著:さいとうなおき『うまく描くの禁止』 感想
2021年は3月、この『うまく描くの禁止』は発刊された。著者のさいとうなおき先生といえば皆がイメージするのはどのようなイラストレーターだろうか。デュエル・マスターズ、ポケモンカード、あるいはYouTuberとしての姿を想像する人、もしかしたら聞いたことがないという人もいるかもしれない。いずれにせよ、「著名で、YouTubeでイラストの講座などを行っているイラストレーター」という理解で十分だと思われる。
さいとうなおき先生のイラストの魅力はもちろんそのイラストを鑑賞するだけで十分であり、言葉にする必要もないが、その魅力はイラストだけにとどまらず先生ご本人やその運営するYouTubeチャンネルにも現れていると言えるだろう。
さて、本著においてはその氏が運営しているYouTubeチャンネルのまとめとも言える内容となっている。主な投稿動画の内容としては、イラスト上達のテクニックだけでなくイラストをかくにあたってのモチベーションの上げ方や心構え、イラストの添削、戦略的に自身のイラストを伸ばす方法など多岐にわたっている。その丁寧な解説と氏の人柄の良さから登録者数は37万人を超え、非常に人気のあるイラストレーターであることが窺えるだろう。
そんな素晴らしいコンテンツたちのまとめ本として出版された本書の感想、魅力、必要性などを示していければと思う。
・所見、感想
まず最初の感想としては「本書は技法書というよりは自己啓発本に近い」ということである。もちろんイラストの技法やテクニックなども紹介はしているが、どちらかといえばイラストに関する悩みに対する答え(に辿り着くためのヒント)を紹介するような内容となっている。本書の帯にも【「絵がうまく描けない」「見てもらえない」「仕事がもらえない」「やる気が出ない」絵描きの4大悩みについてさいとうなおきが解説】と書いてある通り、技法などのテクニックが含まれるのは「絵がうまく描けない」の部分であり全体の割合としては少ない印象を受ける。というのは、具体的なテクニックや氏のイラストメイキングなどについてはYouTubeで無料公開されており、本に起こすと文量やページ数が増えるような内容はそちらを見て欲しいということだろう。また、氏の考えではそのテクニックをお金に変えるつもりはないようで、無償で提供し皆が上手くなって欲しいという考えの基このような構成につながっている。
では本著の魅力とは何か、それは「さいとうなおき先生が私たち絵描きの背中を押してくれる」ということである。氏がこれまで培ってきたイラストレーターとしてのノウハウを基に、絵描きが陥りやすい悩みやぶつかる壁の解消法を提示してくれている。私自身イラストを描く者としてそれに関する悩みというのは尽きず、気分が落ち込むこともしばしばある。
「なぜ辛いのにイラストを描いてるんだろうか」「いつになったらうまいイラストが描けるようになるんだろうか」「なぜ評価されないのか」
そういったイラストという趣味の一筋縄ではいかない部分について、立ち止まってしまう自分を肯定してくれている内容となっており、さいとうなおきという人柄に触れ優しい気持ちになった。言葉選びに関してもイラストレーターが最も欲しい言葉を投げかけてくれるため、またイラストを描こうかなと思わせてくれる本だった。
・この本を読むべき人
イラストが趣味・仕事の人、趣味・仕事にしたいと思っている人は、確実に読んでもいいと言える本であると思う。
また、絵描きではなくとも、何かしらの創作活動をする人にとっては多少価値のある本だと思う。イラストにフューチャーしているとはいえ、その内容は創作活動をする人皆に共通して当てはまるものだと思う。
反対に、先ほども書いた通りだが、これをイラストの具体的な技法書として購入しようとしている人で、そう言った悩みについては興味のない人にはおすすめしない。そういった内容については氏のYouTubeチャンネルを見た方が具体的であるし、濃い内容となっている。無料だし。
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