見出し画像

letter|May 20,2021

元気ですか。わたしは先月に比べて、見違えるほど元気になりました。パートナーが笑ってしまうくらいの復活。4月は東京を離れ、彼が暮らす土地で一緒に過ごすには狭い1DKにひきこもり、よく食べ、よく眠り、よく本を読み、ドラマとアニメと映画を観ていました。「何にもしない」をするのにも、当たり前に罪悪感とか世間の目はあって、でもそういうものからも少し距離を置くことができたと思っています。SNSを積極的にやめてみたのもよかった。最近は感情がまた動くようになったし、悲しんだり怒ったりできるようになってきた。ほんとうにうれしい。
転職活動では嬉しいご縁があって、今週から働き始めました。想像よりも英語をフル活用する現場に焦り、突然オンライン英会話の体験に申し込んだり、Voicyで英語チャンネルを聞いたり、文法と単語の本を買っては夜な夜な復習をしています。世界にSiriとGoogle翻訳があってよかった。明日、英語で自己紹介をするのでお腹が痛い。ただ、職場の人たちへの柔らかな信頼感があって、業務は大変だけれど楽しい。これまで話せなかったようなことが自然に話せる。人と接するときの最低限の前提条件が近しいと、心地が良いんだな、と当たり前のことを痛感しています。早くできることを増やしたい、と急いてしまうけど着実に。

慌ただしく戻ってきた東京は例年よりかなり早く梅雨入りして、からっとした晴れ間はほとんどなく、しとしと落ち着いた雨が降ったり止んだりしている。ぼーっとしながら、パートナーと慣れない土地で生活していた先月のことを思い返すとふつふつと元気が出てくる。ベランダから何か茶色いものが横切った、と思ったら鹿だったり、車から眺めていると野生のキジがいたり、ご近所さんが飼い始めた子ヤギの散歩をしたり。日が経つにつれ成長して、角が伸びてくるのを見ていると、なんだか温かい気持ちになって。厳しさも当たり前に日常にある分、生き物は尊いな、と何度も思った。

想像してみる、彼の部屋、ふたりで暮らした場所で、彼がこれからひとり暮らしを始めることを。別居することになったときと同じ思いをしてほしいなんて全く思っていない。でも、そのさみしさを私は肩代わりすることができない。どうしようもないね、と静かにお互いが諦める。それはいつかの、なにかになるだろう。私自身が歩まなければわからなかった道。世の中の離れて暮らす人たちは、みんなえらい。プリンとかいっぱい食べたらいいと思う。そして、お梅さんの日記も読んだらいいよ。パートナーのことを”渡り鳥”と表現していて、潔い諦めが愛に見えた。

一人暮らしのいいところは、気に入った同じドラマを何度も見たり、安心する声としてラジオをBGMに眠っても、誰も気に留めないことだ。同じアニメだってぐるぐる見られるし、お皿を洗うのを明日の朝に回してもいい。
先週は、突然画面から聞こえてきた台詞に脳が揺さぶられて、過去に飛んだ。繰り返し見るほど好意的なはずの主人公が放ったその言葉だけが、過去の別の人の声で蘇って、ざらりと嫌な感触を残した。
そういうふうに記憶がトリップしても、浸かっていられる。でも怖い夢を見た朝だけは、ねえ聞いてよ、と話したくなる。からだじゅう全部が無気力だった日々を思い出しては、戻りたくないと怖くなる。ただ根拠はないけれど、わたしは大丈夫だと思える今がいちばん幸せ。わたしは過去には戻りたくない。

あなたは元気ですか、よく眠れていますか?眠れない夜は、ラジオを小さくかけていたら、いつの間にか爆睡できるから試してみてください。たまに、内容が面白くて全部聞いて目が冴えちゃうけど。では、おやすみなさい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?