DX推進に必要なセキュリティ対策とは?データを守る方法と実際の事例を解説
「DX推進に必要なセキュリティ対策とは?」
「データを守るためには、何をすればいい?」
今やどの企業にとっても、セキュリティ対策は必要不可欠です。特にDXを進めていくうえでは、扱うデータも増えるため、サイバー攻撃の標的になるリスクも高まります。
万が一、データの漏えいが起こってしまうと、企業イメージの低下に加えて経済的な損失をもたらす可能性もあります。適切なセキュリティ対策を行い、自社のデータを未知の脅威から守れるようにしましょう。
本記事では、セキュリティリスクと実際の事例、セキュリティ対策のポイントなどを解説します。最後には具体的なセキュリティ対策の方法も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
DX推進とセキュリティの関係
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業がビジネスプロセスをデジタル化し、新たな価値を創造するための取り組みです。しかし、このDX推進には、セキュリティが密接に関連しています。
そこで、DX推進とセキュリティの関係を下記2つの視点から解説します。
DXにおけるセキュリティの重要性
セキュリティに求められる新たな視点「eXtend」
デジタル化が進むことで、データの取り扱いが増え、それに伴いセキュリティリスクも増大します。DX推進とセキュリティの関係性を押さえておきましょう。
DXにおけるセキュリティの重要性
DXを成功させるためには、セキュリティが不可欠です。新たな技術の導入は、ビジネスの効率化や新しいビジネスモデル創出の可能性を拡げますが、同時にサイバー攻撃のリスクも増大します。
データ漏えいやシステムダウンなどのセキュリティインシデントが発生すると、企業の評判低下や業務停止など、大きな損害をもたらす可能性があります。そのため、DX推進と同時に、適切なセキュリティ対策を講じる必要があるのです。
セキュリティに求められる新たな視点「eXtend」
DX時代のセキュリティには、従来の防御的な視点だけでなく、新たな視点「eXtend」が求められます。これは、セキュリティ対策を「拡張」し、組織全体で取り組む必要があるという考え方です。
「eXtend」の考え方には、下記の3つがあります。
今後は、これらの視点を踏まえたセキュリティ対策が求められます。非IT企業でもサイバー攻撃のターゲットとなるリスクは十分にあるため、押さえておきましょう。
DX推進における5つのセキュリティリスク
DX推進を進めるうえで、セキュリティリスクが生じることは避けられません。ただ、どのようなセキュリティリスクが潜んでいるのかを知れば、対策方法も見えてきます。
DX推進における主なセキュリティリスクは、下記の5つです。
データ漏えい
サイバー攻撃
システムの脆弱性
不適切なアクセス制御
コンプライアンス違反
それぞれにどのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。
①データ漏えい
データ漏えいが起こると、企業の信頼と評判を大きく損なってしまいます。DX推進にあたって扱うデータが増えてくると、データ漏えいのリスクも増加するため、注意が必要です。
特に、顧客情報や財務情報、知的財産など、企業が保有する重要なデータが外部に漏えいすると、法的な問題に直面する可能性もあります。
東京商工リサーチの調査によると、情報漏えい・紛失事故の件数は年々右肩上がりで上昇しており、2022年に最多件数を記録しています。
データ漏えいは外部からの不正アクセスや、内部のヒューマンエラーによって起こるケースが多いです。対策を講じていてもデータ漏えいのリスクは常にあるため、注意しましょう。
②サイバー攻撃
サイバー攻撃による主な被害として、ネットワークを介してデータの窃取や改ざん、暗号化などが挙げられ、企業にとって重大な脅威となります。主なサイバー攻撃は、下記のとおりです。
サイバー攻撃は企業の業務を大きく妨げ、経済的な損失をもたらす可能性があります。そのため、適切なセキュリティ対策が必要です。
③システムの脆弱性
新たなデジタル技術の導入により、システムの脆弱性が発生する可能性があります。脆弱性を放置すると、攻撃者がシステムに侵入し、データを盗むための入り口となってしまうため、早急な脆弱性の対策が必要です。
