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【AI革命】中小企業の助け舟!sLLMをどのように導入する?

「sLLM」という言葉をご存じですか?sLLMとは、LLM(大規模言語モデル)に代わるコンパクトな自然言語処理モデルのことです。

簡単に言うと「より開発期間やコストを抑えてAIが導入できるようになる技術」です。そのため、中小企業のAI導入も現実味を帯びてきています。

sLLMは、まさに中小企業の助け舟です。この波に乗り遅れないよう、本記事で理解を深めましょう。

本記事では、sLLMの概要やメリット、具体例を紹介します。中小企業の具体的なsLLMの活用方法も紹介しているので、導入のイメージがつかめるはずです。

中小企業で働いている、AI導入を検討しているという方は、ぜひ最後までご覧ください。

sLLMとはLLMに代わるコンパクトな自然言語処理モデル

sLLM(small Large Language Models)はLLMに代わるコンパクトな自然言語処理モデルのことであり、小さいLLM、小型LLMとも呼ばれています。

そもそもLLMとは大規模言語モデルのことで、大量のテキストデータを用いて学習・トレーニングされた自然言語処理モデルを指します。2024年現在もなお、話題の「ChatGPT」に使われているGPT-4もLLMの一種です。

LLMは大規模言語モデルという名の通り、学習・トレーニングさせるためのデータは膨大で、その分コストもかかっていました。

対してsLLMは「データの量」より「データの質」に重点を置いているため、コストを抑えてコンパクトに運用できるのです。

限られた範囲の運用にはなりますが、コストが低いので、あまりAI開発に予算が割けない中小企業でも導入しやすいと言えます。「ここにだけAIを導入したい」という場合には、まさにsLLMが最適です。

sLLMは中小企業の助け舟として、今後目が離せない新技術と言えるでしょう。

sLLMとLLM(大規模言語モデル)の違い

sLLMは中小企業の助け舟になる可能性がありますが、具体的にLLM(大規模言語モデル)とどこが違うのでしょうか。

sLLMとLLMの違いをまとめると、以下のようになります。

出典:小さいLLM、sLLM(small Large Language Models)とは|AOSデータ株式会社

まとめると、sLLMのほうがサイズはコンパクトでコストは低いのですが、特定の用途やタスクに特化しています。

たとえば、自動応答システムを考えてみましょう。LLMなら公共事業からサービス業まで、どのジャンルでも広く浅く利用できます。

対して、sLLMはどのジャンルでも使えるというわけではありませんが、トレーニングすれば、ファスナーや家庭用蓄電池など、専門的なジャンルの自動応答システムとしても活用可能です。

