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日本経済を分析するためのノート(3)

今回も抽象的・一般的なお話ですが、お付き合いください。
野口氏などが言っている、ITを活用することによって生産効率が上がり経済が活性化するということについてです。
IT技術が生産効率を上げるとよく言われていますし、それが実現されているのは確かだと思います。
しかしIT技術の活用による生産の効率化とはどういうことでしょうか、これを考えてみる必要があります。
それは大きく言えば、①IT技術を活用することによって、販売ルートや原材料の調達先の選定などを効率化できる、②IT技術の活用により生産工程や事務的な労働を自動化・合理化して省力化することができる、といったようなことでしょう。
つまりIT技術とは、流通費用の節約や事務労働の省力化、生産工程の合理化を実現する技術だということです。
ところで問題は、これらは個々の企業には利益の増大をもたらすものですが、マクロ経済的には総需要を減退させる性格のものだということです。ケインズのいう「合成の誤謬」です。
このことを野口氏も指摘してはいます。しかし
「総じて、単純労働や繰り返し作業が自動化されることで、人間が担当していた職種の一部が縮小するが、その反面で、AI技術の開発や運用を担う専門家の需要が増加し、新たな雇用機会が生まれるだろう」(195ページ)
と楽観的な展望を述べるにとどまっています。
だが、果たしてIT化の先に、そんな明るい未来が待っているのでしょうか。
それをこれから考えていきたいと思います。

つづく

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