システムの脆弱性が発生する原因としては、ソフトウェアのバグや設定ミスなどがあります。基本的にはソフトウェアのアップデートで対応できるため、欠かさず行うようにしましょう。
④不適切なアクセス制御
不適切なアクセス制御は、内部者によるデータ漏えいや不正行為を引き起こす可能性があります。例えば、従業員が必要以上のアクセス権を持っていると、その従業員がデータを不適切に使用したり、第三者に漏えいしたりするリスクがあります。
不必要なデータへのアクセス権限が管理されていないのは、万が一のことがあれば故意でなかったとしても従業員にとって大きな過失となるため、負担になります。対策としては、アクセス権を細かく設定し、重要なデータは必要最低限のメンバーだけアクセスできるようにしておきましょう。
⑤コンプライアンス違反
DX推進により、企業はデータの扱い方に関するコンプライアンスに対応しなければなりません。例えば、企業のデータをUSBなどに移し、社外へ持ち出すことは一般的にコンプライアンス違反とされます。
また、先述したデータ漏えいもコンプライアンス違反となり、企業の信用を低下させてしまいます。
コンプライアンス違反は従業員へ認識が行き渡っていない場合に起こりやすいため、教育するなどして認識・事例の共有をしておくといいでしょう。
実際に起きたセキュリティインシデントの事例3選
DX推進にはセキュリティリスクがつきものです。実際の事例を知ると解決策も見えてきやすいため、把握しておきましょう。
紹介する実際に起きたセキュリティインシデントの事例は、下記の3つです。
ECサイトへの不正アクセス
米国IT企業へのサプライチェーン攻撃
製造業・自動車部品メーカーのランサムウェア被害
それぞれどのように問題が発生してしまったのか、詳しく見ていきましょう。
ECサイトへの不正アクセス
2022年、国内の大手ECサイトが不正アクセスの被害に遭いました。このとき、顧客の氏名や住所、口座情報などのデータ約270万件が漏えいした可能性が判明しました。
調査したところ、不正なリクエストに対しても、反応してしまうシステムの脆弱性が原因でした。これを受けて、被害を受けたECサイトの運営会社は、定期的な脆弱性診断の実施や監視体制の強化といった対策を行いました。
結果的にこの事案で、データの不正利用などの被害は確認されなかったものの、少なからず企業の信頼を低下させる出来事になってしまったのは間違いありません。
このケースは、システムの脆弱性に対する対策が施されていなかったことが原因と考えられます。システムの脆弱性は放置すべきでないと言えるでしょう。
米国IT企業へのサプライチェーン攻撃
2020年、米国の大手IT企業がサプライチェーン攻撃の被害に遭いました。この事例では、攻撃者が企業のソフトウェア開発プロセスに侵入し、そのソフトウェアの更新プロセスを通じてマルウェアを仕込んでおいたのです。この攻撃により、約18,000の企業が被害に遭いました。
なんと、侵入はかなり前から行われていたそうですが、攻撃者は同社が展開するサービスが広まるのを待って攻撃を開始したそうです。この潜伏期間中に感知できていれば、未然に防げたかもしれません。
サイバー攻撃の危険性は身近に潜んでいると思い知らされるとともに、大きな被害を生まないためにも日ごろからセキュリティ対策は欠かせないと感じる事例です。
製造業・自動車部品メーカーのランサムウェア被害
2022年2月、自動車部品を製造する企業がランサムウェア被害を受け、その影響で国内有数の大手自動車メーカーの操業が停止する事態にまで発展しました。
攻撃のきっかけは、部品製造企業である子会社のリモート接続機器(VPN装置)の脆弱性でした。子会社が外部から不正アクセスを受けたことをきっかけに親会社のネットワークにも侵入され、ランサムウェアによってサーバやパソコンの一部でデータが暗号化、その後利用できなくなってしまったのです。
この事例は、セキュリティ対策が手薄な関連企業や取引先企業を経由して侵入する「サプライチェーン攻撃」の典型例といえます。部品製造企業がランサムウェア被害により操業できなくなったため、部品の納品先である大手自動車メーカーの工場も一時操業停止という事態となりました。
このような事態を防ぐためには、企業全体でのセキュリティ対策の強化が必要であり、特にリモート接続機器などのセキュリティ対策が重要となります。国内でもサイバー攻撃への対策は必須と感じられる事例です。
DX推進において重要なセキュリティへのアプローチ
DX推進にあたりセキュリティ対策を考える際、知っておいた方がいいアプローチがあります。
