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More tea, Vicar? -『動画削除』について

今更ですが…というまえがき

 お疲れ様です。あいなです。

 当アカウントは、現在、千葉県警の交通安全啓発動画がとある団体の抗議を受けて削除された件について、関係している地方公共団体に情報開示請求をしています。

 このコーナーでは、少し情報開示請求の話から離れて、私個人が考えている『そもそも論』を記事にしてみようと思います。

  恐らくこの記事をご覧になる方は、おおかたの情報も前提知識もご存じだと思うので詳しい経緯はさくっと省きますが、情報公開請求で得た資料や、SNS・ニュース等で当事者さん達が公開しているコメントなどを見返してみると、認識の違いを修正できない/しないままに、相手を批判したり訂正を回避したりしており、どうにも話し合いのテーブルに座る以前の『そもそも』的な部分が食い違ったまま、延焼を続けているような印象があります。

 今回はその『そもそも』の部分の一つである『動画削除』についての記事を書いています。
 知識としては拙く、話としては周回遅れなのですが、今後の情報開示請求の総まとめをするにあたって個人的に必要なことだと感じましたので、記事にして残しておこうと思います。


○松戸警察署での動画作成

 2021年1月中旬頃のこと。
 松戸警察署の交通課で、ある一件の起案書が提出されました。
 タイトルは『令和3年交通安全運動に伴う交通安全啓発動画の作成について』

 手書きで書かれた内容には、
 『松戸市ゆかりのVtuberに依頼し、(中略)交通安全を呼びかけます』
 『交通総務課確認 作成についてはOKとのことです』
 『(広報県民課への確認について)事前申請は無し』
 …という、交通安全啓発動画を作成・公開するにあたって、関係各所に担当者が連絡をしている旨が記述されています。

 もし、この動画の作成に問題があるとすれば、この起案書が回覧されたタイミングで差し戻しになったと思われます。

 しかし実際のところ、起案書は松戸警察署長の決裁を受けています。

 そして、動画作成が順調に進み、2021年7月上旬。
 Vtuberの出演する交通安全啓発動画は完成し、松戸警察署と松戸東警察署の連名で公開することが正式に決定しました。

 2021年7月16日に行われた覚書調印式。
 これは、松戸警察署長と松戸東警察署長、Vtuber事務所社長3者が参加した、動画に関する覚書の調印式です。
 この件で千葉県警総務部広報県民課広報係が作成した業務連絡書のタイトルは、『Vtuberが出演する交通安全啓発動画の覚書調印式の実施について』

 覚書には、動画の著作権がVtuber事務所にあること、警察署は動画を無償で使用できること、そして、何か問題が発生した時は関係者同士の協議の上で誠意をもって対応するという内容が書かれています。

 壇上のモニタ上にVtuber自身が登場しあいさつをしたという記録は、書類内にも、取材を行ったちばテレビのニュース記事にも書かれています。

○動画に関する当時の批判はあったのか

 8月23日付で市民ネットワーク千葉県所属の県議会議員・伊藤とし子氏がブログに書いた内容には、『この動画を知っていたのか』という指摘に対して警察からは『問題無かったので決裁した』と返答があったと書かれています。

 そして、その2日後の8月25日。
 千葉県警に一件の電話が入ります。
 関係各所に回付された電話受理票の件名は『県警広報用キャラクターの適否について』
 内容は黒塗りですが、松戸警察署長・松戸東警察署長及び千葉県警交通部交通総務課長宛てに回覧がされています。
 対応は松戸警察署と松戸東警察署に委ねられています。
 そしてその対応の詳細に関しては不明です。

 ですが、一つだけ確かなことがあります。
 電話の翌日・8月26日付で、フ議連から公開質問状が送付されているということです。

 私は、この8月23日付のブログも、8月25日の電話も、全てフ議連の関係者からの発信だと思っています。

 ですので、後日警察側がNHK記者の取材に『使用したキャラクターが適切ではないと議員連盟を含む複数の意見が寄せられた』と説明していましたが、『複数』というのは数であって、元を辿れば同じ組織・同じ思想・同じグループから発信されているものでは…?という推測をしています。

 (これに関しては、黒塗りの書類を開示された一般市民では推測の域を出ません。しかし電話番号や、批判内容の類似性などから、警察側ではある程度類推することができることだと思います)

○Youtubeチャンネル『千葉県警察広報県民課』

 千葉県警の公式Youtubeチャンネルは2018年6月15日に登録され、千葉県内の各警察署が撮影・制作した動画を公開しています。

 明らかに子ども向けの動画もありますが、全てがそうと言うわけではありません。
 また、千葉県にゆかりのあるタレントやご当地キャラクター等とのコラボは、現在までに既に何作も公開されています。
 フ議連から指摘された動画が削除された以降も、それらはチャンネル上で公開され続けていますし、新しく作成・公開された動画もあります。

 この動画削除の件があってから、毎月のようにチャンネルをチェックするようになったのですが、各警察署の作成する動画が手作り感溢れており、かつ伝えたい要点は押さえているもので、地元であったら応援したいという気分になるものが多い気がします。

 このチャンネルの中に、『某海外アニメとのコラボをしている子ども向けの交通安全啓発動画』があります。
 現在、千葉県警には情報開示請求中ですが、このコラボ動画の制作に関する書類や、子ども向けに作成する動画のマニュアルなどがあれば写しを頂く予定です。

 私の仮定は、『Vtuberが出演している交通安全啓発動画は、子ども向けに作ったものではない』なので、この情報公開請求でその仮定がある程度確信をもって立証できると思っています。

○公開質問状に答えていないのは誰?

