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夕暮れの海に行って 沈む陽を追いかける タイダイの 空を纏って 波打ち際に 腰を下ろす オレンジ色の横顔 風になびく髪にも 夕陽は絡みついて どこかの犬が走って いくのを気にしたり スケーターの友達は ハンドサインだけで あいさつを交わした 繰り返す波が指先を 濡らしていく 灯台が明滅している ように見える 話すことは ないけれど たまに目を 細め合った おしゃべり だったのは 波と風だけ
スープ。波が崩れた後に立ち上がる白い泡。 美羽(みう)という私の名前。美しい雨の美雨(みう)に憧れる。何しろ水は美しい。蛇口を捻って出てくるものでも、店舗に陳列するボトリングされたものでも。海で荒れ狂い揺蕩うものでも。光る泡を産む炭酸水でも。雨でも。 後ろから男の人の声がした。 「元気ないね。彼氏と喧嘩でもした?」 「……秋谷から歩いて来たから」 「アキヤって? 遠いの?」 「この辺の人じゃないんだ?」 「初めて来たんだよ」 二十歳くらいの男の人。後ろの砂浜に横たわ