DX推進において主に重要なセキュリティへのアプローチは、下記の3つです。
ゼロトラストセキュリティ
エンドポイントセキュリティ
SASE
適切なセキュリティ対策を施すため、それぞれの内容を把握しておきましょう。
1.ゼロトラストセキュリティ
ゼロトラストセキュリティは、ネットワーク内部・外部問わず、すべてのユーザーやデバイスを信頼しないという原則に基づく考え方です。現在、テレワークも普及しており、さまざまな場所やデバイスからシステムにアクセスすることが普通になっています。
そのため、社内の人間だから安全、社内のシステムだから安全と判断するのではなく、すべてのユーザーやデバイスに対してアクセスするたびにその身元を証明し、必要な権限を持っていることを確認していきます。
これにより、外部からの不正アクセスはもちろん、内部からの脅威を防ぐことにつながります。
2.SASE
SASE(Secure Access Service Edge)は、2019年にガートナー社が提唱したネットワークセキュリティモデルを指します。SASEはネットワークとセキュリティをクラウド上で完結させることで、セキュリティを強化させる新しいアプローチです。
社内外問わずアクセスに対する認証を行うべきという考え方はゼロトラストセキュリティと同様ですが、SASEはクラウド上で完結させることで利便性も確保します。
クラウドサービスを安全に使うためには、必要な考え方と言えるでしょう。
3.エンドポイントセキュリティ
エンドポイントセキュリティは、企業ネットワークに接続されているすべてのデバイス(エンドポイント)を保護することを目指す考え方です。これには、パソコンやスマートフォン、タブレットなどが含まれます。
従来は、重要なデータは社内に保管されているケースが一般的だったため、ウイルス対策ソフトなどで、社内ネットワークを保護していました。
しかし、現在はクラウドサービスも普及してきており、社外に重要なデータが保管されているケースも増えました。そのため、この「エンドポイントセキュリティ」の考え方が重要になってきます。
デバイスの監視やアンチウイルスソフトの導入など、エンドポイントであるデバイスを保護すると、被害を最小限に食い止めることにつながるのです。
DX推進におけるセキュリティ対策の3つのポイント
DX推進においてセキュリティ対策を進めるうえでは、いくつかポイントがあります。DX推進におけるセキュリティ対策のポイントは、下記の3つです。
組織全体で意識を統一する
IT人材の獲得・成長を進める
ツールを導入する
このポイントを押さえておけばセキュリティ対策を効率的に進められるため、把握しておきましょう。
(1)組織全体で意識を統一する
セキュリティは技術だけでなく、ヒューマンエラーなど、人間の行動にも大きく依存します。そのため、組織全体でのセキュリティ意識の統一が重要です。
これには、定期的なセキュリティ研修や、セキュリティポリシーの明確な共有が効果的です。万が一、セキュリティに関する問題が発生した場合には、その原因を分析して社内に共有しましょう。同じ問題が起こりづらくなるとともに、従業員一人ひとりのセキュリティレベルの上昇につながります。
(2)IT人材の獲得・成長を進める
セキュリティ対策は、専門的な知識と技術を必要とします。そのため、IT人材の獲得と成長は欠かせません。常に変化するセキュリティトレンドや、新たなサイバー攻撃に対応できるように人材を確保しましょう。
方法としては、ITスキルを持つ人材の採用や社内のIT研修の実施、外部の専門家との連携などが挙げられます。すでにIT人材がいる企業でも、次世代を任せられるIT人材の育成に注力しましょう。
(3)ツールを導入する
最新のセキュリティツールを導入すれば、簡単にセキュリティ対策を強化することが可能です。例えば、最新のマルウェア検知システムであれば、不正なアクセスやマルウェア攻撃を検知し、防ぐ役割を果たします。
また、データ管理ツールであれば、アクセス権をはじめとしたセキュリティ管理が可能です。これにより、セキュリティインシデントが発生したときの対策ではなく、そもそもセキュリティインシデントが発生しないように対策できます。
データ管理ツールなら、「DataShare」がおすすめです。「DataShare」では一人ひとりのアクセス権の設定に加え、2段階認証システムや監査システムがあるため、安全なデータ管理を実現できます。
社内のみならず、社外とデータをやり取りする際にも使えるため、データ管理ツールの導入を検討している場合は、お気軽にお問合せください。
