品田遊サイン会の思い出

2015年7月、私は学期末試験の勉強に追われていた。他学部の恋人と、図書館の談話スペースで毎日のようにテスト勉強に励んだ。わからないところがあれば恋人に尋ねた。御三家の中学出身の恋人は他学部の領域でも、テキストを読むだけで忽ち理解し教えてくれた。(偏見だが、文系学部の授業は聞いていなくても指定されたテキストを熟読すれば何とかなるものが多い。)

連日のテスト勉強に飽き、Twitterを開いたところ、品田遊先生のサイン会が開かれますというツイートが目に飛び込んできた。しかも今日、大学から数駅離れた場所で。私も恋人もネット大喜利とTwitterにハマっていたクチだったため、品田遊(ダ・ヴィンチ恐山)さんの存在は知っていたし、好きだった。恐山に会いに行こうと誘うと、パソコンとにらめっこしていた彼から、行く!!!と元気な返事が返ってきた。

吉祥寺駅に向かった。恐山になんて言う?ファンですって言う?それとも何か爪痕残す? 車内で浮き足だった会話をした。爪痕を残そうとする恋人に内心ヒヤヒヤした。

サイン会場に到着すると20人くらいが整理券を持って待機していた。我々も整理券を受け取り列に並ぶ。書店の方から、品田先生に書いて欲しいサインの宛名を紙に書いて待機してくださいと言われる。恋人は宛名でボケるかどうかを真剣に検討していた。ヒヤヒヤしたが、結局実名に落ち着いたらしかった。良かった。前に並んでいるカップルの会話を盗み聞きしたところ、今回の本のイラストや表紙絵を担当したerror403さんのステッカーも貰えるらしい。私も恋人もerror403さんのLINEスタンプを愛用していたのでテンションが爆上がりした。恐山さんに会えて、サインもらえて、error403さんのステッカーまでもらえる、しかも本代だけで。豪華すぎる。

10分くらい待って自分の番が来た。恋人は自分の応対を見られたくないからキミが先に行って、と言われた。繊細ボーイである。

当たり前だが実物の恐山さんも仮面をしていた。止まりだしたら走らないの表紙の柄の仮面だった。その上からメガネをしている。小柄で知的な佇まいだ。黒か紺色のシャツを着ていた気がする。緊張しながらもよろしくお願いしますと声をかけた。宛名の紙を渡して、サインを書いてもらう。恐山さんがサインを書きながら、「このステッカー、何に貼りますか?」と問うてきた。とっさに、玄関に貼りますと答えた。NHKとかのシールのサイズ感に似ていたからだ。玄関か、珍しいですね、と微笑まれた。

興奮冷めやらぬ心地で会場から出る間際に、恋人が果敢に爪痕を残そうとしているのが視界に入った。恥ずかしかった。




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