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アイ・アム・サム

I am Sam. (2002)

7歳の知能しか持っていない父親、サム。
スターバックスで働きながら、娘ルーシーを育てている。
ルーシーが7歳になった誕生日会の日、
ルーシーは家に帰ってこなかった。
本を読んでもらっても、もうルーシーのほうが知っている単語が多かった。
サムは誕生日会に来た友達を突き飛ばしてしまう。
それが児童相談所へ知れ、サムには保護者としての能力がないと判断。
ルーシーは施設に保護される。

どうしても彼女を取り戻したいサムは、弁護士事務所に乗り込む。
敏腕だが、神経症的な弁護士リタ。
リタはサムの弁護を引き受けることで、
自分は儲け主義ではないと周りにアピールしようとする。
ルーシーをちゃんと育てることができることを証明するため、
彼の障害を持つ友人たちや、外出恐怖症のアニーに証言してもらうよう頼むが
相手側の弁護士の厳しい質問に、かえって傷つけられてしまう。

リタにも息子が一人いるが、最近ちっとも口をきいてくれない。
仕事も家事も完璧にこなしているつもりだが、
夫はもう何日も家を空けている。
プールつきの豪邸。帰ってきても息子は部屋から出てこない。
サムのルーシーを思う気持ち、
ルーシーのサムを思う気持ちに、
リタは心を動かされていく。

ルーシーの里親が決まり、
スターバックスを首になったサムは、
一度はルーシーと暮らすことをあきらめたが、
リタの励ましで、もう一度ルーシーを取り戻すために立ち上がる。
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7歳の知能しかないサム
敏腕弁護士で完ぺき主義のリタ

どちらがしあわせ?

ルーシーを奪われたサムは、リタにいう、
「きみみたいななんでもできる人に、ぼくの気持ちなんかわかるはずがない!」
「何でもできるからといって、幸せとは限らないのよ!」
「がんばってもがんばっても、誰も私を愛してくれない。
息子は口を利いてくれないし、夫は帰ってこない。
あなたにはルーシーがいるじゃない、友達が、アニーが。」
サムはルーシーを取り戻すことを決心する。
リタは離婚することを決める。

幸せは、何かを持っていることじゃない。
どれだけ人を無償に愛せるか、愛されるか。


[余談]心理学的に観た、アイ・アム・サム

リタは「自立した女性」の典型。
弁護士で、ブランド物の服を着て、ポルシェに乗り、分刻みのスケジュールに追われている。
息子の送り迎えはするし、宿題も見てやっているつもり。
いつも彼のことは気にかけているのに、なぜか彼は言うことを聞いてくれないし、話もしない。
幸せになるために、いろんなものを犠牲にして、がんばり続けたのに、
手にしたものはハードワーク、疲労感、家庭崩壊。
ここで問題なのは、彼女は負けたことがない、ということ。
「成功者の法則」の罠。
私たちは、ある方法で成功すると、そのやり方に執着してしまいます。
その方法で次第に何かを犠牲にしていても、成功して手に入れたものを手放せなくなります。
それを続けていると、デッドゾーンという壁にぶち当たります。
「これ以上どうしたらいいの?」
「私の一体どこが間違ってるの?」
リタはいつもそう叫んでいました。
この間違っていないことが、間違っていたのです。
彼女は彼女のやり方でいいと思うことをやっていただけで、
息子がほんとうにしてほしいこと、ありのままの息子を愛してあげることができていなかった。

彼女にとってサムはシャドー(過去に捨ててしまった自分)といえます。
コンプレックスに打ち勝つために、失敗者ではないと言い聞かせるために、
周りに馬鹿にされないためにがむしゃらにがんばってきたリタ。
一方サムは地位も名誉もお金もない。まさに彼女が恐れた失敗者の姿です。
それなのに、彼はルーシーにも周りの人にも愛されている。
子供というのは本当は親のことを好きで好きでたまらないものです。
子供は親を愛するがゆえに、親と同じ問題を持とうとするそうです。
ルーシーがサムよりも絵本を上手に読めるようになったとき、
彼女は「私も読めない」とうそをつきます。
リタの息子も本当はお母さんにいっぱい伝えたいことがあるのに、
彼女が時間がないので、自分の時間も彼女に与えないようにしてしまっていて、
お互い顔を合わせることがなくなってしまっています。
ルーシーとサムの関係に触れるにつれ、
リタと息子の関係も変わってきます。
リタが、勝ち続けるという戦いをやめるにしたがって、
仕事をばりばりすることよりも息子との時間を大切にするにしたがって、
駄目な自分を受け入れることで、離れてしまっていた愛が戻ってくるのです。

大きな壁にぶち当たったときは、
自分のやり方を捨て、本当に大切なものは何かを考えてみること。
そのヒントを握るのは、シャドー。自分がいちばん嫌っている存在かもしれません。
そして、自分を取り繕うことにエネルギーを費やすことから、
本当の自分らしさを大切にすることにエネルギーを費やしていけば、
プライドや世間体から開放され、もっと楽にもっと幸せに生きられるようになる。


Counseling style 映画で学ぶ心理学を読んで。

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