DX推進における具体的なセキュリティ対策の方法5選
最後に、DX推進における具体的なセキュリティ対策の方法を解説します。何をすればセキュリティを強固にできるのかを把握しておきましょう。
紹介する方法は、下記の5つです。
多要素認証
SSO(シングルサインオン)
EDR
CASB
SIEM
それぞれ特徴があるため、詳しく見ていきましょう。
多要素認証
多要素認証は、ユーザーの身元を確認するために2つ以上の認証手段を組み合わせる方法です。
認証手段は、主に下記の3つに分けられます。
多要素認証を導入することで、パスワードだけを盗まれた場合でも、不正アクセスを防げます。比較的簡単に導入できる方法なので、まず何かセキュリティ対策をしたい場合には、多要素認証から検討するといいでしょう。
SSO(シングルサインオン)
SSOは、ユーザーが一度のログインで複数のアプリケーションやサービスにアクセスできるようにする技術です。
いくつもパスワードがあると覚えられないため、簡単な文字列や同じパスワードを使いまわすようになり、結果的にセキュリティレベルが低くなってしまうのはよくある事例です。
SSOを導入することで、ユーザーは複数のパスワードを覚える必要がなくなり、パスワード管理の負担を軽減できます。また、SSOはユーザーのアクセスログを一元的に管理できるため、不正アクセスの検出にも役立ちます。
EDR
EDR(Endpoint Detection and Response)は、エンドポイント(パソコン、スマートフォンなど)に対する脅威を検出し、対応するためのソフトウェアの総称です。
EDRは、エンドポイントにインストールされたソフトウェアが不正な動作を行っていないかをリアルタイムで監視し、異常を検出した場合には即座に対応します。
クラウドサービスをよく使用している場合などは、EDRは有効なセキュリティ対策になります。
CASB
CASB(Cloud Access Security Broker)は、企業がクラウドサービスを安全に利用するためのセキュリティ対策です。CASBは、企業のネットワークとクラウドサービスの間に位置し、ユーザーのクラウドサービス利用を監視・制御します。
これにより、不正アクセスやデータ漏えいを防げるほか、シャドーITと呼ばれる企業が許可していないデバイスやサービスを従業員が使用した場合も感知可能です。
SIEM
SIEM(Security Information and Event Management)は、企業のネットワーク内のセキュリティイベントを一元的に収集・分析するソリューションです。SIEMは、ログデータをリアルタイムに分析し、異常なパターンを検出します。
これにより、セキュリティインシデントの早期発見と対応が可能になり、被害を最小限に抑えられます。また、SIEMは、セキュリティインシデントの原因分析や再発防止策の策定にも役立ちます。
SIEMは、被害を未然に防ぐことではなく、被害を最小限に抑えることに注力している点がポイントです。
セキュリティ対策を怠ることなくDXを推進していきましょう
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、企業が競争力を保つために必要不可欠な取り組みです。しかし、新たな技術を導入することで、新たなセキュリティリスクが生じる可能性もあります。そのため、DXを推進すると同時に、適切なセキュリティ対策が必要です。
セキュリティ対策は、単なるコストではなく、ビジネスの成功を支える重要な投資です。セキュリティインシデントが発生すると、企業の評判はもちろん、ビジネスの継続性にも影響を及ぼす可能性があります。
一方で、適切なセキュリティ対策ができれば、企業は安心して新たな技術を導入し、ビジネスの可能性を広げられます。また、顧客やパートナー企業からの信頼も得られるでしょう。
効果的にセキュリティ対策を行うには、組織全体でのセキュリティ意識の向上やIT人材の育成、最新のセキュリティツールの導入など、多角的な対応が必要です。
「DataShare」であれば、一人ひとりのアクセス権を設定できるほか、2段階認証システムや監査システムにより安全なデータ管理が可能です。データ管理のセキュリティ対策として、ぜひご検討ください。
本記事で紹介した方法を参考に、変化に柔軟に対応しながら、セキュリティ対策を怠ることなくDXを推進していきましょう。
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