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誰がアパレルを殺すのか

ちきりんさんオススメのこの本には帯に「変われない企業、変われない業界にいる人、必読!」と書いてある。私のいる不動産業界にも、そういう流れがあって、その中で苦しんでいる人や、変えようと奮闘している人がいる。

私はアパレル業界には馴染みがないが、「業界全体に思考停止が蔓延している」と評されており、「将来像を全体で共有しないまま、各プレーヤーが好き勝手に振る舞い続けていては、業界が集団自殺しているのと同じ」とまで書かれていた。
業界の歴史と、競争相手はITベンチャーや大手金融機関となった現状、消費者の意識の変化など、さまざまな事例が挙げられているので、業界に明るくない人でも分かりやすく知ることができる。

「成果の果実を独り占めするようであれば、より大きな市場の開拓は期待できない。情報を公開し、ライバルが後に続くことを期待している」

読んでいてワクワクしたのは、第3~4章だ。これからのさらなる変化と、業界を巻き込んでいい方向に持っていきたい、ブランドが信じることを行っていきたい、という企業が多く紹介される。

自分たちだけが稼げればいい、成功して売り上げを増やせればいい。そういうストーリーに魅力を感じない人も増えてきているように思う。
実際に、秋服を求めて大型商業施設に入っている店舗をまわったとき、ブランド名のタグと値段は違うけれど、ほとんど同じようなものが多くて、ビビっとくるものに出会えなかった。
”買いたい服がない” そう思ってインスタを開くと、欲しいと思える服が予約終了で売り切れていて、再販の声が多く寄せられていたりする。

誰が選ぶものなのかや、販売員でさえも、商品を”欲しい”と思う動機になり得る。Twitterで好みの女子が立ち寄っていた香水ショップのアカウントをフォローして、実店舗に足を運ぶ。そこで、店員さんの売ろうという下心でなく、商品への想いに触れることができたら私は購入を決める。体験を買っているような気もする。商品のストーリーを知ることができると、ワクワクする。(香水は特殊な例なのかもしれないが…)

そういうことを考えながら、私自身は従来型の考え方よりも、今のほうが好きだし自分に合っているな、と思った。そういう人たちのさらなる企みが楽しみだし、私も乗りたい。形は違っても、今いる業界でそういう動きを担えることができたら最高。

決して暗い話ではなく、これからの未来を見つめる、変わらないために変わる勇気が求められているな、と感じた1冊でした。

『誰がアパレルを殺すのか』杉原淳一・染原睦美 (日経BP社・2015年)

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