 公開質問状は6件の宛先に送付されています。

 千葉県警察本部長
 松戸警察署長
 松戸東警察署長
 千葉県知事
 松戸市長
 松戸市教育長

 9月9日付、および9月16日付でフ議連に回答を送った団体は以下の通りです。

 松戸市教育長
 千葉県警察本部交通部交通総務課長
 松戸警察署長
 松戸東警察署長
 松戸市長

 こうして並べるとすぐに分かりますね。
 千葉県知事からの回答はありません。

 これは個人的な意見ですが、公開質問状に対して『回答をしない』という選択は存在してもいいと思います。
 なぜなら議論ができないもしくは話し合えないと思っている団体や個人からの要求に対して『無視をする』というのも一つの回答を示す態度であると思えるからです。

 ですから、今回千葉県知事の回答書が存在しない事に関して、当初はあまり意識をしていませんでした。
 むしろ松戸市は無関係なのに返事してて偉いな、ぐらいに思っていました。

 しかし、情報開示請求で得られた資料を読むうちに、千葉県庁の報道広報課広聴室から千葉県警の広報県民課へ回答を押し付けるような動きがあったようだということが分かりました。

 むしろ、『回答する前に千葉県庁へ内容を連絡してね』『千葉県庁へは9月3日までに教えてね』という、フ議連への期限内回答を暗に要求するような動きであったと書類上は感じられたのです。

 千葉県庁側がフ議連への忖度のような動きをした結果、千葉県警は動画を削除し、回答文を作成し、Vtuber事務所には事後報告をしたのではないかという推測をしています。

 千葉県知事選挙において熊谷氏が当選した際に支持を表明していた団体の中には、市民ネットワーク千葉県という団体があります。

 そう。動画に関して最初に批判的なブログ記事を公開した、県議会議員・伊藤とし子氏が所属している団体です。

 この市民ネットワークと呼ばれる団体は、関連団体から出馬した女性地方議員がフ議連のメンバーに所属しているなど、フ議連とは関係が深い団体なのです。

 千葉県知事からの回答が無いのは何故なのか。
 今となっては、意味がある疑問ではないかと感じ始めています。

○なぜ千葉県警は動画を削除したのか

 9月9日付でフ議連宛てに送った回答書の中には、このように書かれています。
『いただいた御意見につきましては、今後の広報活動の参考とさせていただきます。』

 9月11日付のよろず~ニュースの取材に対しては、このようにコメントしています。
『意見を踏まえて効果的な交通安全の啓発策を講じたい』

 この削除から1日経過時点でのこれらのコメントは、『意見を聞いて削除しました』ということと『次はちゃんとやります』ということを端的に表現していると言えます。

 もう少し警察側の印象が悪くなるような説明をすると、『これからも交通安全の啓発に努めます』ではなく、『効果的な交通安全の啓発策を講じたい』とコメントしているというあたりは、動画に起用したVtuberは『効果的ではなかった』と断じているコメントであり、フェミ議連の公開質問状に対する全面降伏だということになります。

 また、9月17日付でふじすえ健三氏がSNS上で公表した、警察庁経由で千葉県警へ確認した際の、千葉県警側の回答は以下の通りです。
 比べてみても、前述のコメントがどれだけフ議連におもねっている意見であるのかがよく分かるかと思います。

・質問状にある「性犯罪を誘発する懸念」があるということが削除理由ではない
・非接触型による交通安全教育・啓蒙の新たな手法として考えたことであり、性的な対象として認識したことはない
・本来の目的と異なる意図で伝わることは本意ではなく、掲載期限(9/17)が迫っていたこともあり、削除した

 これ読むといつも思うのですが、『「性犯罪を誘発する懸念」があるということが削除理由ではない』のであれば、公開質問状の回答期限までに動画を削除することはしなくても良かったはずです。
 それこそ『本来の目的と異なる意図で伝わってしまう』ものではないでしょうか。

 また、『掲載期限(9/17)が迫っていた』ということですが、この掲載期限は誰が誰と何を根拠に決めた期限なのかが全く示されていません。
 ちなみに千葉県警のYoutubeチャンネルに掲載している交通安全啓発動画の中には1年前の作品も2年前の作品もあります。

