『日本共産党の百年』読書ノート その11


湾岸戦争は帝国主義戦争ではない

『百年』の湾岸戦争の部分。

党は(91年)3月、湾岸戦争にかかわる諸問題を全面的に解明した論文「国際政治は湾岸戦争から何を教訓にすべきか」を…発表する…

『日本共産党の百年』p40s1

とあるがその論文の内容の記述がない。
『七十年』では

(論文は)湾岸戦争を帝国主義戦争といわない根拠として、①戦争参加国にそれぞれの思惑や問題があったとしても、中心目的にイラクのクウェートからの撤退をかかげ、目的の達成によって戦争が基本的に終了したこと②国連による戦争ではないが形式上国連決議により、国連の支持のもとにおこまわれた戦争であったことあげ、世界史上、「類例をみない、きわめて特殊な性格の戦争」と特徴づけた。

『日本共産党の七十年』p396

ストレートに言うと次のようになるようだ(共産党の見解ではありません)。

このとっさの事態に共産党は適切に対応できた…。(在沖米軍は)湾岸地域に出動していきましたが、それまで米軍出動に必ず反対していた共産党は、このとき、黙認する対応をとりました。湾岸戦争の開始に当たっては、アメリカの戦争に反対することはせず、イラク軍をクウェートから撤退させるという目的を達成し、早期に終了することを望むという態度をとった

松竹伸幸『不破哲三氏への手紙』 p87

9条を将来にわたって守り生かす政策への転換

『百年』の第20回党大会(1994年)の部分。
従来の中立自衛路線を改め、「9条を将来にわたって守り生かす」政策への転換をする。侵略にたいしては警察や自警組織で対応するとした。

憲法9条は…将来にわたってこの条項を守り、生かす立場をあらたに明確にしました。
…日本が独立・中立の道をすすみだしたさいの安全頬章にについて、中立に本の主権侵害を許さない政府の確固とした姿勢と、それを支える国民的団結を基礎に、急迫不正の主権侵害にたいしては、「警察力や自主的自警組織など憲法9条と矛盾しない」措置をとることを明らかにしました。

『日本共産党の百年』p41s3

憲法9条にしるされたあらゆる戦力の放棄は、綱領が明記しているようにわが党がめざす社会主義・共産主義の理想と合致したものである。

第20回大会決議(『前衛』1994.9臨時増刊 p77)

従来の「中立自衛政策」は次のとおり。

民主連合政府は、第9条で戦力を禁止した現行憲法のもとで、非同盟・中立による平和な世界の実現のために努力します。そのさい、万一、中立日本にたいして急迫不正な侵略がおこるなら、無抵抗でそれに屈服して、民族の屈辱と国民の自由抑圧を甘受するのではなく、主権国家固有の自衛権を生かして、国民の団結を基礎に「可能なあらゆる手段を動員」してたたかいます。
あわせて、「独立国として自衛措置のあり方をどうすかについて、国民的な検討と討論」(「80年代をきりひらく民主連合政府の当面の中心政策」)をはじめます。
将来の独立、民主の日本の段階では、そのときの国際情勢にもよりますが、国民の総意で最小限の自衛措置がいるということになれば、憲法上の扱いを含めてその具体的措置をとる必要がでてくるでしょう。もちろん、憲法は、「万古不易」ではなく、社会の発展とともに発展していくものです。

「独立、平和、中立、自衛の政策ー日本共産党がめざす真の安全保障の道」(赤旗1980.10.7-8・『日本の安全保障への道: 日本共産党の独立、平和、中立・自衛の政策』p128)

『百年』では続けて次の記述がある。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                

(20回大会当時は)憲法9条と自衛隊の矛盾をどう解決していくか、その道筋についてはまだしめされておらず、この点は第22回大会(2000年)で解明される

『日本共産党の百年』p41s3

「道筋」とは自衛隊解消に向けての3段階のことだろう。

なお、『八十年』(2003.1刊行)には、第20回党大会での「9条を将来にわたって守り生かす」政策についての記述はなかった。

「総与党化体制の崩れ」の記述が見当たらない

『百年』に「98年参院選での歴史的躍進と『総与党化』体制の崩れ」という項がある(p42s5)が、本文中に"総与党化体制の崩れ"に関する記述がない。
『八十年』には「十数年つづいてきた『日本共産党をのぞく』という異常な体制がくずれはじめ」たとの記述があった(p299)。

日本共産党の政権論

『百年』。日本共産党の政権論について。
安保条約への立場の違いは連合政権の障害にはならない、と不破委員長が表明。
『八十年』では数行だった(p299)が、『百年』では数倍の分量の記述になった。それだけ今日的に重要視されているということか。

