は映画館に観に行った。懐かしいな。写真撮っておけばよかった。
ショートフィルム版を観て、そうそうこんな話だったと思い出して、少し泣いて、映画版を観たくなって、結局全部観た。前にケーブルテレビの日本映画専門チャンネルで放送していたものの録画が残っていて。しかも、岩井俊二のインタビュー付き。昔好きだった作品って、時間が経つとまた観たくなるよね。
ちなみに、この番組で映画を観ていたことはすごく良い経験だったなと思う。よく俳優特集というものをやっていて、その俳優の過去作を放送していた。私が松田龍平を好きになったのも、この番組の松田龍平特集を観たからで、たしかまほろ駅前狂騒曲の公開時期だった。
こういう映画チャンネルでは、自分で選ばないような、全然知らない作品に出会える。この時期にたくさん映画を観て、広がったと思う。
映画版は135分なのに対して、ショートフィルム版は全部で55分ほど。ショートフィルム版は作品自体は短いんだけど、内容が少し違っていて、初めの電車のシーンがすごく多い。
なんでもない話をしているシーンが長く切り取られているんだけど、それがとても良い。花とアリスの、二人の空気感が伝わってくる。すごくリアルな感じがする。インタビューでは、初めに撮影をしたのがあの電車のシーンで、アドリブでいろいろやってもらい、二人の呼吸をまず作った、と話していた。
ショートフィルム版では、花がメインで物語が展開していくように見える。それはこの映画を作る時に鈴木杏をメインで作り始めた、ということも関係しているのかもしれない。蒼井優はオーディションなんだそう。
“先輩が私のことを好きになったという事実はありません”
と言うシーンがかなり印象的に映る。あのシーン、演技、アリスが「一人いるよ」と言うところまで含めて、とても好き。
映画版を見返していたら、こちらはアリスの印象が強いなと感じた。ショート版には入っていない良いシーンがたくさんある。
アリスと父親のシーンが、暖かいようなでも切なくて、胸がいっぱいになる。パパ、ウォーアイニー。蒼井優と平泉成の二人のシーンについて、親子の雰囲気を作るために、撮影を三日かけたと話していた。これは寂しい女の子たちのお話なんだなと思った。
後半のアリスのバレエのシーンは美しくて、気持ちがいっぱいになって、涙が溢れた。アリスはおちゃらけていて、口を開けばスラスラと嘘が流れ出るような会話を続けていた。寂しかったからかな。
でも嘘がバレて、宮本先輩に「ごめんなさい」と謝り(あの鼻を押さえて話す蒼井優、めちゃくちゃ可愛い)、先輩の前で泣き、好きだという気持ちにも素直になり、伝えた。“ウォーアイニー”だけど。
そんなことがあって、自分の殻を破り一歩前に進んだアリスだから、あの美しいバレエを表現できたのだと。あのバレエはそんなアリスのことを表しているのだと、感じた。なんか昨日書いた話と繋がってる。
すごく好きなシーンが多い映画。軽やかで爽やかで、でもどうしようもない気持ちもある。クスッと笑えるシーンもたくさんある。宮本先輩は終始ぼーっとしているけど、必要な時には言葉を伝えてくれる。
それぞれ本当に少ししか出演していないけど、キャストも豪華。叶姉妹の美香さんが出てくるの、テンション上がる。“喧嘩しちゃダメだよ”って言う女の子も良いよね。
悩んで、寂しい気持ちを抱えて、でも、だから美しいんだな、って思った。
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