戦争法廃止国民連合政権(反戦争法統一戦線政府)の性格。
『百年』の「戦争法(安保法制)反対の国民的闘争と市民と野党の共闘の発展」の項。
『百年』は、戦争法採決直後の「国民連合政権」提唱について次のように書く。
当初提案した「国民連合政府」は、“戦争法廃止、立憲主義を取り戻す”という一点での合意を基礎にした政府で、暫定的なものであった。
「国民連合政府」は、綱領上は、民主連合政府に至る前の段階での、「さしあたって一致できる範囲」での統一戦線での政府という位置づけである。
「さしあたって政府」は、以下の志位委員長の発言のとおり、共産党は、過去に何度も提唱してきた。
戦争法廃止の選挙協力(反戦争法統一戦線の選挙方針)
選挙協力については方針を「大胆に発展させた」と『百年』は書く。
共産党は、国民的緊急重要課題が明白であれば国政の基本問題での違いは保留して選挙協力する、とのあらたな統一戦線の選挙方針を表明した。
従来から共産党は、選挙協力には基本政策の一致が必要と言ってきた。以下は、1973年の党見解、2000年の志位委員長インタビュー、2014年総選挙でのweb記事。
過去の「さしあたって暫定政府」の提唱の際は、選挙協力をどう考えていたのだろうか。現実の政治問題としては受けとめられなかったので選挙協力にまで言及する必要はなかったのかもしれないが、よく分からない。
1998年8月の不破委員長の「日本共産党の政権論」インタビュー。
つぎの総選挙では、野党どうしで競り合うことを前提にしており、選挙の結果、野党が多数になれば、そこではじめて政権協議をし、その政権の政策は選挙結果にかかってくる、と述べている。
当時の政治情勢から選挙協力はありえない状況だったのであろう。
最後に。『百年』は「戦後一貫して」と言い切っている。9.19「よびかけ」では「これまで」と言っている。
1948年頃の社共合同戦術の時代の実際までちゃんと調べて書いたのか気になるところだ。
反戦争法国民連合政府段階での「自衛隊活用・安保5条共同対処」
志位委員長が2015年10月15日の記者会見で、"戦争法廃止の連合政権下で、急迫不正の主権侵害等があった場合は自衛隊活用する。武力攻撃があった場合は安保条約5条で米軍と共同対処する"旨を表明した。
しかし、『百年』にはこれに関する記述が見当たらない。
同月29日の記者会見で、戦争法反対国民連合政権における自衛隊活用や安保5条による対処は、十数年前の党の決定にもとづくものだと志位委員長が回答している。
「安保5条共同対処」については、従来から「さしあたって暫定政権(旧綱領では「よりまし暫定政権」)」では安保条約を「凍結する」としてきたことの踏襲であり、それを敷衍したものにすぎないので、記述は不要ということなのであろう。
しかし、「安保5条による共同対処」を明言したのははじめてではないのだろうか。
参考:前述「日本共産党の政権論」https://note.com/aikawa313/n/n0dffce7cd492#d41a1db9-ab59-4f86-8f51-7fd2a35f5c4d
また、「自衛隊活用」については、第22回党大会(2000年)においてすでに自衛隊活用政策を発表済であるので、新たな発展はないため記述は不要ということなのであろう。
しかし、前述したように、第22 回大会時点から2015年10月までの間、共産党が発表していたのは、自衛隊活用は民主連合政府の段階ということだけでって、「さしあたって暫定政権」段階においても自衛隊活用するとは明言していなかった。
今回の「戦争法反対国民連合政府」は民主連合政府ができる前の第①段階でであり、政策の修正・発展ということになる。
参考:前述「過渡的な時期の自衛隊活用」
https://note.com/aikawa313/n/nbd2d700d8409#67f523a4-8b69-400e-b916-a23c409e52bb
唐突に言い出したかはどうあれ、反戦争法統一戦線政府の安保政策に係る重要論点であり、『百年』に記述すべき事柄であろう。分量を理由に省いてよいものではないだろう。
"政府としては合憲・党としては違憲"は「民主的な連合政権」段階だけか
2017年10月、共産党が参画する政権での自衛隊の憲法判断についての方針を変更した。
『百年』の記述は次のとおり。
2017年10月党首討論での志位委員長の発言は以下のとおり。
志位委員長が「私たちが参画する政権が…できた場合」と言っているにもかかわらず、『百年』は「日本共産党が参加する民主的な連合政権ができた場合」と書いてしまっている。
周知のとおり、「民主的な連合政権」とは、民主連合政府の別名である。
当然だが、共産党が参画する政権ということは、民主連合政府の場合も、さしあたって暫定政権(戦争法反対国民連合政府)の場合も、両方とも、"政府としては合憲・党としては違憲"との立場をとるのである。
<2023.9.4追記>
「『民主的な連合政権』とは、民主連合政府の別名である」と書いたが、志位委員長が2022年4月に、「緊急の課題での野党連合政権」や「民主連合政府」などの全体を含むものとして、「民主的政権」という用語を使っていた。ただ『百年』にように「民主的な連合政権」とは志位委員長は言ってない。
第21回大会中央委員会報告でも「民主的政権」という用語が使われていたが、民主連合政府の意で使われている。
<追記ここまで>
ちなみに、2017年10月以前の従来見解を確認しておく。
志位和夫『綱領教室第3巻』(2013.6)より引用する。なお、2022年4月現在『新・綱領教室』が刊行されこの部分は訂正されている。
限定的な閣外協力
あとで書くつもり
「その17」(↓のリンク先)に書きました。
おわり
気が向いたら追加していきます
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