 ふじすえ氏がコメントする通り、確かに『Vtuberが性犯罪を誘発する懸念があるため動画を削除した』という疑念は晴れましたが…

 『問題の動画をさくっと削除すれば、これ以上の批判を受けずに終わるだろうと思った』んだろうな…という疑念はすくすくと育っていますね…主に私の中に。

○無かったことにしたいんだろうなぁ…

 全国的に警察の不祥事ニュースが相次いでいる昨今、些細な問題も可能な限り起こしたくないという気持ちも分からないではないです。

 しかし、不祥事を起こした人間が関わっている動画ならばまだしも、組織内の綱紀粛正のために動画の存在自体を切り離し消滅させただけでは、どこがどう悪かったのかの認識や自覚が無いまま終わってしまうものではないでしょうか。
 その危惧は、地方公共団体の中の人たちには無いのでしょうか。

『地方公共団体が、政治的に活動をしている団体からの批判を受けて、問題の無い動画を著作権持っている側に了解もないままに削除した』という事実だけがカリカリに残ってるな…とこの事件について記事を書くたびに思います。

 昨年は頻繁に、社会に疑問を投じるような女性や女児の性的搾取を容認する…もしくは公然わいせつ物頒布罪ギリギリのところを攻めていくような…挑戦的で性的刺激のある広告等が、SNSで議論を呼んで炎上し、時には『誤解をさせたなら申し訳ありません』という形だけの謝罪が広告を出すが更に炎上を呼んだ…という事例が相次ぎました。

 この動画削除の件に関しては、千葉県警からは『問題のある動画を公開してすみません』という謝罪も『こういう箇所が問題だったので次からは確認します』という反省も出ていません。

 時系列的には批判を受けて動画を削除した事実は明白なのに、Vtuberを起用した理由を語りながら、削除した理由を語っていない回答文を送付するという、実質的に公開質問状に対しての『無視』をしている状態です。

 そして、『〇〇をすれば警察とのコラボを再開する』等の約束もないままに、『Vtuber事務所との契約は今でも有効です』『落ち着いたら』『今の段階では確約できない』と、コラボの再開をはぐらかし続けています。

 このままフ議連にもVtuber事務所にも反応せず『警察が民間と協力して作成しネット上に公開していた問題の無い動画を左翼系団体から批判されて一方的に削除した』という事件そのものを『無かったこと』にしようとしているとしか思えません。

 そしてその行動をとりたいと思っているのは千葉県警の『現場』なのでしょうか?それとも『上層部』なのでしょうか?

 今回の問題は、女性が女性を差別している話ではないと思います。

 権威ある男性が、責任逃れの為にパニックを起こして、女性も表現も市民も雑に踏み潰して、そのまま雲隠れしている…という問題なのだと思っています。

○この先、千葉県警はどうする?

 今後、千葉県警の広報が動画配信を続けるうえで、動画削除問題への批判に関して取る行動は、大きく分けて3通りあると思います。

 1つは、動画を削除したこと自体を公式に謝罪し、動画を削除されたご当地Vtuberともう一度、問題が無い交通安全に関する内容の動画を作成し、公式チャンネルで配信する。

 某Vtuberの完全復権を理想として目指すと、ここがゴールになると思いますが、これはかなり難しいし、現実味が無いと思います。
 広報を行う側が、一度ケチがついたタレントをもう起用しないというのは良くあることだと思うからです。
 また、警察という組織が自分たちの非を翻意して認めるというのも、考えにくいことです。

 2つ目は、動画を削除したことは無視して、別のVtuberとコラボして交通安全に関する動画を作成し、公式チャンネルで期間限定の配信をする。

 やりなおし、というイメージです。
 別の警察署の所轄にもご当地Vtuberが誕生すれば、いかにもありそうな話ですよね。
 ですが、広報のスタンスとしてはどうかな…再度炎上を恐れて企画段階でボツにしそうです。
 もし仮にこの動画が制作され配信されたとして、削除された方のVtuberに対してあまり誠実ではない気がしますし、いよいよ民間会社との訴訟問題に発展してしまう恐れも秘めています。
(ちなみに名誉棄損罪の時効は3年です)

 3つ目は、今後の課題を組織内で周知徹底し、問題無いと自己判断することが可能なスキームの中で動画を作るように心がけ、Vtuberは今後起用せず、動画を削除したことに関しては今まで通り無視する。

 反省はするけど表に出さない、というイメージです。
 今の千葉県警公式チャンネルを見ていると、どうもこの路線寄りではあると思います。
 動画制作のクオリティが上がるのはとても良い事ですが、フ議連もVtuber事務所も無視し続けているということには変わりありません。
 その批判を受け続けることと、今までの発言を翻意して謝罪をすることを天秤にかけた結果、千葉県警自身が選んだ道ということであれば、私たちはそれを見守るしかありません。(批判しないとは言ってない)

○おわりに

 ここまでお読みいただきありがとうございます。
 今度は、千葉県警に情報開示請求をした結果を記事にできるといいなと思っております。
 (現在、千葉県警側が書類の確認等のため請求期間延長中です。)

 よろしければ、このアカウントをフォローしていただき、次の記事を気長にお待ちください。

 では、また。


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