トレーニングしたジャンルについては、LLMよりsLLMのほうが高いパフォーマンスを発揮する場合もあります。

そのため「特定の一部分にだけAIを導入したい」「試しに低コストでAIを導入してみたい」といった要望には、sLLMが向いているのです。

sLLMの3つのメリット

sLLMには、主に以下3つのメリットがあります。

・開発期間が短い
・開発コストが低い
・レスポンスが早い

それぞれどのようなメリットなのか、一つずつ見ていきましょう。

開発期間が短い

sLLMはLLMに比べ、開発期間を短くできます。これは、sLLMのほうが学習・トレーニングさせるデータの量が少ないためです。

学習させるデータが多ければ、それに応じて開発期間が必要です。しかしsLLMで特定のデータに絞って学習させれば、開発期間を短くできます。

従来のLLMだと開発に数カ月かかるケースも珍しくありませんが、sLLMの場合、数日でトレーニングを完了させることも可能です。

開発期間が短く済めば、効率向上に加え、修正や再トレーニングも簡単にできるでしょう。

開発コストが低い

sLLMは学習・トレーニングさせるデータの量が少なくて済むため、開発コストを抑えられます。一般的には、学習させるデータの量が多いほど、コストがかかります。

しかし、sLLMは学習させるデータがLLMより少ないので、開発コストもLLMより抑えられるのです。

実際に海外では「Alpaca」というsLLMを、iphone14で作動させたという事例があります。構築費用は、なんと「600ドル以下」だったようです。

コストが低く済めば、中小企業はもちろん、個人でも開発できるようになるかもしれません。

レスポンスが早い

sLLMは学習させるデータが少ない分、容量も小さいという特徴があります。そのため、処理速度がLLMより早く、レスポンスが早いのです。

たとえば、ChatGPTには主に「GPT-3.5」と「GPT-4」が使われています。「GPT-4」のほうが多くのデータを読み込んでおり、正確な答えを出しやすいのが現状です。

しかし、レスポンス速度の面で考えると「GPT-3.5」のほうが優れています。これは、学習しているデータが「GPT-4」より少ないため、考慮すべき事柄も少ないためです。

特に、顧客向けにサービスを展開する場合は、レスポンス速度をはじめとしたユーザビリティも非常に重要です。

AI技術を導入するうえで「使いやすい」というのは、大きなメリットになるでしょう。

国内メーカーも参入!sLLMの具体例3選

sLLMはすでに大きな注目を浴びているため、国内メーカーも参入してきています。ここでは、sLLMの具体例として、以下3つを紹介します。

・Microsoft「Phi-2」
・NTT「tsuzumi(つづみ)」
・NEC「cotomi(コトミ)」

それぞれどのような特徴を持っているのか、一つずつ見ていきましょう。

Microsoft「Phi-2」

「Phi-2」は、Microsoftが2023年12月にリリースしたばかりのsLLMです。ただ、sLLMとはいえ27億個のパラメーターを持ち、従来の「Phi-1.5」の13億個からは大きく増加しています。

「Phi-2」は要規模というだけでなく、性能も抜群です。同社によれば、「Phi-2」はパラメーターが130億個以下の言語モデルの中で「最先端の性能」を発揮したようです。

また、最大25倍サイズのモデルの性能に匹敵するベンチマークを見せたとも語っています。MicrosoftはsLLMの価値を見出し、注力しています。これだけの大企業が注目しているとなれば、目が離せないでしょう。

参考:Phi-2: The surprising power of small language models

NEC「cotomi(コトミ)」

NECは2023年12月、sLLM「cotomi(コトミ)」性能強化・拡充することを発表しました。2024年春から本格的にサービスを開始する予定です。

NECによれば、「cotomi(コトミ)」は日本語対話能力の比較評価において、国内外トップクラスのLLM 群を上回る性能を持つと言います。

長文処理能力も30万字まで引き上げられ、法律や医療など、さまざまな専門分野での活用が見込まれています。

参考:NEC、生成AI「cotomi(コトミ)」の強化・拡充と共に生成AI事業戦略を発表

NTT「tsuzumi(つづみ)」

NTTは2023年11月、sLLMである「tsuzumi(つづみ)」を発表しました。提供開始は2024年3月になる見込みです。

コンセプトについては「軽量化と専門性を両立した、パラメーターサイズの小さなLLMの実現」と語っています。

パラメーターサイズは、6億と70億の2つを提供予定。先ほどの「Phi-2」や「cotomi(コトミ)」と比べても、だいぶ軽量です。

とはいえ、性能は世界トップクラスで「GPT-3.5」も上回ったと言います。

また、コスト面でも優秀です。NTTによると、学習コストはGPT-3規模のLLM(約4億7000万円)と比較すると、70億のパラメーターサイズなら25分の1の約1900万円、6億のパラメーターサイズなら300分の1の約160万円と試算しています。

参考:NTT版LLMの概要

これは、中小企業にとってまさに大きな助け舟になるでしょう。

中小企業はsLLMをどのように導入する?

