見出し画像

直行型人間に憧れる話

心と行動が直行してる人は不思議な力を持っている。

自分の気持ちに素直で、自分自身の喜ばせ方をよく知っているし、嫌だと思うことはしない。いつも飾らずそのままの自分で、変わらない。

そんな人の姿ってある意味勇敢だし、誰にだってできることじゃない、1つの才能だと思うんだ。そんな、心から行動へ直行便が走っている人を「直行型人間」と呼ぼう。

人間らしい彼・彼女らと一緒にいると、自分の心に貼り付いた何枚もの盾が一枚ずつ剥がれていく感覚がある。今日はそんな一人の女の子について書こうと思う。

毎日の暮らしを楽しむ天才

去年私がこの街に越してきて出会った彼女は、5つ歳下の大学生。

彼女は食器が大好きだ。いつも自分を喜ばせるとっておきの料理を作っては、お気に入りのお皿に盛り付け毎日を祝っている。

彼女はコーヒーが好き。自分のコーヒーミルで豆をひき、丁寧にドリップし、小さなマグでそれを楽しむ。カフェラテもキャラメルラテも、時にはレモネードだって、なんでも美味しく作るのだ。

彼女はセンスが良くて、大胆だ。その小さな部屋は、それは素敵で居心地の良い秘密基地。自分のしたい暮らしに必要な愛するアイテムだけを残し、心むくまま、時が流れるように空間の変化も楽しんでいる。

彼女は素敵な言葉を口にする。「なんだか今夜は、いい夜にしたい気分。」美味しそうに夕食を食べながらそう言った彼女は、それからキャンドルを灯し、特別なスイーツを作り、お気に入りの本を持ってきて本当にいい夜をつくってしまうから不思議だ。

いつも楽しそうに学び、美味しそうに食べ、気持ちよさそうに風に吹かれ、幸せそうに笑うのだ。

彼女の心と行動の直行度はすさまじい。行動を共にすると、心が踊る方へすぐに動いてしまうものだから、自分の行動基準にいくつものルールを設けてしまっていた私は少し戸惑ったくらいだ。

彼女が教えてくれたことは、自分の気持ちの見つけ方

彼女は何か凝り固まった目標を要素分解して日々の行動を設計するようなことはしない。日々を楽しむことをダイレクトに選択している、それも堂々と。

初めて二人で話したのは、ある晴れた太陽が心地のいい夏の日。私は仕事をサボって、家の下のカフェでたまたま居合わせた彼女と自転車でそのまま川に行った。芝生に座りコーヒーを飲みながらおしゃべりした。

将来どうしたいのかと尋ねると、大学で好きな建築を専攻しているにも関わらず、建築の仕事は自分には向かないからやらないと言う。自分に向いてないことが分かるって、それでも好きだから学ぶって、すごいと思った。

彼女は、自分の心が動くものを沢山知っていた。英語や料理、エコロジー、様々なことに関心をもち、得たアイデアを素早く自分の生活に取り入れ、毎日を豊かにアップデートしていくのだ。知れば知るほど、そんな軽やかに人生を楽しむ姿に釘付けになっていた。

「生産的でない何かを思いきり楽しむこと」が苦手

一方、この街に来たばかりの私は、自分のスケジュールが崩れたりお金も時間も想定外に使うことに対して臆病な人間だった。条件付きの幸せしか認識しにくいよう、脳内システムはいつからか書き換えられていた。

「大学まで出た自分は、受けた教育に見合ったいい仕事をすべきで、その達成に励むことが自分も周りも幸せにする。」そんな考えしか持ち合わせていなかったし、その道を外れることは、どこか人生を諦めるような重苦しささえあった。

就活でいつからか使い始めた、自らを表現するフレーズは「納得しないと進めない。」でもそれって実は、納得できないことを理屈で頭に落とし込んで行動してきた産物なのかもしれない。そもそも納得したくないものなんて脇に置いて、直感でワクワクする方向に進んでもいいのでは?

沢山の複雑な理屈を組み合わせないと許可できないほど、遊びまで下手になっていた。大好きだった音楽も、楽しめなくなっていた。

夢を叶えるための毎日なはずなのに、苦しくて不安でいっぱいになる時間が増えていった。

その目標は本当に自分の願いなのだろうか

もちろん、目標に向かって頑張れることはすごいこと。でもその目的が本心じゃなくなっていたら…?人って、未来の自分の幸せの形を最初から予測できるほど単純じゃない。

目標に向かって頑張って生きてるはずなのに、苦しくて、すり減っていく自分に気がついたら、勇気を出して心の声を聞くための時間を持つ。

ありのままの自分で今を楽しんでみたら、きっと心の本音が聞こえてくる。「楽しい」とか「好き」って気持ちには、嘘がない。自分の命が喜ぶ感覚って、内側から自然に湧き出てくるものだから。その感覚を自分で知っている人ほど、自分らしくいることが上手な人なのかな。

心って瞬間瞬間変わりゆくから

計画通りに動いても、自己実現に向けたTO DOリストをこなしても、今歩いている場所と心との距離がどんどん遠ざかってしまっていたら、見えなくなるものがある。

心身が凝り固まると、幸せになれる方法を、頭でばかり考えてしまう。世の中には沢山の幸せマップがあるが、一人ひとりの人間は違うわけで、自分にとっての完璧なマップなんてない。ヒントは自分の心の中にある。

心って日々変わる。頭で考えたって分からない。だから私は心の声を聞きたいし、それを行動に移せる人間に、直行型人間に憧れる。

彼女と過ごす自然な時間が、私の心を解きほぐし、素直な気持ちを引っ張り出してくれた。私が、心のむくままに今を楽しむことを自分に許可できるようになったのは、そして誰の物でもない自分の人生を生きる感覚を取り戻せたのは、きっと彼女の不思議な力が働いたから。


2020/04/21

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?