『日本共産党の百年』読書ノート その15


党の組織と運営の民主主義的な性格~党規約全面改定

『百年』の「第22回大会」(2000.11)の規約改定の部分。

大会では、党の組織と運営の民主主義的な性格をいっそう明瞭にする党規約の抜本的な改定をおこないました。…「前衛」という言葉は誤解されやすい…「上級・下級」という表現はできるかぎり取り除き…民主集中制の内容ををわかりやすくしましました。

『日本共産党の百年』p45ss3-4

大会は、日本共産党と日本社会の関係が大きく変わったことに対応して、党の組織のあり方にあたらしい光をあて、国民にひらかれた党をめざして、党規約の抜本的な改定を行いました。…「前衛」という誤解されやすい用語を削除…党の組織と運営の基本の面でしっかりと土台をすえたものでした。

『日本共産党の八十年』p307

『八十年』の記述は、規約改定提案を簡潔に(簡潔すぎるきらいはあるが)まとめたものとなっている。
一方、『百年』の記述は、そのほとんどが、志位委員長の「日本共産党創立100周年記念講演会・日本共産党100年の歴史と綱領を語る」からの引用である。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-09-19/2022091907_01_0.html

引用自体はかまわないが、ただ、不破議長は、第21回大会7中総や第22回党大会での規約改定提案報告や討論の結語において、自分から「党の組織と運営の民主主義的な性格」という言葉(それに類する言葉も)を用いた説明はしていない。
規約改定の第一の趣旨は「簡潔でわかりやすい」である。

今回の改定の趣旨ですけれども、21世紀を迎える新しい状況のもとで、日本共産党が日本社会のなかではたすべき役割にふさわしく、党規約を簡潔でわかりやすいものにする、このことを主眼として、規約全体を検討いたしました。

第21回大会第7回中央委員会総会・党規約改定案についての報告
https://www.jcp.or.jp/jcp/21th-kaigi/21-7tyuso/2000921_22th_kiyaku_fuwa.html

ただ、大会の「党規約改定案についての中央委員会の報告」のなかで、上りの地方の党会議で「党の組織と運営の民主主義的な性格がいっそう浮き彫りになった」という意見があったと肯定的に紹介している。

第7回中央委員会総会以来の2カ月間の討論のなかで、規約改定案についてはいろいろな議論がありましたが、圧倒的な流れは歓迎の声でした。各段階の党会議で出された意見の中からいくつかの主だったものをあげてみますと、「21世紀に国民とともに新しい日本をきずいていく党の姿が鮮明になった」、「党の組織と運営の民主主義的な性格がいっそう浮き彫りになった」、「一部の闘士のためのものではなく、広く国民を対象にした、日本共産党の規約として強く支持する」、「普通の人をどんどん党に迎え入れなければならない時代、その時代にふさわしい歴史的な改定だとみる」などなど、歓迎の多くの意見が聞かれました。これらの意見は、それぞれ改定案の核心をなす意義を的確に表現したものだと思います。

2000.11.20 第22回大会・党規約改定案についての中央委員会の報告
https://www.jcp.or.jp/jcp/22taikai/201122_22_kiyaku_hokoku.html

重箱の隅だが、「革命の民主主義的な性格」や「民主主義的な性格をもつ綱領」などの用例はよく見るし、党規約で「性格」といえば"労働者階級の歴史的使命を自覚した科学的社会主義の党"のことである。
一方、「党の組織と運営の民主主義的な性格」は、とらえどころがない表現で、不安にさせる。

規約改定で党の民主主義を「発展させた」か、「明瞭にした」か

再度、『百年』の党規約改定に係る記述の冒頭部分を引用する。
あわせて、志位委員長「日本共産党創立100周年記念講演会・日本共産党100年の歴史と綱領を語る」からも引用する。

大会では、党の組織と運営の民主主義的な性格をいっそう明瞭にする党規約の抜本的な改定をおこないました。

『日本共産党の百年』p45s3

…大会での規約改定で、日本共産党と日本社会の関係の新しい発展にそくして、党の組織と運営の民主主義的な性格をいっそう発展させました

2022.9.19 志位委員長「日本共産党創立100周年記念講演会・日本共産党100年の歴史と綱領を語る」
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-09-19/2022091907_01_0.html

さきほど、『百年』の記述は、そのほとんどが、志位委員長の「日本共産党創立100周年記念講演会」からの引用だと言ったが、一カ所だけ字句をさしかえた箇所がある。
「講演」では、規約改定で党の民主主義的性格をいっそう"発展させた"となっているが、『百年』では、"いっそう明瞭に"したとなっている。
旧規約より改定規約がより民主主義的だと認識していれば「発展」と呼ぶし、旧規約時代から民主主義的だったがそれを規約改定で「見える化」したと認識していれば「明瞭」と呼ぶであろう。

以下、不破議長の規約改定提案に係る報告および結語の中身をみていく。
対象とする文書は、
・第21回大会第7回中央委員会総会・党規約改定案についての報告
・第21回大会第7回中央委員会総会・党規約改定案についての討論の結語
・第22回大会党規約改定案についての中央委員会の報告
・第22回大会党規約改定案の討論についての結語