sLLMは中小企業の助け舟として期待が高まりますが、具体的にどのように導入していけばいいのでしょうか。

ここでは、以下6つの導入例を紹介します。

・カスタマーサービスの自動化
・ドキュメント管理の自動化
・データ分析
・マーケティング
・人材管理
・製品開発

sLLMを導入するイメージが湧くため、ぜひ参考にしてください。

カスタマーサービスの自動化

サイズが小規模ながら専門的なジャンルに特化させやすいsLLMは、カスタマーサービスで利用できます。チャットボットや自動応答システムとして導入すれば、顧客満足度の上昇に貢献するでしょう。

簡単な質問に答えられれば、従業員の負担が減り、空いたリソースを他のことにつぎ込めるようになります。

書類管理の自動化

発注書や契約書など、大量の書類を扱う業種もあるでしょう。データ化できていても管理が大変なのではないでしょうか。

sLLMを導入すれば、大量の文章データを一瞬で分析可能です。そうすると、契約書の重要な部分を瞬時に識別し、コンプライアンスチェックが容易になります。

データ分析

sLLMはデータ分析にも向いており、トレンドの分析から競合の動向まで、さまざまな情報を処理できます。

sLLMは、意思決定のプロセスで大きな役割を果たすでしょう。

マーケティング

マーケティング分野では、sLLMは顧客情報を分析し、個々にパーソナライズされた商品を表示するような使い方が可能です。

より効率的なアプローチによってコンバージョンも高まり、業績向上にも寄与するでしょう。

人材管理

sLLMは、履歴書の分析や試験の採点など、人材採用にも活用できます。採用プロセスが自動化することによって、効率化・公平化が実現されるでしょう。

また、人事評価にも用いることが可能であり、人材管理の質を高めることが期待されます。

製品開発

sLLMを用いた製品開発では、顧客の需要などを分析し、製品改善や新商品の開発を手助けします。

市場の移り変わりは激しいため、できるだけ迅速に効率的に分析することは、中小企業にとっても欠かせません。sLLMはその分野で大きな役割を果たします。

企業内sLLM構築には”データバージョン管理”が欠かせない

企業内でsLLMを構築していく過程では、複数の人が同時にデータへアクセスし、変更や修正を加えるタイミングがあるでしょう。

sLLM構築において、データがいつ、どのように変更されたかを把握することは非常に重要です。なぜなら、常に改善していくうえで、修正を加えたり前のバージョンに戻したりする場面が出てくるからです。

sLLMは学習するたびに成長していくので、いつ、どのように変更されたかを把握していないと、万が一失敗したときに二度と元の状態に戻せなくなります。いわば、WordやExcelなどの「元に戻す」ができない状態です。

とはいえ、手動での管理は現実的ではありません。企業内sLLM構築のデータバージョン管理には「AIData ALM」が有効です。

「AIData ALM」は、企業がsLLMを構築する際に直面する課題に対処するために設計されたソリューションであり、主に以下3つの特徴があります。

・データの変更履歴の追跡と管理
・バージョン間の整合性の確保
・アクセス制御とセキュリティ機能の強化

「AIData ALM」は企業がデータ管理をより効率的にし、sLLMの構築をサポートするツールになっています。sLLM構築を検討している場合は、ぜひ一度チェックしてみてください。

AIData ALMの詳細はこちら

まとめ:sLLMは中小企業でも導入しやすいAI界のヒーロー的存在

sLLMとは、LLMに代わるコンパクトな自然言語処理モデルのことです。

GPT-4のようなLLM(大規模言語モデル)と比べて開発期間やコストが短くて済むため、中小企業も導入しやすいと言えます。

国内メーカーも続々と参入してきており、今後さらに注目を集めると予想されます。本記事で導入の具体例を紹介したので、いち早く取り入れ、スタートダッシュを決めましょう。

また、企業内でsLLM構築する際は、データバージョン管理が重要な役割を果たします。「AIData ALM」では、学習データを効率的に保存・管理できるため、ぜひチェックしてみてください。

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