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Open Lab 2024 を終えて

はじめに


2024年2⽉24⽇(⼟)

株式会社ビビビット様の会場を借り、安武研究室+未来デザイン研究会のオープンラボが今年も始まった。

オープンラボとは、安武研究室の4年と、自主活動の研究会の3年~1年がおよそ1年間の中で活動してきた成果を報告する場である。

2022年にオンラインで開催した「終わらないものがたり」、2023年に久々の対面で開催した「あいまいさを見つめる」、そして2024年の今回は「社会化のじかん」というタイトルを引っ提げ、静岡という土地から都心へと身を向かわせた。

「もう当日なんだ」

研究会のメンバーは口々に今日という日を迎えた実感の無さを痛感する。ちょうどよく快晴だったこの日は、その降り注ぐ日の光が、およそ1ヶ月に及んだ準備が実を結ぶことを応援しているようだった。

準備から当日の展示までは、研究会に所属する1~4年で行う。

初めてのオープンラボという場に、緊張しながらも目を輝かせ楽しそうな様子の1年生。
昨年と同じ会場に「懐かしい」と笑いながら、去年よりも遥かに頼もしい様子の2年生。
中心的に準備を行い、何としてでも学びを持って帰ろうとギラギラした様子の3年生。
これまでの豊かな経験でオープンラボ全体の品質を高め、最後のオープンラボにも冷静な様子の4年生。
そんな私たちを総括し、厳しくも優しく見守る先生。

18名がそれぞれの思いを携えながらも、「成功させたい」という共通の思いでつながり、この日を迎えた。

開場直前

「現場において、計画通りに行くことの方が少ない」と先生がよく言う言葉を、例外なく今回も痛感しながら準備を進めた私たち。

忙しなく準備をしていたら、もう開場直前。途端に少しピリピリとした緊張が走っていたように思う。

定位置を確認中

いよいよ開場

会場ではいくつもテーブルが点在し、そこで対話が楽しめるようになっている。

これまでの研究を自分たちなりの言葉で伝えようとする私たちに対し、真剣に耳を傾け、頷き、熱い言葉をくれる来場者の皆さん。

少しの緊張の中で始まった会場は、お越しくださった沢山の来場者の方々と共に自然と熱を帯び、対話をすることで場が”溶け出していった”ように思う。

楽しげな声と笑顔、真剣な眼差しと身振り手振り、白熱する議論と新たに生まれる自分の中の問い。
そこにあったのは、学生と来場者、という関係性だけではない、お互いに学びあう関係性だったのかもしれない。

私たち研究会では、人や生活そのものを丸ごと捉えようと、粒度高く見つめることを大切にしている。
産業の世界ではこぼれ落ちてしまうかもしれない、身近な幾つもの小さなものごと。
それらを、自ら現場に飛び込んで、丁寧に見つめようとし続ける研究会の活動を、多くの方々に賞賛いただけた。

「こうして”帰る場所”があると、安心する」という卒業生の方の言葉。
それはとても衝撃だった。なぜならオープンラボが私たちにとっての「学びの場」だけではなく、その方にとって「自分を取り戻せる場」でもあるのだと知ったからだ。

一方通行ではない、デザインの学びを真ん中に据えた、くるくると温まっていく場はなんて尊いのだろう。
それもこれも、来場してくださった方々含め、多くの応援してくださる方々の存在があってこそだと痛感する。
また、代々”未来デザイン研究会”という場所を受け継ぎ、ひとつひとつ積み重ねてきた歴代の先輩方の存在が、私たちをこの場所に導いてくれた。

言葉にしきれない思いと共に、これからの1年間に対する熱が脈々と高まっていくのを感じる。

私の発表

憧れの先輩方との対話

また、私個人として、どのような学びを得られたのかというお話もできたらと思う。
私は「地域包括ケアシステム」をテーマとした、3年後期の授業でのプロセスを発表した。

提案物を大々的に載せるのでは無く、どのような紆余曲折があったのかといった「プロセス」をメインにしたのは、私が授業後に感じた「出来上がった成果よりもその過程が大切である」という実感からだ。

実際、このプロセスを経て一番大きな成果だったと感じたのは、提案そのものではなく、私がボランティアとして現場に飛び込んた”子ども食堂”さんとの関わりが今も続いていること自体に対してだ。

授業として始まったひとつのプロジェクトはそこで終わらず、わたし自身のプロジェクトに昇華した。
これは、決められた計画や、ありきたりな手法、他人事の出発点、の上では成し得なかったことだと思うのだ。

来場者の方々は、そんな私の言葉に強く頷いてくださり、熱を纏った幾つもの言葉を送ってくれた。
「プロセスが決められていないからこそ、本来あるべき自然な流れができている」
「ここで気づいたことは、これから必ずつながっていくね」

展示パネル

また、対話を重ねる中で時に重要だと思ったことが2つある。

一つ目は「ただ単に子ども食堂に関わり続けるだけではない、”デザインを学ぶ学生”としての意識」についてだ。
事前に、「ボランティアとして今後関わり続けるにあたって、大切にしたい態度や視点とは何だろう」という問いを持っていた私に対し、「事前調査の徹底とシュミレーションの大切さ」についてのフィードバックを頂いた。
自分の中で仮説を立て、それをもとに毎回ちょっとした試みをしてみることで「関わり続ける中で見えてくる」を目指してみたいと思う。

二つ目は「見えてくる沢山の課題を全て解決しようとせず、本当の課題とは何か?を問い続けることの大切さ」についてだ。

実際に参加する中での体感として、取材をした生の声を聞く中で、私の中で授業が始まった当初よりも多くの課題と思われる事象が浮き彫りになっていった。

正直に、私が授業の中で提案したものというのは、”本当にフォーカスを当てるべきところ”のど真ん中を捉えたものだとは確信が持てていない。対話を通して、発散は多く行ったが収束がまだまだ足りないことを自覚した。

「生活を見つめ、そのまま受け取る」ことの尊さを抱きながら、どうしたらそれらを収束させ、創造性を持って社会に結びつけられるのだろう。
私の中にあった問いがより明確になると同時に、今後の研究を進める道標を確かに得たように感じる。

今後は、広く俯瞰し分断ではなく包括的に物事を捉えようとする視点と、細部まで観察するスケッチのように、小さく丁寧に描く視点の往復を意識し、人の暮らしや生涯の豊かさに資するデザイン活動をしていきたい。

おわりに

昨年に引き続きオープンラボに参加できたことは私にとって大きな出来事だ。

この時期、誇らしさも、悔しさも、向上心も、未熟さも、多くの感情に揺さぶられ、新しい気づきを得られることが凄く嬉しく、自分には勿体ないほどに感じる。

このオープンラボに参加できたこと、研究会に所属できていること。
自分の立場や置かれている環境に驕らず、これからは目の前のことに全力に、頑張っていきたい。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました🌱

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