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毎日のごはんが私を助ける

同じ街で一人暮らしする娘から電話をもらったのは金曜日の夜。

「渡したいものがあるんだけど、取りに来れる?」

と言われても その時 家から歩いていける近所の小さなイタリアンで父も一緒にワイン飲んでたから「運転できないから行けない」とそっけなく答えたんです。

娘、平べったい感情のまま(起伏無し 全然平ら)淡々と「じゃ明日来てね」と。

で、翌日 博多に行くダンナを送って駅に行く途中 娘のところに寄ったんですね。
「これ 作ったから---」と差し出した小さなプラスティック容器に入ってたのはコロッケ2個。「昨日 晩御飯に作ったら美味しかったから」って。

えっ?!
昨日 出来立て渡して食べてもらいたかったんだよね?!
そっちの方がドラマティックじゃん?
何にも言わないし、全然 残念そうじゃなかったし---

長女は私と違って"暑苦しい執着"のない人。どちらかというと父に似てる。
成り行きには黙って従う。抗っても仕方ない---の脱力感で流れるように生きてる。

暑苦しい母はいつも「もっと情熱持って、パッション!」と奮い立たせようとするが 、私は私の流儀で生きるから〜〜と 暖簾に腕押し。
いまひとつ積極性に欠ける(と、評価してた)彼女には、いろいろ役立ちそうな情報を与え、刺激受けるだろう体験にも誘い、たくさん本も紹介し、自己啓発して欲しいと願ってた。

食に真摯に向き合う友人たちのおかげで 遅れてきた「食の重要性信奉者」の母は、「食べたものであなたの体は作られる。料理教室通ったら?」とかプッシュしてたが 当人 動かざること山の如し---

もう 母は何も言うまい、強制すまい---とやっと悟り---
黙ってプレゼントしたもの3つ、紙袋に入れ届けました。

その時読んで大感激した宮下奈都さんの文庫本【太陽のパスタ、豆のスープ】

その本の中でそれはそれは魅力的に描かれていた豆たち。昔から田舎のおばあちゃんたちが美味しいと大事に伝えてきた在来種のお豆を扱う長谷川商店【べにや】さんの取り寄せお豆セット。

お嫁に行く時 持たせようと2年前に予約 半年待って手に入れた『世界一、素材本来の味を引き出すメイド イン ジャパンの鍋』【バーミキュラ】のピンク。

まぁわかってたことですが、石は投げたが波紋生ぜず---ショボーンの状態でした。

ところが二週間程経った土曜日
「きんぴらごぼう入り豆コロッケ」が、私に手渡されたんですね。

「あ、ありがとう。昨日 取りに来れなくてごめん」---と言ったきりスピーチレスになった母。すごくすごく嬉しかったのよぉ〜

程なく娘からラインにメッセージ。


仕事忙しくて毎日最近はスーパーの弁当食べてたんよね。何日か前に急にお味噌汁が食べたくなって野菜たっぷり入れて作ったら美味しくて感動!
食べてた時、脇にもらった本がチラッと目に入って---読んでみたらタイミングのいいこと。
あすわ(主人公の名前)の母が放ったあの一言がお味噌汁の感動と重なって、そういうことなんや!って腑に落ちたん。

【毎日のごはんが私を助ける】

この言葉が稲妻のように落ちたんよ。
鍋と豆と本が線で繋がりました(^-^)/
また作るから食べてね〜

誰かの為じゃなくて自分の為にご飯を作ろう、そしたら何かが変わるかもって私も思ってね(*^o^*)

その日 母はその2個のコロッケそのまま持ち歩きましたよ。
友人とお昼行った「もり田」さん(寿司屋)で 見せびらかして写真も撮った。銀天街のコーヒーショップで話しした老舗鰻店の大将にも無理やり一口食べさせた。夜は北九州芸術劇場「パーマ屋すみれ」 ここでも同席の友人に見せつけここまでで半個 食べた。

もうね、本当に美味しいのなんの!

「べにや」さんの長谷川清美さんのレシピ、お豆は前川金時を使い その風味豊かでコクのある味わいがねっとり口に広がるんですね。ゴボウも効いてる。今まで食べたコロッケの中で断トツナンバー1の美味しさだった!

帰宅してもう半個食べ 父の為に1個残してたコロッケでしたが、ダンナからの「遅くなります」のメールに ではいただきます!と大事に大事に味わって全部いただきました。
すごく美味しかった。

大切な人には とにかく種まきする。騒がず黙って愛込めて。その時が来たら、ベストタイミングで芽が出て花が咲いて実がなるんですね。私のごちゃごちゃ言う言葉より「鍋と豆と本」が 娘に語りかけてくれたものの方が、彼女の心にスーッと沁みたんですね。
宮下奈都さんと長谷川清美さんと日本の鋳物技術に感謝です。

そんな風に感動を何度も反復してたら今朝NHK「あさイチ」で有働アナが本屋大賞をとった「羊と鋼の森」の著者 宮下奈都さんのご自宅に伺いお話を聞くという特集が放送され、この作家さんの魅力が理解できたのですね。

3人の男の子を育てながらそれまで育児日誌以外の文章を書いたこともない主婦が長い文章を書いたら「楽しすぎて幸せだった」のだそう。お母さんが幸せだから子育てもハッピーで家の中も明るく楽しい。そう お母さんが好きなことをするって周りも幸せにするんだって再確認です。
最後に彼女の名言、【迷った時は少しでも気持ちが明るくなる方へ進め】そう自分のバイアスない感性、直感で動くのが一番ですよね。悲劇のヒロインより喜劇のヒーローに成ろう!です。

そして ご飯を作る、というような毎日の事を淡々と気負わずこなしていくこと---その大切さがわかると人生に厚みと深みが出てくるんですね。

私は何かになりたい!と焦っても、私ってダメな人間なんだ!と落ち込んでも、
「毎日のごはん」が助けてくれるはず---きっと娘はお鍋のお豆がコトコト煮える音に幸せな平安を見つけてることでしょうね。

それに 美味しければ 文句なし---です。

岸田ひろ実さんのコーチングな日々
『思い込みと使命感のアドバイスをやめる』を読んですごく共感。
このコロッケのこと思い出したんです。

4年前に書いたものだけど大切な思い出だから---noteに残しておきます。
#太陽のパスタ豆のスープ   #宮下奈都さん #長谷川清美 #べにや #前川金時豆コロッケ #バーミュキュラ #毎日のごはんがあなたを助ける #母と娘  

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