98年8月、党は…「日本共産党の政権論について」 を発表しました。
日本共産党は民主連合政府という目標を一貫して追求しているが、…政局を民主的に 打開する政権構想を積極的に追求する立場に立っていることをしめしました。
そして政党間の共闘について、…国民の利益にかなう当面の一致点で力をあわせることができるという基本的な共闘の論理を強調し、日米安保条約に対する立場の違いや社会主義へすすむという将来の社会像が、連合政権の障害とはならないことを明らかにしました
安保条約については、党としては 安保廃棄の立場で主張し 運動にもとりくむが、連合政権としては、①現在成立している条約と法律の範囲内で対応する、②現状からの改悪はやらない、③政権として廃棄をめざす措置は取らないという対応をとることになると表明しました。

『日本共産党の百年』p42s7

「政権論」を、不破委員長のインタビューから引用する。
要点は、
民主連合政府の前の段階で、
安保条約を凍結したうえで、
・緊急課題での一致点での政策協定を結び、
・重要な点で自民党政治の転換をする、
「よりまし」な暫定政権を積極的に追求する、ということである。
そして、そのような暫定政権の提唱を70年代から行ってきた、ということである。

…大事な点は、わが党は、民主連合政府という目標を一貫して追求しているが、…その局面の状況に応じて、選挙管理内閣とか暫定政権――これは「よりまし政府」ともよんできましたが――など、政局を民主的に打開する政権構想をも積極的に追求するんだ、という点にありました。

…1974年10月でしたが、自民党内での政権たらいまわしでなく、腐敗政治に反対する全議会勢力によって選挙管理内閣をつくることを提唱しました。
…(76年4月)、私たちは、小選挙区制粉砕、ロッキード疑獄の徹底究明、当面の国民生活擁護という3つの緊急課題で「よりまし政権」をつくろうではないか、という暫定政権構想を、当時の宮本委員長の提唱で提起しました。これは、緊急の三つの課題で実際の改革的な措置をやろうという提起ですから、選挙管理内閣よりも、さらにすすんだ問題提起でした。この時、広範な勢力の合意をはかる前提の条件として、安保条約の問題などでの見解の相違は保留するという立場を明らかにしました。

…安保廃棄論者と安保維持・堅持論者のあいだの連合政権ということになります。
…安保条約の問題を留保するということは、暫定政権としては、安保条約にかかわる問題は「凍結」する、ということです。つまり安保問題については、(イ)現在成立している条約と法律の範囲内で対応する、(ロ)現状からの改悪はやらない、(ハ)政権として廃棄をめざす措置をとらない、こういう態度をとるということです。…

…細川内閣にしても、村山内閣にしても、最大の問題は、それが、自民党政治の枠のなかで自民党政治をうけついだ政権、ただその担い手だけを変えた政権だったというところにありました。
私たちが問題にしている暫定政権は、第一に、少なくともいくつかの重要な点で、国民の要求を実現するために自民党政治の枠を突きやぶる政権、そういう意味で、自民党政治からの転換の大きな一歩をふみだす政権です。
第二に、…暫定政権は、…新しい政権にわが党が参加する場合は、この政権は、国民の利益にたって、自民党政治のここをこう変えるんだという明確なプログラム、政策協定をもって生まれる内閣となります。
…第三に、政党の態度という問題です。私たち日本共産党は、合意が成立して政権に参加するときには、政策協定の合意事項の全面的で積極的な実施のために、力をつくします。それは、その分野で、国民の立場で自民党政治を変えてゆくということです。

…また、安保問題を、政権として留保する、「凍結」するということは、まだ国民的な条件の熟していない段階に成立した政権として、安保問題の根本解決を将来にもち越すということです。日本共産党として、安保条約廃棄という方針を凍結するということではありません。…社会党の場合には、この基本態度が根本的にちがっていました。

…(綱領[当時は61年綱領ー引用者注]では、)「党は、アメリカ帝国主義と日本独占資本の支配を打破していくのに役立つ政府の問題に十分な注意と努力をはらう」。これは、いいかえれば、自民党政治を打ちやぶってゆくのに役立つ政府ということで、これは、いろいろな条件のもとで、さまざまな形で問題になるだろうが、よく注意して対応しよう、ということです。選挙管理内閣、暫定政権などは、大きくいえば、綱領のこの文章に対応する性格の政権です。

日本共産党の政権論について不破哲三委員長に緊急インタビュー
https://www.jcp.or.jp/jcp/yakuin/3yaku/FUWA/fuwa-iv-0825.html


つづく

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https://note.com/aikawa313

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