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冷えたスマホと眠る朝

寝落ち通話をする為に
差しっぱなしにする充電器をからませて、
毎晩熱くなるスマホを抱いて眠る。
夜を超える為だけのそれに烏滸がましい愛と
朝まで居たいという我儘をのせて。

それだけを代償に、バッテリーの寿命を削る。

でも今日は、
朝まで繋がっていたときの、
おはようの返事が返ってきた時の、
まだ寝息が聞こえる時の、
あのあたたかさが無かった。

冷たいスマホだけが私と一緒に眠っていた。


今更よく考えてみたとしても、
恋の燃やし方も捨て方も
私のやり方に何一つ正しさは無いけれど、

一時の温もりも永続的な思い出も、
電波に流された所謂若気の至りの一括り。
そんなものに成り代わっていくことが苦しい。

ボタンの掛け違いに気づくのは
きっとボタンじゃないから、私、きっとまだ。
気づかないフリができる。

そんなずるい考えまで浮かんで、
朝、眠い目を擦って通話ボタンの前で考える。
押してしまった矢先、出るな出るなと願う。
その裏側でただ声が聴きたいが煩い。

ああ、嫌だ。嫌だなぁ。

きっと私は、毎晩、スマホと寝ているだけ。
ブルーライトと寝ているだけ。
今朝、冷たいスマホが隣にいて、
とても虚しくなったこと、
知らないフリをしておきたい。

誰にも知られたくないと同時に
溢れてきてしまうこの、

この、嫌な感情ごと忘れないでいたい。

ただ今日はそれだけ。

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