まず、上記4文書では「明瞭」はつかわれていない。
次に、「発展」は4文書すべてでつかわれているが、旧規約に比して改定規約が発展したという文脈でつかわれているものはなかった。

なお、「第22回大会党規約改定案についての中央委員会の報告」のなかで、"よりよいものにする"という意味で「いくつかの規定を前進させた」と呼び、4点の条項をとりあげ、「党の民主的な気風を発揚する一つの力として、おおいに重視し、また活用してもらいたい」と述べている部分があった。

少なくとも、今回の規約改定が、「見える化」しただけではないことは確かなようである。
「見える化」改定の箇所と「前進」改定箇所のどちらが主要な改定なのか、新旧対照表で改定字句をひとつづつ調べれば判断できるだろうが、そこまではしない。
不破議長の報告は、全体として「見える化」改定が主要な改定であると読める。それにならえば、「明瞭」を使うことが妥当であろう。
逆に志位委員長の講演についても、「前進」改定の箇所がいくつかはあるわけで、「発展」を使うことは不正確だとはいえない。
結局、どちらでもよいということになってしまったが、どちらも問題ないのであれば、やはり、なぜわざわざ「明瞭」に変えたのかという理由は分からないままである。

前衛党削除~党規約全面改定

『百年』では、第22回大会での規約改定の箇所で次のように書く。

「前衛政党」という規定については、「前衛」という言葉に込めた「不屈の先進的な役割をはたす」という党の特質を引き継ぎながら、「前衛」という言葉そのものは誤解されやすい要素があるため、規約から削除しました。

『日本共産党の百年』p45s3

「前衛」規定削除を提案する理由は次のとおり。以下は7中総報告。

私たちが「前衛」という言葉で表現してきたのは、実践的には不屈性、理論的には先見性、ここに集中的にあらわされると思います。…この二つが結びついて、日本共産党は、戦前、戦後、日本社会のなかで社会進歩の道を切り開く先進的な役割をはたしてきました。
マルクス、エンゲルスは「前衛」という言葉はいっさい使いませんでしたが、最初の綱領的な文書である『共産党宣言』のなかで、共産党の役割を規定して、なかなか味のある言葉を残していました。実践的には、「もっとも断固たる、たえず推進していく部分」であるという特徴づけ、理論的には、「プロレタリア運動の諸条件、その進路、その一般的結果を洞察している点で、残りのプロレタリアート大衆に先んじている」という特徴づけです。これは、不屈性と先見性を独特の言葉で表したものだと読めます。
私たちは、これまで、こういう意味で「前衛政党」という言葉を使ってきたのですが、…私たちが、党と国民との関係、あるいは、党とその他の団体との関係を、「指導するもの」と「指導されるもの」との関係としてとらえているのではないかと見られる誤解であります。

2000.9.19 第21回大会第7回中央委員会総会・党規約改定案についての不破委員長の報告
https://www.jcp.or.jp/jcp/21th-kaigi/21-7tyuso/2000921_22th_kiyaku_fuwa.html

「前衛」を削除する理由。続いて、大会への中央委員会報告から。

この規約改定案は、マルクス、エンゲルス以来の共産党論あるいは労働者党論をふまえ、それを現代日本的に展開したものであり、科学的社会主義の大道にたったものであります。改定案は、「前衛政党」という規定をとりのぞいたことが一つの特徴として注目されましたが、「前衛政党」の規定も、この事業の歴史のなかでみれば、一時期にあらわれた規定であって、科学的社会主義の事業とその共産党論、労働者党論の、最初からの本来のものではありませんでした。そのことは、七中総の報告でも指摘したところであります。
私はいま、科学的社会主義の現代日本的な展開といいましたが、もともとこの理論は、人間の考えや行動を、時代をこえた固定的な枠組みにはめこもうとするものではありません。歴史的な条件の変化や人間知識の進歩に応じて、不断に発展することを特質とするものであり、そこに科学的社会主義の理論の生命力があります。

  2000.11.20 第22回大会・党規約改定案についての中央委員会の報告
https://www.jcp.or.jp/jcp/22taikai/201122_22_kiyaku_hokoku.html

上記のとおり、「前衛政党」という用語の削除理由は、"前衛は不屈性・先進性を意味するので後者を使う。指導・被指導と誤解を受けないようにするため"である。
用語を使わないだけで、その内容は継続させるということである。
そうであれば、以下の定式化は、現在もなお有効なのだろうか。
・科学的社会主義の認識論からは客観的真理は一つなので、一国の変革の路線は客観的には一つである。
・ゆえに、真理追求の具体的なアプローチのための集団をいくつもつくる必要はない。
・認識論からみても、労働者階級が団結しなければ解放闘争に勝利しえないという点からみても、一つの国の革命の責任を担うのはその国の一つの前衛党、一つの科学的社会主義の党である。
・すなわち、戦略や路線を異にする複数の革命政党があったり、革命政党内に分派が存在したのでは、国内の労働者階級の団結がおぼつかない。
(上記定式の出典論文等は、前述「外国諸党との関係、一国一前衛党論、不当美化論」
https://note.com/aikawa313/n/nc47f21c0acd2#5c3eb768-514b-4c81-84b9-0cf8f23678f3  
を参照)

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つづく

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